2006年02月27日 

東北で地ビールが飲める店その8〜秋田県秋田市

738fca21.jpg 秋田県には地ビールが3つある。そのうち2つは田沢湖町(現・仙北市)にあるが、残りの一つは県庁所在地である秋田市にある。その名は「あくら」と言う。名前の由来は、「a 蔵」(一つの蔵、小さな蔵)だそうである。ちなみに、県庁所在地にある地ビールは、東北では他に盛岡市のベアレンビールステラモンテと福島市の福島路ビールがあるだけである。

 このあくらのビールは、醸造所のある「あくらフォースクエア」で飲むことができる。あくらフォースクエアは、東北では仙台の国分町に次ぐ規模の飲食店街がある川反(かわばた)からほど近い所にあり、敷地内にはレストランプラッツビア・カフェあくらジャズ・スポット・ロンド高堂酒店がある。あくらは 「身の丈の醸造」を常に意識しているとのことで、銀河高原ビールが拡大路線をひた走ったのとは対照的に、小規模の仕込みと貯酒を貫いている。そのため、秋田市内で他に飲めるところも多くない。私が知る限りでは、秋田駅東口にある秋田拠点センターALVE(アルヴェ)2階の郷土料理店郷蔵(ごうくら)くらいである。したがって、あくらのビールを飲むために、自然とあくらフォースクエアに通うことになる。その中で私のお気に入りの店は、醸造所の2階にあるビア・カフェあくらである(写真参照)。秋田を訪れる度に通っていたら、いつの間にやら顔を覚えていただいた。私が本当に顔なじみの地ビールレストランは、ここと仙台の夕焼け麦酒園くらいのものである。

 ここのビールは、ビルケ(白樺)=ヴァイツェン、レーベンバウム(檜)=ピルスナー、カスターニエ(栗)=デュンケル、など、それぞれのビールにドイツ語の樹の名前がついているのが特徴である。これらを含めてメニューには6種のビールが載っているが、その時々であるビールは異なる。上記3つはいつもある印象である。その中でビルケは生でしか飲めないこともあって(瓶詰めすると酵母の発酵が進んで瓶が破裂する恐れがあるのだそうである)、私の大のお気に入りである。お馴染みの銀河高原ビールよりも濃い色合いの「ダーク・ヴァイツェン」という種類である。このシリーズの第1回で紹介した「Qボック」、「Aヘレス」は、「川反ラガー」共々瓶入りのビールで、隣の高堂酒店で買える。

 その他にも季節限定で、西目町の「ハーブワールドAKITA」で無農薬栽培されたホップを生のまま使った「ハーブ園のビール」や、二ツ井町の桜の樹から採取されたさくら酵母ビール「花」、ビール醸造方法を工夫しホップポリフェノールを残した「秋田美人のビール」などがある。ちなみに、これらは秋田県総合食品研究所と秋田県内の地ビール各社が参加している秋田県麦酒醸造技術研究会が研究開発して実用化したもので、秋田県内の他の地ビール会社2社からも同様のビールが販売されている。

 このように、同じ県内の地ビール会社が互いに情報交換をしながら共同で商品を開発したり、それを県の食品研究所が研究開発の面から全面的にバックアップしたりしているという姿勢は、秋田県内の地ビール文化の振興発展に大いに寄与するものと言え、高く評価したい。東北で秋田以外にこうした取り組みをしているという例は、寡聞にして聞かない。地ビールを取り巻く環境は厳しいが、だからこそこうした取り組みは他県でも範とすべきだろうと思う。

 そうそう、言い忘れたが、ここビア・カフェあくらも料理がおいしい。地ビールレストランはビールへのこだわりと同様、料理へもこだわっている店が多い印象がある。ここも、間違っても冷凍物をチンしたかの如き料理は出てこないので、純粋に食事を楽しみに行っても、そう期待は裏切られないのではないかと思う。

 ただ、気をつけなくてはならないのは、ビア・カフェあくらは23:00まで営業しているのだが、ラストオーダーは22:00ということである。だから、地ビールと料理をじっくり楽しむためには、早めに行くことがオススメである。私などはよくこのことを忘れて23:00までやっているからと、22:00過ぎに行ってしまうこともある。他に客がいれば何とかなることもあるが、客がいないと早めに閉まってしまっていてどうにもならないこともあるので要注意である。そんな時は、24:00までやっているジャズ・スポット・ロンドに行って、ジャズに耳を傾けながら静かに生のビルケを飲むのがよい。

