2009年11月13日 

東北の食べ処その21〜「カレーで町興しを」福島県二本松市

6a21f1a2.jpg 全国的に「B級グルメ」が花盛りである。個人的にはこの「B級」という言葉には抵抗があるのであるが、それはともかく、秋田県横手市で9月に開催された、今年で4回目を迎えるB級ご当地グルメの祭典「B−1グランプリ」は、今年も大変な盛況ぶりだったそうである。

 東北人としては、今年のゴールドグランプリ(1位)に、以前紹介したこともある横手焼きそばが選ばれたのがうれしい(投票結果)。同じく焼きそばで町興しをしていて、第1回、第2回を連覇した静岡県の富士宮市の後塵を拝していただけに、もちろん「ホーム開催」の有利さもあっただろうが、よくやったという感じである。

 また、横手焼そばに次いで、八戸市のせんべい汁シルバーグランプリ(2位)であった。せんべい汁はこれで3年連続2位と、並居るB級グルメの中でも際立って安定した評価を獲得しているのが素晴らしい。確かにせんべい汁は、「せんべいを鍋に入れて煮る」というスタイルのインパクト、そのスタイルと実際に食べた時の想像を超えるおいしさとに大きなギャップがあり、そこが高く評価されている要因となっているのだろうと思う。

 このB−1グランプリの影響は大きかったらしく、横手市内の焼きそば店はどこも県内外から来た客で賑わっていると言うから、その経済効果たるやなかなか侮れないものがある。かくして各自治体は、「おらが町のB級グルメ」を全国区にしようと奮闘しているわけである。

 さて、前置きが長くなったが、福島県中通り、福島市と郡山市とのほぼ中間に位置する二本松市は人口約6万2千人の旧城下町である。秋の「菊人形」と安達太良山の紅葉が特に有名な市だが、ここにも今売り込みに力を入れている「B級グルメ」がある。それが「安達太良カレー」である。二本松市の推奨で始まったというから、きっかけは完全に自治体主導である。

 面白いのは、この「安達太良カレー」には「定義」がないのである。例えば、横手焼きそばであれば、太麺で目玉焼きが載っていて福神漬が添えられていて…、といった感じで「定義」を語ることができる。ところが、この「安達太良カレー」にはそのような「定義」が見当たらない。強いて言えば、「カレーである」ということであろうか(笑)。だったらその前の「安達太良」は何なんだということだが、まあ、安達太良山を含めて二本松市内にあるお店が出すカレーを総称して「安達太良カレー」と言うのだ、ということになろうか。一応、パンフレットには「二本松産の新鮮な野菜、おいしい米、お肉等の食材をふんだんに使ったそれぞれの『こだわりのカレー』」とある。

 そのようなわけで、安達太良カレーは実に様々である。昔懐かしいカレー、シーフードカレー、有機野菜と古代米のカレー、フルーツカレー、釜めしカレー、カレーピザ、スリランカカレー、カレーそば、カレーうどん、カレーラーメン、カレーパスタ、カツカレー、といった顔ぶれを見れば、「カレーである」こと以外共通項が特になさそうということがお分かりいただけると思う。要は、何でもあり、制約は一切なし、店の創意工夫を尊重した多種多様なカレーが「安達太良カレー」なのである。

 その中で、「亀谷坂 露伴亭」(二本松市亀谷1ー150ー1、TEL0243-22-4312、10:00〜15:00、月曜定休)ではスリランカカレーを出している。二本松にはJICAの訓練所があるが、そこに来ていた外国語講師の奥さんからの直伝という、スパイスをふんだんに使った本格カレーが何とスープとサラダもついて500円で食べられる。

 よく話を聞いてみると、JICAの訓練所にスリランカから来た人がいたわけではなく、スパイスのレシピを教えてもらい、そこに以前紹介した名取のスリランカセンターに行っていたスタッフがいて、そのスリランカセンターのスパイスを合わせて作っているのだそうである。スープ状のスリランカセンターのカレーとは違うここオリジナルのカレーである。

 サラダのドレッシングも自家製で、鮮やかなピンク色が印象的だが、この色は紫玉ねぎによるものだそうである。スリランカカレーと言うだけあって辛口(辛いもの好きにはちょうどよい)だが、辛いのが苦手な人のためにチリパウダーを除いた「甘いカレー」もある。大盛りは100円増しだが、それで増える量からすると実は大盛りの方がお得だそうである。他に安倍川餅ならぬ、黒蜜を使った阿部川餅もある。

 この「亀谷坂 露伴亭」、その名は幸田露伴に由来するが、「露伴」のペンネームが誕生したゆかりの地がこの二本松の亀谷坂だったそうである。その亀谷坂の途中にみんなが集まれる「坂の駅」を作ろうということで、市内のボランティア延べ300人以上が手作りで作ったのがこの「亀谷坂 露伴亭」だそうである。そのような経緯でできた店なので、お店も地元のボランティアの方が交替で切り盛りしている。それでこのようにワンコインでスリランカカレーが食べられるわけである。ありがたいことである。

 現在「安達太良カレー」を提供している市内の飲食店の数は26店ある(参照サイト)。これからも様々なカレーが登場して、ここ二本松が「カレーの町」としてもっと脚光を浴びるようになれば、カレー好きの一人としてはうれしいことである。

 ただ一つ心配なのは、冒頭の「B−1グランプリ」である。「安達太良カレー」として出場することになった場合、どの店のカレーが選ばれるのだろうか。「B−1グランプリ」出場の前に地元で「安達太良カレーグランプリ」を開催することが必要かもしれない。


追記(2014.7.16):現在「安達太良カレー」を提供している飲食店は17店のようである。上記の参照サイトも変更になっていたので、修正した。

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