2006年04月13日 

東北で地ビールが飲める店その10〜秋田県仙北市

874a9ef2.jpg いわゆる「平成の大合併」によって、全国的に市町村合併が頻繁に行われた結果、平成16年4月1日時点で3,100だった市町村は、今年3月31日時点で2,289にまで減少した。中でも秋田県は65あった市町村が25になり、東北で最も市町村の減少率が大きく、市町村合併が最も進んだ県と言える。合併後は中核となる市の名称をそのまま引き継ぐ例もあるが、新たな名称となった市も多い(北秋田市、潟上市、仙北市、大仙市、由利本荘市、にかほ市など)。

 この中で、秋田県仙北市は、旧田沢湖町、旧角館町、旧西木村の3町村が合併してできた人口33,000人余りの市である。合併によって日本一の水深423mを誇る田沢湖と武家屋敷群で有名な「みちのくの小京都」角館という秋田の2大観光地を有することになった。余談だが、これら2つに比べてあまり目立たないものの、旧西木村で毎年2月に行われる「紙風船上げ」はとても幻想的で一見に値する祭りである。

 ところで、この仙北市に属する旧田沢湖町には、地ビールの醸造所が2箇所ある。同じ市町村に複数の地ビール醸造所がある場所は、東北では他に「ステラ・モンテ」と「ベアレン醸造所」がある盛岡市と、「天童タワー」と「湯坊いちらく」がある山形県天童市くらいである。旧田沢湖町にある2つの地ビールは、以前紹介した秋田にある3つの地ビールのうちの2つ、「田沢湖ビール」と「湖畔の杜ビール」である。どちらも田沢湖にちなんだ名前がついており、正直知らない人は混同してしまう恐れもありそうだが、中身はそれぞれ個性的できちんと差別化ができているところが素晴らしい。

 まず「田沢湖ビール」は秋田県の地ビール第1号であり、いわゆる地ビールらしい地ビールである。麦芽と水とホップ、酵母のみから作り、その酵母をいっさい濾過しないという、典型的な地ビールである。アルト、ケルシュ、ヴァイツェン、ダークラガー、ピルスナーなど地ビール好きには馴染みのビールの他、秋田のブナの樹から採れた日本で初めての「ブナ天然酵母」と日本一のブナの巨木を有する奥羽山脈和賀山塊の「ブナの水」を用いた「ぶなの森ビール」や、秋田県麦酒醸造技術研究会で共同開発したホップポリフェノールを多く残した「ヴィーナス」や桜の木から取れた酵母を使用した「桜酵母ビール」がある。

 醸造しているのは、主に東北を題材にしたミュージカルを手掛けて固定ファンも多い、劇団わらび座である。このわらび座の劇場がある「たざわこ芸術村」は、田沢湖からは離れるが、わらび劇場ブルワリーレストラン写真参照)、温泉ゆぽぽホテルゆぽぽお食事処ばっきゃ森林工芸館デジタル・アート・ファクトリー化石館民族芸術研究所などからなる複合的文化エリアである。温泉もホテルもあるので、温泉にのんびり浸かって、風呂上がりに地ビールという「極楽体験」ができる。ブルワリーレストランではイタリアンやフレンチを中心とした洋食(メニュー)、お食事処ばっきゃでは和食(メニュー)が味わえる。どちらも地元の食材などを上手に利用したメニューが中心で、こだわりのビール同様こだわりの料理が味わえる。

 田沢湖ビールは、OEM(相手先ブランド製造)にも力を入れている。最近話題を呼んだところでは日本で最初にビールが醸造された東京都品川区の立合川商店街の「品川縣ビール研究会」からの委託で、日本最古の酵母「エド酵母」を使用した「品川縣麦酒」を開発している。他にも、なのはなビール(青森県横浜町)、ねぷたビール(青森県弘前市)、種市ビール(岩手県洋野町(旧種市町))、十和田八幡平麦酒(秋田県鹿角市、岩手県松尾村など十和田・八幡平周辺)、アテルイビール(岩手県奥州市)、緑のビール(秋田県五城目町)、男鹿麦酒(秋田県男鹿市)、秋田竿灯麦酒(秋田市)、角館麦酒(秋田県仙北市(旧角館町))、かまくらBeer(秋田県横手市)、ゆざわビール(秋田県湯沢市)、象潟サンセットビール(秋田県にかほ市(旧象潟町))、小安峡ビール(秋田県湯沢市(旧皆瀬村))、小町ビール(秋田県湯沢市(旧雄勝町))、鳥海ビール(山形県遊佐町)、菜の花ビール(兵庫県淡路島)、秘湯ビール(「日本秘湯を守る会」の宿)などなど、各地の観光協会や各種団体とタイアップしてかなりの数のOEMビールを醸造している。

