2005年03月15日 

私的東北論その5〜自ら情報発信することの大切さ

589c7fe7.jpg  最近、生まれて初めて虫歯になった。漠然と、これまで虫歯にならなかったのでこれからも虫歯になることはある まいと思ってたところがあるだけにショックだった。それ以上にショックだったのは、痛い!ことである。「そうか、これが世間で言う虫歯の痛みってものなんだ」と人生で初めて知った痛みを抱え、とにかく歯医者に行かなくてはと考えた。

 しかし、歯医者には行ったことがない。聞くところによると歯医者にも上手い下手があるらしい。どうやって上手い歯医者を探せばいいのか。それに治療は虫歯の痛み以上に痛いと聞く。何より嫌なのは、歯医者は虫歯を抜いたり、抜かないまでも神経を取ったりするという。虫歯になったとは言え、長年苦楽を共にした大事な歯を抜いてしまうのは忍びない。神経を取るのも、そこの感覚がなくなりそうでやっぱり嫌だ。

 歯痛をなだめすかしながらそんなことを考えていた時に、ふと思い出した。以前、ネットで何を検索していたときだったか忘れたが、偶然これまでの虫歯の治療とは違う3Mix-MP法(病巣無菌化組織修復療法)という手法を使って、あまり削らない、抜かない、痛くない画期的な虫歯治療をやっている歯医者を見つけたことがあった(参照サイト)。その時は自分が虫歯になることなど思いもせずに、「もし虫歯になったらこんな歯医者にかかりたいな」とちらっと思ったくらいだった。

 その時一番驚いたのは、その治療法を開発して実践している歯医者が仙台の歯科医だったことである。仙台市泉区にあるタクシゲ歯科医院写真参照仙台市泉区虹の丘3-11-8、TEL022-373-5695)の宅重豊彦院長がその人である。そこにお世話になることに決めた。

 考えてみれば、画期的な治療をやっている歯科医が仙台の歯医者であったからと言って、驚く必要はまったくないのであるが、何と言うか、新しい情報は東京や他の地方からもたらされるものという漠然とした思いが私だけでなく、東北の人の間にはあるような気がする。だから、新しい情報の発信元が東北だったりすると驚いてしまうわけである。

 しかし、新しい情報がすべて東京や他の地方からもたらされるわけではない。東北にも優秀な人材は他の地方同様たくさんいるわけだし、その中には宅重先生のように他の地方ではやっていないような画期的な取り組みをしている人もいるわけである。東北人に必要なのは、そうした情報に触れて驚くのではなく、こちらから発信できる情報が豊富にあることを認め、さらに積極的にそうした情報を発信していくことなのではないかと思う。

 東北人はPRが下手だとよく言われる。奥ゆかしくてあまり自己主張しない、黙々と自分の仕事をこなす、褒められると謙遜する、とも言われることが多い。 確かに、仕事柄、雑誌に掲載する記事の執筆を依頼することがあるが、東北の人に依頼すると大抵「いえいえ、ウチなんて大した事していないんですよ」という言葉が返ってくる。それに対して「ウチはなかなかよくやっていると思いますよ」という意味の言葉が返ってくるのは、大抵西の方の人のように思う。東北人のこ うした姿勢はかつては美徳だったのかもしれないし、今でもこのような奥ゆかしい人は基本的に周りの人に好かれるかもしれない。でも、一生懸命やってそれ相応の成果が出た取り組みに関しては、もう少し堂々と胸を張ってもいいような気がする。

 そば処と言えば、多くの人のイメージにあるのは長野県であろう。しかし、山形もそれに負けないそば処である。そば屋の裏に自前のそば畑が広がっている、 というような景色も山形には時たまある。最近ではようやく山形のそばも知られるようになってきたが、私は大学生になるまで、隣の県であるにも 関わらずそのことを知らなかった。札幌の雪祭りは有名だが、秋田と青森にまたがる十和田湖でそれに劣らない規模の冬祭りをやっていることはあまり知られていない。黙って気づいてくれるのを待っているのではなく、せっかくいいことをやっているのであれば、そう言わなくては。

 虫歯のことに話を戻すが、3Mix-MP法とは、3種類の抗生物質を用いると口腔内の細菌をすべて死滅させられるという新潟大学医学部での発見を応用して、虫歯を「内科的に」治療する手法だそうである。今までの虫歯治療は「外科的に」悪いところを削ったり抜いたりしていたが、虫歯の部分から細菌を完全に除去できれば体の他の部分と同様に自然治癒力が働いて歯も健康を取り戻すという考えに基づいて、虫歯をほんの少し削ってそこに3種類の抗生物質を置き、上からセメントで蓋をするという治療法である。この方法だと、従来は抜かなければならなかった歯を助けることができ、取らなければいけなかった神経も残すことができるそうである。

 実際、私の虫歯も神経にまで達する虫歯だったが(痛いはずだ)、歯も神経も取らずに済んだ。あれだけ痛かった虫歯も治療が終わった後、痛みはほとんど収まった。治療する前は欠けてぐらぐらでものもろくろく噛めなかった歯が、最近では元通り普通にものを噛めるようになった。 なるほど、歯も環境さえ整えれば自分で健康を取り戻すようである。

 タクシゲ歯科医院と3Mix-MP法は最近、TVや新聞、雑誌などで相次いで取り上げられたらしく、待合室にいる間にも電話がひっきりなしにかかってきていた。それも全国各地からである。受付の女性が、大阪から来るという電話の相手に、道順を一生懸命説明していた。現在、予約は3ヶ月待ちである。

 宅重先生は、この治療法を全国に広めようと研究会を作り、実地指導を行い、精力的に活動してこられていた(参照サイト)。いいことは周りにどんどん伝える、この姿勢をみんなが持てば、東北の良さはもっともっと知ってもらえるに違いない。


追記(2014.5.15):その後タクシゲ歯科医院は2012年いっぱいで閉院した。前々から体力的にキツいというようなことを馴染み(?)の患者さんに話していたのを聞いていたが、後継者も育ってきていることもあっての決断だったのかもしれない。3Mix-MP法のサイトでこの治療法を提供している医院が一覧できる。なお、宅重先生は現在は若林区六丁の目の堀田修クリニックで火曜と金曜に診療を行っているようである。

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