 他に、秋田市内で地ビールが飲める店としては、岩見山内地区に自生する唐花草(野生のホップ)を生で使い、地元の戸島の湧水で醸造したオリジナルのオールモルトラガー「森の唐花草」を出す川反の「郷土料理 (みはる)」(秋田市大町5-2-7、TEL018-864-5972)がある。唐花草を用いたビールは珍しく、また郷土料理店がオリジナルのビールを持っているというのも珍しい。秋田のおいしい郷土料理をオリジナルのビールと共に味わうことができる稀有な店である。

 また、秋田県内の地ビール第一号となった田沢湖ビールの樽生が飲める川反の居酒屋蘇州秋田市大町5-1-11、TEL018-863-6892)などがある。秋田市内で川反に次ぐ規模の飲食店街のある山王にもビールのおいしい店がありそうな気がするが、まだ開拓していない。今後の課題である。


追記(2006.6.14):山王の洋風小料理シエ(けものへんに「解」という漢字を当てている)には、あくらビールののぼりが立っていた。入ってみたら、あくらビールのビルケが飲めた。また、あくらフォースクエア近くの居酒屋あみもとには「田沢湖ビール」ののぼりが立っていた。田沢湖ビールの「ぶなの森ビール」「さくら天然酵母ビール」「ダーク・ラガー」「ひかりのしずく」などが飲めるそうである。


追記(2006.9.9): 秋田港を抱える港町、秋田市の土崎港(つちざきみなと)地区は、秋田市の一部でありながら、別の地域であるような雰囲気が感じられる。その一つの表れが夏祭りである。東北の代表的な都市には、たいてい個性豊かな夏祭りが一つずつあるが、秋田市には東北三大祭りに数えられ、秋田の中心部で毎年8月3〜6日に行われる秋田竿燈祭りがある他に、土崎港地区にも土崎神明社例祭の土崎港曳山まつりが毎年7月20、21日に行われる。全国的な知名度は竿燈には及ばないが、地元での盛り上がりは竿燈に勝るとも劣らない。差し手の「技」を堪能する竿燈に対して、曳山まつりは大きな曳山がかなりの速度で曳かれるという「気迫」の祭りである。実際、何年かに一度死者が出るくらいの激しい祭りである。

 土崎港について調べてみると、やはり当初は秋田市とは別の土崎港町という町であったそうである。その後、戦時中の昭和16年に秋田市に編入されたそうである。しかし、60年以上前に秋田市の一部となったにもかかわらず、いまだに独自性を感じさせるのは、この地区に住む人たちのアイデンティティのゆえのことなのかもしれない。

 さて、この秋田市とは別の地域である土崎港地区には、当然地方の中小都市と同等かそれ以上の数の飲食店がある。この中には当然ビールのおいしいお店もあるに違いないと踏んで行ってみた。一番期待していたのは、「土崎湊御蔵」の中にあるビアホールだったが、聞いてみたらキリンのビールしか置いていなかった。それ以外にも土崎の飲食店街をくまなく歩いてみたが、残念ながらビールの匂いのする店は見つけられなかった。残念である。


img295追記(2006.10.10):山王にある「酒のSUZUKIYA」(左写真参照、秋田市山王2丁目7-1-101、TEL018-864-5205)は酒屋さんだが、店内で買ったお酒を飲むことができる。つまみ類も充実している。ここにドイツのビールを中心に20種類くらいの輸入ビールが置いてある。雰囲気も含めてなかなかよいお店である。


追記(2008.2.29):川反にあるDINING & CAFE GAIOでは、2/29、3/1の2日間、プレミアム & インポートビール・フェアを開催している。国産プレミアムビール10種、輸入ビール25種をテイスティングできて、オードブルもついて3,500円である。


追記(2008.9.21):「あくら」は絶えず様々な試み、新しいチャレンジをしている。9/18からは「ビスケットヴァイツェン」という新しいヴァイツェンを発売した。ドイツの小麦麦芽3種、ピルスナー麦芽、イギリスのビスケット麦芽、ドイツのカラメル麦芽、チョコレート麦芽を使用し、麦芽総量は従来のあくらのヴァイツェン(ビルケ)の15%増だそうである。

 ビルケも元々他のヴァイツェンよりも濃色のダークヴァイツェンだが、ビスケットヴァイツェンはさらに濃色のデュンケルヴァイスビアというカテゴリーに属する。ビスケットの味がするわけではないが、これまでのヴァイツェンとは一味も二味も違う、オリジナルな味わいに仕上がっている。私と同じヴァイツェン好きの人にはぜひ一度味わってみてほしいビールである。

