2006年01月16日 

東北をめぐる鉄道の旅その1〜「青春18きっぷ」による東北縦断の旅

0030379e.jpg 「青春18きっぷ」というJRグループの切符をご存知だろうか(写真参照)。 JR全線の普通列車の普通車自由席が自由に乗り降りできる切符で、1枚のきっぷで一人が5回または5人のグループが1回利用といった使い方ができる。春、夏、冬など、長期の休みがある期間に発売、利用できて、価格は11,500円である(詳細はえきねっと)。ちなみに、名前に「青春」、「18」とあるが、年齢制限はなく老若男女、「青春時代」を過ぎていようがいまいが、あらゆる人が利用できる(笑)。広い東北をのんびり回るにはうってつけの切符である。

 その名前や普通列車のみ乗り放題という切符の性格から、「若者の貧乏旅行の手段」というイメージが強いが、今や若者とは言いづらくなってきた私も実はこの切符が好きでたまに利用している。「普通列車の旅=時間がかかる旅、座りっぱなしでお尻が痛くなる旅」、というようなイメージがあるかもしれないが、決してそんなことはない。なぜなら、今の普通列車というのは、新幹線が発達した影響で、非常に細切れになっているからである。例えば、仙台から東京に行く場合、東北本線経由で行こうとすると、だいたい福島、郡山、黒磯、宇都宮の4回乗り換えなければ東京(上野)まで着かない。お尻が痛くなる前に有無を言わさず立って歩かなければならないのである。

 この乗り換えも、一般には「面倒」、「重い荷物を抱えて大変」、「時間の無駄」などマイナスのイメージが付きまとうが、これはこれで楽しい。乗り継ぎ列車の発車まで時間があれば、改札口を出て駅周辺を散策してみるのもいい(青春18きっぷは途中下車自由である)。例えば、栃木のJR黒磯駅の駅前商店街には老舗の菓子店が2店ある。このうち、その名の通り明治元年に創業した「明治屋」の温泉饅頭や大福は私の黒磯でのお目当ての一つとなっている。また、黒磯駅の待合室の隣にある立ち食いそば屋さんの「もりそば」も「事前期待」を裏切るおいしさだった。このようなことも新幹線や飛行機で出発地から目的地まで一足飛びに移動していてはわからないことである。

 言ってみれば、「青春18きっぷ」での普通列車の旅は、「プロセスを楽しむ旅」であると言える。私にとって何よりありがたいのは、本を読んだり音楽を聴いたりするためのまとまった時間が確保できるということである。本を読むのに飽きたら、車窓を流れる風景に目を楽しませればよいし、心地よい揺れに身を委ねて居眠りもできる。むしろ、日常を離れてありあまる時間を自由に活用できる贅沢な旅と言えるかもしれない。

 ところで、仙台を起点にすると、「青春18きっぷ」で1日でどこまで行けるのだろうか。例えば、東京までであれば、仙台からはほぼ7時間の旅である。東北本線を経由すると、朝6:05発の普通列車に乗れば13:07に上野(または池袋)に着く。一方海岸沿いの常磐線を経由すると、朝5:30の普通列車に乗れば12:40に上野に着く。常磐線のいい所は乗り換えが少ないので、かなりまとまった時間が手に入ることと(列車を選べば「いわき」1回で済む)、いわき周辺や日立周辺などところどころから海が望めることである。上野から先は東京に出て東海道本線を乗り継いで行けば、その日のうちに姫路までは行ける(23:58着)。ただ、さすがに東海道本線は本数も多く乗り継ぎも便利で、あまり駅周辺を散策したりする時間はなさそうである。

 こうしたことを時刻表を片手に確かめてみたりするのも楽しい。乗り継ぎ時間、乗れる列車などの「制約条件」をクリアしつつプランニングすることはパズルにも似た知的好奇心を満たす作業でもある気がする。特に、乗り継ぎができずダメだと思ったら違うルートがあって見事につながったりするのを見つけると、嬉しさのあまり思わず「おぉっ」とか言ってしまいそうになる。

