2008年06月17日 

私的東北論その10〜東北は食料を自給できる?

bed15965.jpg 5月10日付の朝日新聞の土曜版の連載「意外に強い地域の実力」に、秋田県の食料自給率が北海道に次いで全国第2位であることが紹介されていた。

 実際、3月28日に農林水産省が発表した都道府県別の食料自給率のデータを見ると(参照サイト)、平成18年度のカロリーベースの食料自給率は北海道が195%で第1位だが、秋田が174%で第2位、次いで山形が132%で第3位という結果であった。他にも青森が118%で第4位岩手が105%で第5位であったが、自給率100%を超えているのはこれら5つの道県だけであって、宮城は79%、福島は83%にとどまったものの、全体として北海道・東北地方の食料自給率の高さが浮き彫りとなったわけである。

 昨今、輸入食品の残留農薬の問題や、中国から輸入される食品の安全性の問題がクローズアップされており、農林水産省でも必死に食料自給率の向上を呼び掛けてはいるが、人手不足の問題や後継者問題など、農業を取り巻く環境は依然厳しい。

 そうした中、北海道と東北は全体として、自ら必要な量の食料を自前で調達できる潜在能力を持った地域であるわけである。カロリーベースでは100%に満たない宮城や福島も、生産額ベース(平成17年)ではそれぞれ100%、113%と、「自給ベース」に乗ってくる。

 豊かな自然条件に恵まれた環境と、そこで農業を守り続けてきた農家の方々の努力の賜物であるが、このことが意味するものは大きいと思う。すなわち、「東北州」は少なくとも食料の面においては、どこにも頼らず自立できそうということである。「腹が減っては戦はできぬ」と言う。「衣食足りて礼節を知る」と言う。食料自給というのは、やはり大事なことのように思われるのである。

 それにしても改めて驚いたのは、全国的に見た食料自給率の低さである。東北でも低い部類の宮城や福島を上回ったのでさえ、全都道府県の中でわずかに新潟(99%)と鹿児島(85%)の2県だけなのである。ちなみに、他の国はと言うと、オーストラリアやカナダ、アメリカといった広大な国土を持った国は除外してみても、フランス122%、スペイン89%、ドイツとスウェーデンが84%、イギリス70%、イタリア62%などとなっており、日本が全体で40%であるのとは対照的である。

 ちなみに、東北全体で見ると、平成18年度の数字だが107%と、やはり100%を上回っている(参照サイト)。ただ、個別の項目を見ると東北の食料供給の得手不得手が見えてくる。まず、米が355%(全国94%)と圧倒的なのを始め、魚介類144%(同59%)果実141%(同35%)野菜類107%(76%)と、ここまでは軒並み100%を上回っているのに対し、大豆は72%(同25%)、牛乳・乳製品33%(同28%)、鶏肉45%(同14%)、牛肉20%(同11%)、鶏卵19%(同10%)、豚肉12%(同5%)と、全国平均を上回ってはいるものの、100%には程遠い。小麦に至っては全国平均より低い3%(同13%)である。こうして見てみると、東北全体で食料自給率がカロリーベースで100%を上回っているとは言っても、そのかなりの部分は米に負っており、それを除くと自給できる食料もあるが、自給には程遠いものもある、というのが現状である。

 完全に東北地方内で生産されるものだけで賄った食卓を想像してみると…、カロリーベースで100%を超えているので、毎食お腹いっぱいになるくらい食べられる。ご飯は山盛り3杯魚、野菜、果物類も食卓を賑やかに飾っている。豆腐や納豆など大豆製品も週に5日は食べられそうである。しかし、牛乳など乳製品は毎日取っていた人は3日に1回に、肉料理を毎日食べていた人は週2、3回くらいになるかもしれない。卵料理も5日に1回である。パンなど小麦を使った食べ物は1ヶ月に1回食べられかどうかくらいのご馳走になっているかもしれない。

 それでも、いざとなれば自分たちだけで食べていける、ということの安心感は大きいように思う。先に紹介した「意外に強い地域の実力」では、秋田県について「『あきたこまち』に代表される米はもちろん、山菜や畜産物、日本海の海の幸も豊富の一語に尽きる。北海道に比べれば気候は暖かいし、比内地鶏、しょっつる、いぶりがっこに稲庭うどん。北前船経由で浸透した関西の味文化の影響を感じさせる伝統食材も魅力だ」と評されている。これは食材の違いこそあれ東北全体に言えることのように思う。その素晴らしさを、東北に住む我々は改めて認識しておく必要があるように思う(写真は広大な田園風景が広がる秋田県大潟村の秋の景色である)。

anagma5 at 23:42│Comments(0)TrackBack(0)clip!私的東北論 

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