 また、一昨年から醸造している、チョコレートモルトを使用したボックビール「ショコラーデンビア」も12/4からまた発売する。これは通常の「あくらボック」の2倍強の麦芽(チョコレートモルト)を投入し、3ヶ月超の長期熟成を経て醸造されるアルコール度数7.5%のビールである。ビスケットとチョコレート、「あくら」は「お菓子系」(お菓子の味がするわけではないが)のビールが充実してきた。


追記(2010.2.19):「あくら」では、毎月第三水曜日に「あくらグッドビアクラブ」を開催しているそうである。盛岡のベアレン醸造所が毎月第二木曜日に行っている「ニモクビール会」と同様のビールのイベントである。この日は、世界のビール4種類とあくらビール1種類、それに料理がついて参加費が3,000円とのことで、何ともお得なイベントである。

 2月17日の第8回は和歌山のナギサビールのペールエール、ドイツのヴェルデンブルグのヴィンタートラウム、イギリスのフラーズロンドンポーター、ベルギーのグーテンドラーク、それにあくらのビスケットヴァイツェンという、国内外のしかも普段あまりお目にかからないビールも味わえる、ビール好きにとっては、とても魅力的な内容だった。

 あくらの長谷川さんによれば、傍から見ると採算を度外視しているように見えるこのイベントを始めたのは、秋田のビール文化の裾野を広げたいという強い思いがあるのだそうである。確かに、このブログでもあちこちの市町村の店を紹介しているが、総じて日本海沿岸の町にはいろいろなビールが飲める店が少ないというのが、私の経験則でもある。こうした状況を少しでも変え、集まった人たちにいろいろなビールを味わってもらって、口コミでビールのおいしさや楽しさを広めてもらいたいというのがこのイベントのねらいだそうである。

 その目論見は見事に成功しているようで、この日集まっていた人たちはそれぞれ、「ドイツ人か?」と思うくらい皆ビールを飲んで陽気に談笑を楽しんでいた(笑)。

 次回3月17日は、あくらの新作スタウトが登場するそうである。他にベアレンのチョコレートスタウトも味わえるそうで、盛岡と秋田のスタウトの飲み比べができるという、これまた魅力的な内容となっている。

 あ、ちなみにこの「あくらグッドビアクラブ」、要予約で24名限定なので、早めの申し込みが肝要である。それにしても、秋田の人はこのようなイベントがあってうらやましい。


追記(2010.6.15):稲庭うどんの店「無限堂 秋田駅前店」には「酒母(しゅぼ)」というオリジナルビールがあった。その名の通り、日本酒から造られる酵母を使用したという無ろ過ビールでやわらかい味がした。醸造しているのは田沢湖ビールのわらび座である。他に同店では、田沢湖ビールの「ぶなの森ビール」とピルスナー(いずれも瓶)が飲める。確認してはいないが「無限堂 大町店」も同様のラインナップと思われる。


211412.jpg追記(2010.7.15):しばし足を運んでいなかった山王でいい店を見つけた。「蕎麦・天麩羅・地豚 酒場 戸隠」である。その名の通り基本は戸隠そばの店なのだが、何とここにはあちこちの地ビールが置いてある。私が訪れた時にはあくらの「あろまビール」と「ビスケットヴァイツェン」、新潟のサンクトガーレンの「ゴールデン・エール」、それに富山の宇奈月麦酒が3種類ほど置いてあった。それだけではない。ここは時々「おいしいビールを楽しむ会」という会を開催している。

 また、9月4日には同店が主催で秋田市内でビールフェスティバルを開催するそうである。さらに今後毎週土曜日は「土曜の麦飲み」と名づけて特別なビールを特別価格で提供することにするそうである。

 この行動力、店主は只者ではない、と思ったら、案の定、店主の三浦さんは東京駅八重洲口近くに「ビアパブ・バッカス」を立ち上げたという生粋のビール好きなのだそうである。その三浦さんがご両親が切り盛りしていた山王のこの「戸隠」を継ぐためにこの春、20年ぶりに秋田に帰ってきて始めたのがこの、一介のそば屋さんが主催する一連のビアイベントというわけなのであった。上で紹介したあくらの「あくらグッドビアクラブ」と言い、秋田市内は何かビールで盛り上がっている感じである。