 南は姫路まで行けることが分かった。それでは、朝一番で仙台を出ると北はどこまで行けるのだろうか。北に目を向けた時に「制約条件」となるのが、盛岡以北の東北本線の第三セクター化と青函トンネルを走る普通列車の廃止である。東北本線は盛岡から北、八戸までが東北新幹線の八戸開業に伴い、岩手県側がいわて銀河鉄道、青森県側が青い森鉄道という別会社の路線となった。「青春18きっぷ」はJRグループの切符なので、これらの路線では別料金がかかる。

 しかももともと赤字路線だけあって、JRと比べると割高である。新幹線と在来線では若干距離が異なるものの、JRの東北新幹線の盛岡−八戸間の乗車券は1,620円なのに対し、いわて銀河鉄道と青い森鉄道を乗り継いで普通列車で盛岡から八戸に行くと2,960円もかかる。せっかく青春18きっぷを使ってなるべくお金を使わずに旅行するためには、北に向かうに当たって盛岡以北の東北本線は事実上避けなければならないことになる。

 ならばどうするか。真っ先に思いつくのが日本海側を走る各線である。しかし、仙台を起点にすると、仙台から仙山線で山形に抜け奥羽本線で北上しても、仙台から小牛田まで行って陸羽東線を使って新庄に出て奥羽本線か陸羽西線と羽越本線を使って北上しても、仙台から北上(きたかみ)まで行きそこから北上線で横手に出て奥羽本線で北上しても、最終的にはその日のうちに青森までしか行けない。仙台から太平洋沿いに三陸沿岸を北上する手もあるが、それだとその日のうちに八戸着がやっとである。

 北に向かうとその日のうちに東北を抜けることはできないのだろうか。そこで改めて時刻表と路線図に目を向けると、抜け道があった。盛岡まで東北本線で北上、その後JR花輪線(盛岡から沼宮内までいわて銀河鉄道乗り入れ)で秋田の大館に向かえば、午後の早いうちに青森に到着できる(14:40着)。これだと盛岡から沼宮内までの分のいわて銀河鉄道の料金630円を払えば済む(それでも距離に比べて割高な感は否めないが)。

 そうすると北海道が見えてくるが、ここでまた「制約条件」となるのが、青函トンネルを走る普通列車が今はないことである。青森県と北海道を結ぶ青函トンネルには、以前は快速列車が走っていたが、今は特急しか走っていない。「青春18きっぷ」は通常特急に乗ると、自由席であっても特急券の他に乗車券までも必要となってしまう。しかし、これにはJRグループも例外条件を認めてくれていて、青森県側の蟹田から北海道側の木古内までなら普通列車が走っていないということで特急券さえ買えば、特急「白鳥」と「スーパー白鳥」に乗れる。ただし、この区間の前後も引き続き特急に乗ってしまうとやっぱり特急券の他に乗車券が必要になってしまうので、行きは北海道側の木古内、帰りは青森県側の蟹田で必ず特急から降りて普通列車に乗り換えなければならない。

 いずれにせよ、朝一番に出れば仙台からその日のうちに北海道に渡り、函館には行ける(20:05着)。そこから先は列車の関係で森までが限界で(22:10着)、札幌までは残念ながらたどり着けない。ちなみに、盛岡から大枚はたいて(?)いわて銀河鉄道、青い森鉄道を経て青森まで行っても、青森から蟹田まで行く列車が少なく結果は同じであった。

 なお、JR東日本の東北の路線図はここ(PDF形式)、JR北海道道南の路線図はここである。


追記(2007.1.13):「青春18きっぷ」とほぼ同時期に発売される「北海道&東日本パス」なら、「いわて銀河鉄道」や「青い森鉄道」も利用できる。そうすると、仙台発がもっと遅くても同じ時刻に函館にたどり着ける。目的地が北海道方面であれば利用を考えてもいいかもしれない。ただし、「北海道&東日本パス」は10,000円と「青春18きっぷ」より安いものの、期間内の連続5日間の使用に限られる。5日間まとまってのんびり旅行できる人(うらやましい!)以外にはメリットが小さいと言えるかもしれない。


追記(2011.9.16):「北海道&東日本パス」は昨年夏から「連続7日間で10,000円」とさらにお得になった。長期の休みがある学生で、東日本を旅行する人にはうってつけの切符である。

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