2008年06月20日 

私的東北論その11〜古の「黄金の国」東北、復活なるか?

07a682d5.JPG 最近「都市鉱山」という言葉をよく聞くようになった。廃棄された家電製品などの中に含まれる貴金属を含む希少金属(レアメタル)を鉱山に見立てた言葉であるが、独立行政法人物質・材料研究機構が今年の1月11日に発表したプレスリリースによると、これまでわが国内に蓄積されリサイクルの対象となる金属の量を算定した結果、「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵する規模になっている」そうである。

 同機構の計算によると、金は約6,800トンあって世界の現有埋蔵量42,000トンの約16%に相当するのを始め、銀は60,000トンで同じく22%、他にインジウム61%、錫11%、タンタル10%など世界埋蔵量の1割を超える金属が多数あることが分かったとのことである。その結果日本は、金、銀、鉛、インジウムについては「世界最大の資源国」で、銅、白金、タンタルも3位までに入る資源国にランクされることになるらしい。

 このプレスリリースでは、こうした都市鉱山資源を「都市鉱石としてより積極的に有効活用していくことが必要である」としているが、まさにその通りである。現状、こうしたレアメタルについては、世界的に争奪戦が繰り広げられつつあるそうだが、そのほとんどすべてを輸入に頼っているわが国においては、鉄鋼、自動車、電気・電子機器産業に不可欠なこれらの金属類について、こうした廃棄された家電製品からのリサイクルを本格化させることが、喫緊の課題として挙げられるわけである。

 翻ってみれば、日本は元々黄金の国ジパングとされていた。そのネタ元はマルコ・ポーロの「東方見聞録」で、それがきっかけに大航海時代が始まったと言われているが、マルコ・ポーロが滞在した中国で聞いた「ジパング伝説」の元は平泉の奥州藤原氏の話だったとされている。実際、当時そのように海外にまで噂されるだけの黄金が東北で産出されていたのは事実で、例えば奥州藤原氏初代の藤原清衡は、宋から「一切経」と呼ばれる仏教の「経」「律」「論」全てが網羅された膨大な聖典を購入するのに、砂金105,000両を費やしたそうである。ちなみに105,000両は約1,730kgに相当し、現在の金の価値(1グラム2,600円とすると)に換算すると45億円にもなる。

 一説には、奥州藤原氏が100年で費やした黄金の総量は2000万両(=330トン)だったとも言われるが、先の発表ではそのなんと20倍以上もの金が、わが国には眠っているというのである。日本は今も黄金の国ジパングであると言えるのではないだろうか。

 ところで、このレアメタルのリサイクルにおいて、国内はもとより世界の最先端を行く企業が東北にある。秋田県小坂町にある小坂製錬である。ここでは何と19種類もの貴金属を含むレアメタルを回収できるという。これだけの種類の金属を回収できるのは世界広しと言えども、小坂精錬を含めてわずか3箇所しかないそうである。

 小坂製錬の属するDOWAグループのサイトによれば、小坂鉱山で採掘される「黒鉱」と呼ばれる鉱石は、金銀などの有価金属が豊富に含まれている反面、処理が困難という欠点があり、それが有効利用の妨げになっていたという。同社は果敢にその技術の壁に挑戦し、永年の技術向上の結果、黒鉱から複雑に入り混じった様々な金属を回収する技術を蓄積してきたそうである。その後、残念ながら鉱山は閉山してしまうが、小坂製錬はそこで得た黒鉱処理技術を基盤に、レアメタル回収とリサイクルを特色とした個性のある製錬所として今なお進化を続けているということである。

 小坂に限らず、東北には最近まで採掘が行われていた鉱山が多くある。小坂製錬のようにそのノウハウを、都市鉱山から「採掘」されたレアメタルの製錬に生かせれば、東北はかつての奥州藤原氏時代と同じような、「鉱業立国」が可能となるのではないかと思うのである。

 そのことを既に指摘しているレポートがあった。東北経済産業局のプロジェクト「TOHOKUものづくりコリドー」が平成18年8月にまとめたレポートである。そこでは東北の7つの技術・産業分野を重点化しているが、その中の「非鉄金属リサイクル分野」については、下記のような記載がある。

「東北地域は、古くから鉱山技術、それに関連する高度な製錬技術の開発、蓄積が図られてきました。非鉄金属リサイクル分野は、蓄積してきた技術や製錬施設等を基盤として、ベースメタル、レアメタル、貴金属の効率的回収技術や低品位廃棄物等の製錬技術及び製造業におけるリサイクル原料等の高度使用技術や高品質化技術等を新たに開発し、発展させようとするもので、東北地域でこそ実施することが相応しい分野です。」

 その上で、東北の可能性については、

「東北地域は、日本はもとより世界的に見ても、非鉄金属生産・リサイクルのメッカとなっています。7つの製錬所が立地し、銅・鉛・亜鉛の輸入鉱石からの製錬と廃棄物等からの非鉄金属全般のリサイクル生産に関して、国内の3〜4割生産する日本一の非鉄金属産業の集積地域となっています。」

としている。そして、

「こうした企業群を東北の大きなポテンシャルと捉え、リサイクル技術とリサイクルされた非鉄金属の最終製品への利用技術を高度化することにより、供給側と需要側の連携が出来れば、東北のモノ作りを支え、競争力を高める分野(サポーティングクラスター)になる可能性があります。」


と結んでいる。

 小坂製錬を始め、東北には7つもの製錬所があるということも今まで不勉強で知らなかったが、それらの製錬所が国内の3〜4割ものシェアを占めていたことも知らなかった。「都市鉱山」から「採掘」したさまざまな種類のレアメタルを製錬し、各産業に供給するという「鉱業立国」の素地が、既に東北にはあるわけである。古の黄金伝説が、今まさに復活しようとしている、そのスタート地点に東北地方は立っているとも言えるようである。今後の展開に大いに期待したい(写真は、小坂鉱山の厚生施設としてつくられた、日本最古の現役木造芝居小屋「康楽館」である)。


追記(2011.10.6):10月6日付の読売新聞に「環境省、東北にレアメタル回収拠点」との記事が載った。記事によると、東日本大震災の被災地復興支援を目的に、レアメタルを取り出すために全国で回収された携帯電話などの小型家電を東北地方に集める事業に環境省が乗り出すとのことである。東北の「鉱業立国」のきっかけとなればよいと思う。

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http://news24.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1213953196/

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