2008年08月04日 

東北で地ビールが飲める店その33 & 東北の逸品その15〜山形県金山町・全国初の「メープルの里」のメープルビールとメープルシロップ

7b0f1e84.jpg  メープルシロップと言えば、カナダの国旗にも描かれているサトウカエデの樹液を煮詰めた甘味料である。独特の風味のあるやさしい甘さの甘味料で、パンやホットケーキにかけるととてもおいしいので私も大好きなのだが、ちょっと高価なのが玉に瑕という感じである。まあ、樹液を集めてそれを煮詰めて濃縮させるという工程にはそれなりに手間がかかるのだろうなと思うので、やむを得ないことではあるのであるが。

 このメープルシロップはカナダの特産品であるし、国産品などはないと思っていたのだが、なんと山形の北部、最上地方の金山町に1999年からこのメープルの里づくりに取り組んでいる人がいる。同町の山あいにある13戸の小さな杉沢集落で「暮らし考房(くらしこうぼう)」(最上郡金山町杉沢、TEL/FAX0233-52-7132、 kurasikoubou@amber.plala.or.jp )を営む栗田和則氏である。

 栗田氏は農山村での豊かな暮らしを創り伝えたいとの思いから1993年に「暮らし考房」を立ち上げ、いわゆるグリーンツーリズムに先駆けて、都市の農村との交流活動を始めた。メープルに注目したきっかけは哲学者の内山節氏との会話の中で、氏が「メープルシュガーでコーヒーを飲みたい」と言ったことだったそうである。

 この地区にはイタヤカエデが多く自生しており、また「二月泣きイタヤ」という言葉も伝わっていたという。旧暦2月にイタヤカエデを切ると、木がまるで涙を流しているかのような透明な樹液を出すのだそうで、この時期に炭焼きなどで山に入った人は喉が渇くとイタヤカエデを切ってその樹液を飲んでそのほのかに甘い樹液で喉を潤していたのだそうである。カナダのサトウカエデに対して、栗田氏はこのイタヤカエデの樹液を使った商品作りに取り組んだ。

 最初に作ったのは樹液100%をそのまま飲み物にしたメープルサップ楓露(ふうろ)」である。このメープルサップ「楓露」から始まって、今ではメープルドロップ楓飴(かえであめ)」、メープルソフトクリーム楓華(ふうか)」、メープルシロップ楓の雫(かえでのしずく)」、そしてメープルビール楓酔(ふうすい)」と、イタヤカエデの樹液を使った様々な商品を開発し、世に送り出した。

 他に国内では、埼玉県秩父市が秩父市内の菓子業者が結成した「お菓子な郷推進協議会」が2005年から同市内にあるカエデから取ったメープルシロップを使った菓子作りに取り組んでいる他(参照サイト)、宮崎県の椎葉村でも今年からイタヤカエデのメープルシロップ作りに取り組んでいる(参照記事)が、栗田氏の取り組みはそれらに先んじており、金山町杉沢集落が国内最初のメープルの里であることに異論は出ないであろう(実際には戦前から戦後にかけて北海道や青森の営林署で事業化試験が行われていたそうだが結局事業化には至らなかった)。

 イタヤカエデから作ったメープルシロップ「楓の雫」は文字通り栗田氏のこれまでの努力の結晶である。カナダのメープルシロップの等級はシロップの色が薄いほど高級になるが、この「楓の雫」、カナダの等級で言うと最上級の「Canada No.1 - エキストラ・ライト(Extra Light)」に当たる。カナダ産とは違って、逆にこれ以上濃縮はできないそうである。イタヤカエデはミネラル分がサトウカエデの倍以上含まれており、これ以上濃縮するとこれらのミネラル分が結晶化して沈殿してしまうからであるらしい。

 一方のメープルビールは、ここで取れたメープルサップと、同じくこの地周辺に自生する野生のホップ唐花草(からはなそう)を使った地ビールで、醸造は「いわて蔵ビール」の世嬉の一酒造が担当している。メープルサップのほのかな甘み、唐花草のワイルドなほろ苦味の感じられる栗田氏自慢のオリジナルビールである。

 楓の樹液を使ったビールはカナダにもないそうで、全世界唯一とのことである。また、野生の唐花草を使ったビールも私が知る限り、東北では以前紹介した秋田市内の郷土料理店「味治(みはる)」のオリジナルビール「森の唐花草」があるくらいで、東北以外では寡聞にして聞かない。ちなみにこのメープルビールやメープルサップ、メープルソフトクリームやメープルシロップ入りのコーヒーなどは、「暮らし考房」のショップ&カフェ「楓」で味わうことができる。

 なお、イタヤカエデの樹液が取れるのは「二月泣きイタヤ」の言葉通り、現在の3月のみであるが、この時期は暮らし考房でメープルサップ作りの体験もできる。また、毎年3月の第一日曜日には「メープルフェスタ」も開催されている。メープルビールは、この3月に取れたメープルサップを使用して醸造される。その年の5月頃から出荷され、11月近くまで飲めるが、限定1,500本なので早い者勝ちである(写真はショップ&カフェ「楓」。人懐っこくてかわいらしい栗田氏のお孫さんと)。


追記(2008.9.11):福島路ビールの「裏磐梯名水仕込み オー!ラガー(おらがビール)は、「裏磐梯から湧き出た名水と、この地域に自生するアロマホップを使用」とある。裏磐梯に自生するアロマホップ、これすなわち唐花草である。原材料には、「麦芽、ホップ(一部生使用)」とあり、この生のまま使用した分が唐花草だと思われる。


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