2008年08月19日 

私的東北論その12〜道州制への道遠し?まずは東北六県の知事が結束を

7da7e5a3.JPG 先月17、18日、全国知事会議が横浜市で開催された。削減された地方交付税の復元や地方消費税の充実などを政府に求めることが決まったそうだが、正直注目されていたとは言い難い。話題を呼んだのはむしろ終了後、秋田県知事で全国知事会副会長でもある寺田典城氏の知事会批判の発言である。7月23日付の朝日新聞によると寺田氏は、「もはや闘う知事会ではなくなった」と知事会のあり方を批判したというのである。寺田氏はまた「交付税復元はお願いしても無理なことは分かっている。国と地方を鳥瞰図的に見て、日本の体制や地方のあり方についてもっと話をしないといけない」とも言ったという。

 「闘う知事会」というのは2003年に全国知事会長に就任した、当時の岐阜県知事の梶原拓氏が掲げたスローガンで、その言葉通り決して一枚岩とは言えない知事会をリードし、いわゆる「三位一体」改革の中で国の補助金の削減案をまとめるなどの成果を挙げたことがあった。この当時の知事会には「いよいよ本当に地方の時代が到来したか」と思わせるような勢いがあった。その当時から比べると、確かに今の知事会はおとなしい印象がある。

 しかし、この寺田氏の発言の反響は大きかった。全国知事会会長の福岡県知事、麻生渡氏は、翌23日「闘う内容が変わってきている。評論家みたいなことを言ってはだめだ」と反論、交付税復元についても「あきらめてどうするのか。何の問題の解決にもならない」と寺田氏の発言を批判した(7月24日付朝日新聞)。また、神奈川県の松沢成文知事は「自ら闘って指摘するなら分かるが、全く闘っていない」と批判、三重県の野呂昭彦知事も「ご自身が闘いたいならもっと先頭に立てばいいのでは」と批判するなど、知事会内から批判の声が相次いだ(7月25日付秋田魁新報)。

 これに対して寺田氏は、同日「(国への)要求だけでは世の中は何も進まないという、もっともな話をしたつもり。申し訳ないが、私の考えの方が正しい」と反論、「(提言の)文言や書き方を変えてみたって、世の中が変わるのか。それより国の地方出先機関を10年間でなくそうなどといった、建設的な案を出すべきだ」と指摘した(7月25日付秋田魁新報)。

 さらに、寺田氏は29日、「このままだと何のための知事会か分からない。地方分権論に突っ込まず、国に要求するだけの知事会では誰も当てにしない」と重ねて主張した(7月31日付秋田魁新報)。
 マスコミの反応を見ていると、どうもこの全国知事会の「場外乱闘」の方が注目を集めている感があるが、寺田氏の一連の発言の背景には、全国知事会のあり方への問題意識、地方分権が遅々として進まないことへの焦りや苛立ちがあるように思える。

 そしてまた、こうした問題意識は寺田氏一人のものではない。政府の地方分権改革推進委員会委員長として地方分権の具体策を検討している丹羽宇一郎氏は、こうした知事会の動きが歯がゆく見えたらしく、件の全国知事会議で全国の知事を前に「地方分権は、霞ヶ関の官僚から恩恵的にもたらされるものではない。地方が中央と戦って確立すべきものだ」と一喝したという(7月29日付朝日新聞社説)。

 道州制実現に向けて最短距離にいると言われる東北も、実は一枚岩とは言えない。知事によって距離感は異なる。これまで北東北三県は足並みを揃えていたが、現在の岩手県知事の達増拓也氏は慎重派だ(参照サイト)。南東北では宮城県知事の村井嘉浩氏は推進派だが、福島県知事の佐藤雄平氏は慎重派である(参照サイト)。

 そこでまず寺田氏に期待したいのは、全国知事会の意思統一ではなく、足元の東北六県の知事の意思統一である。寺田氏の闘う意気込みは買うが、寺田氏だけが闘ってもそれこそ何も変わらない。考えを同じくする者同士が結束してこそ大きな力となる。特に、北東北三県はこれまでにも道州制を見越して三県合同で様々な取り組みを行ってきている。その成果を積極的にアピールしていくことも必要だろう。

 そしてさらに、東北以外の知事で考えが合う知事とも積極的に意見交換、情報交換を進めることである。例えば、宮崎県の東国原英夫知事は、今月9日寺田氏の発言について「よく言ってくれた」と評価する発言をし、「地方主権になるよう、一生懸命頑張りたい」と話している(8月10日付河北新報)。大阪府の橋下徹知事も7月24日、全国知事会について「メッセージ性がないという気がする」と批判している(7月25日付産経新聞)。

 寺田氏を批判した神奈川県の松沢知事も実は「政策技術論のところで議論が終始し、政治的に大きなメッセージ、大胆な方向性を打ち出すのが難しくなっていると感じた」、「知事会が存在感を示すには、ある時には大胆に政治決断し、戦う姿勢を示さなければいけない」と、寺田氏とそっくりのことを言っている(7月19日付読売新聞)。してみると、松沢氏の先の発言は、寺田氏に「もっと前面に立って闘ってほしい」という期待の現われだったのかもしれない。

 こうした考えを持つ他地域の知事との連携が今後重要である。個人的には、埼玉県知事の上田清司氏も寺田氏が組める相手だと思う。このような「新・改革派知事」とも言えるような知事とのタイアップも、かつての改革派知事の一翼を担った寺田氏にはぜひ実現してほしいところである。

 ちなみに、寺田氏の名誉のために言っておけば、寺田氏が「闘っていない」かというと客観的に見て、決してそのようなことはないと思う。例えば、昨年寺田氏が提案した「新時代国土発展制度」と称する一国二制度案は、全国一律の基準や税率の見直しを求めており、地方分権を推進する内容のものだ。寺田氏の働き掛けで、北海道と東北六県と新潟県の知事でつくる北海道東北知事会も昨年末この趣旨に賛同した。ところが、その後の事務レベル協議では異論が相次ぎ、結局今年の全国知事会には提案自体できなかった。総論賛成各論反対といういつもの構図である。

 三県合併まで想定した北東北三県の広域連携のこれまでの取り組みを見ても、寺田氏が闘っていないわけではない。ただ、闘っただけの成果が得られていないだけだ。だからこそ寺田氏にはまず足元の東北六県を固めてほしいと思う。今後の寺田氏の「闘う知事」ぶりに期待したい(写真は夏の田沢湖である)。


anagma5 at 23:29│Comments(0)TrackBack(0)clip!私的東北論 

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