 マネージャーの浮辺厚夫氏によると、田沢湖ビールでは「品川縣麦酒」などでの成功を受けて、今後も地域の商店街などとタイアップしたオリジナルビールづくりにも積極的に取り組んでいくとのことである。活性化を考えている商店街は、話題づくりにオリジナルビールの開発を検討してみてもよいかもしれない。関心のある方は、浮辺氏に直接問い合わせていただきたい(メール、TEL0187-44-3988、FAX0187-44-3983)。

 一方の「湖畔の杜ビール」は、その名の通り、田沢湖畔のホテル街に醸造所兼レストラン「ORAE」(秋田弁で「私の家」の意)を持っている。鮮やかな青色の湖面が特徴の田沢湖を眺めながら、地ビールとおいしい料理を堪能できる。

 「湖畔の杜ビール」は「田沢湖ビール」や他の多くの地ビールと違って、これまでのビールの飲みやすさや喉越しを追求しているという。立ち上げに当たっても、他の多くの地ビール醸造所のように外国人醸造技師の力を借りずに、これまで日本で受け入れられてきたピルスナーを軸に据えて慣れ親しんだ味を信じて醸造したという。

 確かに、同醸造所の主力の「あきたこまちラガー」や「風そよぐピルス」は、他の多くの地ビール同様無濾過ではあるが、地ビール特有の風味から「地ビールはちょっと…」と敬遠していたような人にも抵抗なく飲めるビールに仕上がっている。「あきたこまちラガー」はその名の通り副原料にあきたこまちを使ったビールであり、日本の大手メーカーのビールの原料構成と似ているが、例えばアサヒスーパードライを上回るような喉越しとキレが感じられる。他に黒ビールのデュンケルもあるが、これも同様に飲みやすい。「湖畔の杜ビール」は地ビール好きにはもちろんだが、地ビール嫌いの人にこそ飲んでみてほしいビールである。それ以外にも、こちらにもホップポリフェノールを多く残した「花 hanaビール」や桜の木に自生する酵母を使用した「さくら酵母ビール」など、共同開発で誕生したビールがある。

 「ORAE」の料理も、人気ナンバーワンの「行者にんにくソーセージ」に代表されるように、地元の食材を上手に使った洋食のメニューが主体で、これまたとてもおいしい。季節ごとにメニューが変わり、今は山菜を使ったメニューが豊富である(メニューの一部)。

 この「湖畔の杜ビール」、車で行くとやはり飲めないので、近くのホテルに宿を取って滞在しながらじっくり味わうのがよいだろう。また、各種プランもあって、中には田沢湖高原温泉郷のホテルの宿泊とセットになったプランもある。これらのプランを使うとJR田沢湖駅からレストランまでの送迎、レストランから宿泊先までの送迎などもしてくれるので、JRなどを利用して訪れる場合にはそれらのプランを利用するのもよいかもしれない。


追記(2007.2.15):岩手県の旧宮守村は昨年合併して遠野市に編入された。旧宮守村には「わさびビール」で有名な「宮守ブロイハウス」が、一方遠野市には「ZUMONAビール」の「遠野麦酒」がある。合併によって遠野市も、地ビール醸造所が2箇所ある自治体になったわけである。


追記(2008.10.8):田沢湖ビールは、秋田県立大学との共同開発で、国内初の、原料がすべて県内産という地ビール「秋田まるごと自然仕込み あきた麦酒 恵」が発売された。限定醸造で、二条大麦と六条大麦の2種類ある。


210645.jpg追記(2009.11.9):今年も「あきた麦酒 恵」が発売された。今年も二条大麦と六条大麦の2種類だが、今年は県内大潟村産のこれらの大麦のモルトづくりも自社工場で行うという徹底ぶりで、原料の栽培から醸造まで全て秋田県内という「完全地ビール」となった。モルトの製造設備を持つ地ビール醸造所は国内でも数えるくらいしかないそうで、実際田沢湖ビールでは、依頼を受けて他の地ビール醸造所用のモルトも製造しているそうである。

 すっきりとした味わいが特徴の二条大麦の「恵」と、ほろ苦さが特徴の六条大麦の「恵」と、原料の大麦が違うと麦酒の味わいがこれだけ違うのだということが、これら2種類の「恵」を飲み比べてみるとよく分かる。ちなみに、ビールによく使われるのが二条大麦、麦茶にしたりご飯に混ぜたりするのが六条大麦である。

 これだけの手間暇をかけて、値段は他の田沢湖ビールと変わらない価格(330ml498円)で提供されているのがまたすごいと思う。



この記事へのコメント

1. Posted by りらっくま   2006年04月16日 20:18
やっと出没できたよ。メールアドレスは知ってるだろうからコメと私のブログURLだけ残していくっすよ。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