2011年11月18日 

東北をめぐる鉄道の旅その10〜JR五能線

111106-082258 JR五能線(ごのうせん)は、青森県田舎館村の川部駅と秋田県能代市の東能代駅とを結ぶ全長147.2kmのローカル線である。名前は、沿線にある津軽半島の拠点都市五所川原市と秋田県の能代市の頭文字から取られている。

 この五能線、今や東北地方を走るローカル線の中でも最も有名な路線と言っても過言ではないのではないだろうか。特に、鰺ヶ沢から東能代までほとんど日本海沿岸を走っていることから、車窓から間近に見られる日本海の美しい景色で知られている。JRも「観光資源」としての五能線の重要性は十分認識しているようで、青森(一部は弘前)と秋田を結ぶ全車指定席の臨時快速「リゾートしらかみ」を1日3往復運行させている他、沿線自治体とタイアップしての観光イベントの実施にも積極的に関わっている。

 「リゾートしらかみ」は、「青池」「ブナ(木偏に無)」「くまげら」という、外観と内装が異なる3つの編成で運行しており(上の写真は「ブナ」編成のリゾートしらかみ2号である)、中でも昨年導入された新しい「青池」は通常のディーゼルエンジンで走る列車とは異なり(五能線は電化されていない)、ディーゼルエンジンで発電した電気でモーターを回して走るという「ハイブリッドシステム」を採用した列車として話題を呼んだ。東北新幹線が新青森まで延伸したため、この「リゾートしらかみ」は東北新幹線と秋田新幹線の終着駅同士を結ぶ列車ともなった。なお、この「リゾートしらかみ」、「臨時快速」という扱いだが、夏季期間(今年は11/27まで)は平日も含めて毎日運行している。冬季期間は土日休日と一部の日のみの運行である。

111106-082619 青森8:21発のリゾートしらかみ2号に乗ると、終点の秋田に着くのは13:21なので、ちょうど5時間の旅である。リゾートしらかみには普通席の他に4名のボックス席もある。どちらも指定席料金は同じ510円である。私が乗った時には希望したA席の空きが普通席にはなかったのか、ボックス席が割り当てられた。ボックス席を3名以下で利用する場合は相席になる場合もあるとのことだったが、結局終点の秋田まで誰とも相席にならなかった。ちなみに、青森発でも秋田発でも、普通車指定席ではA席が海側である。ボックス席はすべて海側に配置されているが、その中でもA席とD席が窓側である。窓越しに海が見たい場合は私のようにとにかくA席を希望しておけば間違いはないはずである。

0903_001 左は車内で手に入る五能線のパンフレットにある路線図だが、これを見れば五能線がどこをどう走っているか一目瞭然である。五能線の青森側の起点である川部駅は青森駅と弘前駅の間にあるが、リゾートしらかみは青森からJR奥羽本線を南下して一旦川部を通り越して弘前まで行った後、折り返してきて川部から五能線に入る。従って、弘前から川部までは進行方向が反対になる。川部から五所川原までは線路の両側にしばらく果樹園のりんごの木々が途切れることなく続く。りんごの白い花が咲く春やりんごの赤い実がなる秋はさぞかし壮観だと思う。

 五所川原から日本海沿岸の港町鰺ヶ沢までは、向こうに津軽富士・岩木山を望む津軽平野の田園風景が続く。海沿いの景色ばかりがクローズアップされる五能線だが、果樹園のりんごの木やこの田園風景も見どころの一つだと思う。五所川原からは、津軽三味線の弾き手が2,3名乗り込んできて、車内のイベントスペースで鰺ヶ沢に着くまで津軽三味線の演奏を聞かせてくれる。揺れる車内でも乱れない演奏はさすがである。列車によってはさらに、「津軽かたりべの会」の方々の津軽弁昔語りも聞ける。

十二湖青池 鰺ヶ沢からはお待ちかねの日本海の景色である。まず、古の地震で隆起し、津軽藩の殿様が畳千畳を敷いて宴会したというところから名付けられた津軽西海岸の名勝・千畳敷海岸がある。リゾートしらかみでは最寄りの千畳敷駅を停車せずに通過してしまうが、その付近ではきちんと徐行してくれる。以前紹介したことのあるウェスパ椿山にも同名の駅があり、五能線でも楽にアクセスができる。リゾートしらかみの列車の一つ「青池」の名前の由来となった十二湖の青池(写真参照)は、本当に神秘的な青色をした池だが、十二湖駅からリゾートしらかみ発着時刻に合わせた無料送迎バスでアクセスできる。秋田県側に入った岩館駅周辺も海岸に沿ってさまざまな形の岩が連なる絶景ポイントでやはり徐行運転してくれる。

111106-112424 海にばかり目が行くが、山側に目を転じると何と言ってもこのエリアには世界遺産の白神山地がある。五能線からも白神山地を望めるスポットがいくつもあるので、そちらも実は見どころである(写真の奥にうっすらと見えるのが白神山地である)。

 東能代からは再び奥羽本線に乗り入れて秋田に向かうが、ここでまた進行方向が反対になる。普通席は座席が回転できるのでそのようにして対応している人も多い。以降、終点の秋田までは日本海の景色は見えないが、途中には右手になまはげで有名な男鹿半島の真山などが向こうに見え、その手前には八郎潟の干拓地も見える。

 先に書いたように、東北新幹線の新青森延伸により、五能線は東北・秋田両新幹線を結ぶ列車となった(新青森は始発の青森から一つ秋田寄りの駅でリゾートしらかみも停車する)。そのお陰で、首都圏からでも一旦新幹線で青森か秋田に行けば、そこからリゾートしらかみで反対側の秋田または青森を目指して移動することができ、そこからまた新幹線を利用して帰ることができる。もちろん、沿線で途中下車して、海や山のリゾートも満喫できる。

 そのようにして見ると、この五能線、首都圏から見ると、かつては東北のローカル線の中でも最も行きづらい場所にあるローカル線と言える路線だったのだが、今や新幹線を利用すれば最も行きやすい、しかも見どころの多いローカル線となったように思う。夏の晴れた日のどこまでも青い日本海も最高だが、冬の鉛色の空の下の激しい波しぶきの立つ荒々しい日本海も一見の価値ありである(ただ、あまりに天候が悪いと五能線が運休する恐れもあるが)。

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