 その一方で、上で紹介した「酒のSUZUKIYA」と「郷蔵」は閉店してしまっていた。残念である。


追記(2011.7.6):JR秋田駅のトピコ3階にできた「あきた海鮮食堂」は田沢湖ビール直営の、秋田沖で水揚げされたばかりの鮮魚を味わう海鮮料理などの郷土料理がリーズナブルに食べられる店である。ここにはもちろん、田沢湖ビールの樽生も置いてあり、「スタンダードビール」としてピルスナーが常時置いてある他、「ウィークリービール」と「マンスリービール」としてそれぞれ週替わり、月替わりで2種類の樽生ビールが味わえる。しかも、それが飲み放題で1時間1,050円である。

 そうそう、あくらの「ビアカフェあくら」でも既に飲み放題を始めていて、2時間2,100円である。いずれも醸造所直営ならではのプランなのだろうが、その醸造所のない仙台にいる私にはうらやましい話である。

 どうです?あくらさんか田沢湖ビールさん、次は仙台に直営店を出してみては?仙台にはライバルがいないし、チャンスですぞ(笑)。

 他に、秋田駅近くの「イタリア酒場 ARTICHOKE(アーティチョーク)」では知る人ぞ知る、イタリアの珍しいビール、メナブレアビールが飲める。川反の「Bar MALT」にはシメイブルーが置いてあった。「和食処まる」(秋田市大町2-2-9、TEL018-864-8843、11:30〜14:00LO、17:00〜23:00LO、日曜定休)にはあくらの「川反ラガー」と「秋田美人のビール」があった。山王の「伊太利亜酒場 オステリア アルカ」(秋田市山王1-6-7淀ビル1F、TEL018-863-4121、17:00〜23:00LO、月曜定休)にも「川反ラガー」が置いてあった。

 それから、上で紹介した「洋風小料理シエ」には今はあくらビールはないようである。「蘇州」の田沢湖ビールも今はないようである。また、「居酒屋あみもと」にも田沢湖ビールののぼりがなくなっていたので、ひょっとしたらここも今は田沢湖ビールはないかもしれない。


140406-143616追記(2014.4.6):山王にある「BAR TIGER MORE」(秋田市山王2-10-5、TEL018-863-2199、18:00〜2:00、不定休)はハイネケンやギネスが樽生で飲めるバーだが、「ゲストビール」として各国のビールも飲める。私が訪れた際には、シメイゴールド、スピットファイア、ヴェデット、レフ・ブラウンがあった。







150823-130847追記(2015.8.24):上で紹介した秋田駅ビル「トピコ」3階の「あきた海鮮食堂」が「えきのビアバルMANMA」としてリニューアルオープンした。八幡平ポークやきりたんぽ、男鹿の魚介類など秋田の食材を使った料理を、工場直送の6種類の樽生田沢湖ビールと一緒に味わえる。この6種類の田沢湖ビールがすべて飲める飲み放題は1時間1,200円である。




150823-170405 また、秋田駅近くには「Belgian Beer Bar ZOT」(秋田市中通4-17-30フォレストワン2F、TEL018-853-1723、月〜木17:00〜23:00、金土17:00〜24:00、日祝日定休)というベルギーバーができていた。樽生4種を含め、常時70種類以上のベルギービールが飲める。また、定期的に料理付き飲み放題のイベントなども企画開催している。







追記(2018.10.14):上記で紹介した「酒場 戸隠」が「BEER FLIGHT(ビア・フライト)」(秋田市南通亀の町4-15ヤマキウビル1F、TEL018-838-4773)と「SUMMIT(サミット)」(秋田市山王1丁目9−15山王セカンドビル1F、TEL018-838-5155)をそれぞれオープンさせた。「BEER FLIGHT」では国内とアメリカが中心の11種類の樽生ビールが飲める。「SUMMIT」では国内とヨーロッパ中心の7種類の樽生ビールとワインが飲める。もちろん、「酒場 戸隠」も健在である。



この記事へのコメント

1. Posted by 木村   2006年03月05日 08:34
今度、こちらに連れて行ってください。
2. Posted by のりだ   2006年03月07日 21:45
5 あくらにまた行きたくなったぞ!
行くぞ!
行くからな♪
3. Posted by 大友浩平   2006年03月08日 12:50
木村さん

コメントありがとうございます。
では、夜8時に現地集合ということで(笑)。


のりださん

いつもありがとうございます。
ぜひ行ってらっしゃ〜い(笑)。

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