2011年12月13日 

私的東北論その31〜大津波は「千年に一度」ではない!

wakaran-p111213 文部科学省の地震調査研究推進本部地震調査委員会は11月25日、「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価(第二版)について」を公表した。左の朝日新聞に掲載された図が分かりやすいが、今回の長期評価の中では、三陸沖北部から房総沖の日本海溝寄りでマグニチュード(M)8.6〜9の地震が、今後30年以内に、30%の確率で起きると予測されている。

 今回の東北地方太平洋沖地震と同様の、三陸沖から茨城県沖までの広い範囲の震源域が連動する地震については、今後30年に起こる確率は0%と予測している。しかし、今回の地震でエネルギーは解放されたとされる三陸沖中部から南部のその周辺部分や三陸沖北部にはまだ地震を引き起こすエネルギーが残っているとされている。

 実際、その三陸沖北部では1896年に明治三陸地震が起きて、三陸沿岸を今回の津波に匹敵する大津波が襲っている。他に、江戸時代の1611年と1677年にも大津波をもたらした地震が起きたとされている。

 この明治三陸地震の場合、今回の地震の前には地震計の振れ幅などからM8.2程度と推測されていた。しかし、津波の記録から計算し直したところ今回の地震同様のM9クラスと大幅に上方修正された。

 1611年は三陸沖で、1677年は房総沖で大津波が起きたとされている。余談だが、1611年のこの慶長三陸地震による大津波は、今回同様仙台平野にも押し寄せたらしく、1601年に仙台入りしたばかりの伊達政宗の城下町づくりにも大打撃を与えたと言われている。しかし政宗はこの大津波による壊滅的な被害を乗り越えて現在の仙台の基となった城下町を作り上げたのである。

 政宗のすごいところは、戦国武将として合戦にも強かっただけでなく、その土地を治める領主としても極めて有能だったというところである。その大津波の被害を踏まえて海岸沿いに貞山堀を掘り、その外側には防潮林を配するなど、今で言う多重防護の仕組みを作ると共に、津波で浸水した地域での新田開発を進めるなどして、震災復興を成し遂げている。

 今回の発表では、こうした過去に繰り返し起きた地震の発生間隔と、最後の地震からの経過年数で今後の発生確率を割り出しているが、三陸沖から房総沖にかけては今回の地震を含めて少なくとも400年で4回、大津波をもたらした地震が発生していることになり、それを基に今後の発生確率を30年以内に30%、50年以内に40%、100年以内に60%と計算している。

 今回の地震と同様の多数の震源域が連動して起きた大地震は、以前書いたように今回の前は869年の貞観地震で、その前は縄文時代に遡るということであったから、発生頻度はおよそ1000年に1回である。しかし、今回の地震や貞観地震以外にも甚大な津波被害をもたらす地震がある、ということを今回の「長期評価」は伝えている。

 仮に東日本大震災の直前に今回の長期評価と同様の方法で計算していたとしたら、今回の東北地方太平洋沖地震の発生確率は30年以内に20%だったとのことである。20%の確率でも現実に地震は起きた。それを考えると30年以内に30%というのはかなり高いと言えるのではないだろうか。すなわち、「今回は『1000年に1回』の地震だったからあと1000年は大丈夫」などとは考えず、同様の津波をもたらす地震はもっと短い間隔で起きていることを肝に銘じておかなくてはいけない。

 ちなみに、同じ方法で計算すると、阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震の発生確率は8%だそうである。今回の地震の後、「想定外」という言葉がよく聞かれたが、想定外という意味では阪神・淡路大震災の方がはるかに想定外だったということである。

 そうした中、衝撃的な記事があった。今回の地震の後、西日本に住む人の津波への警戒感が低下したというのである(参照サイト)。普通に考えれば、あれだけの大津波の映像をリアルタイムで目の当たりにしたら、津波への危機意識はより高まるのではないかと思うのだが、実際にはその逆なのだそうである。

 東京大学地震研究所助教の大木聖子氏の調査結果によると、今回の震災のほぼ1年前に起きた2010年のチリ地震のあと、住民に対して、津波への備えに関する質問を行ったところ、危険だと思う津波の高さを「10cm〜1m」と回答した人が70.8%で、「この大きさの津波が近づいているという警告を聞いたら避難する」人も60.9%だったのに対し、今回の震災の1カ月後に同じ質問を行ったところ、危険な津波の高さを「10cm〜1m」と答えたのは回答者の45.7%で、この高さで避難すると答えた人は38.3%しかいなかったのだという。逆に、危険な高さを「5〜10m」と答えた人は、震災前には3.7%だったのが、震災後は20.2%にまで増加したのだそうである。

 つまり、三陸沿岸に押し寄せた14、5mの高さの津波を見、あるいは標高40m近いところまで津波が遡上したという報道を聞いたことによって、逆に数10cmや1mくらいの津波は大したことはないと考える人が増えてしまったということのようである。これは大変に危険なことである。

 実際には、50cmの津波でも人は流される。また、木造住宅は1mの津波で半壊、2mの津波で全壊する。津波の高さが1mだから家の2階にいれば大丈夫、ということでは決してないのである。

 津波を「波」の一種だと考えたり、台風の時に見られる高潮のようなイメージで捉えたりするのは大きな間違いである。実際にはあれは「波」ではない巨大な水の壁がものすごい勢いでぶつかって来るようなものと考えた方がよいようである。

 それを理解するのに役立ちそうなのはTBSのニュース映像である。このニュース映像では、記者が港湾空港技術研究所の協力を得て30cmの高さの津波と60cmの高さの津波を体験している。見れば分かるように、30cmの高さで既に立っていられない。60cmの高さではあっという間に流されてしまっている。まさに「百聞は一見に如かず」である。

 「百聞は一見に如かず」と言えば、このサイトにある「東北地方太平洋沖地震 発生地点・規模・時刻分布図」という動画もリアルである。3月から10月中旬までに日本列島付近で起きた地震の分布を地図上に動画で表現したものである。あの日を境に地震が急増していることが音(!)と映像で一目瞭然である。東北地方の太平洋沖を震源とするものがもちろん多いが、その他の地域での地震も増えているように見える。

 「災害は忘れた頃にやってくる」というのはあまりに使い古された標語であるが、実に真実を突いているのではないだろうか。この国に住む限り、今回のような災害はある間隔で発生するものと強く認識して、いつも対策を怠らないようにしておきたい。

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この記事へのコメント

1. Posted by PAUL KIM   2011年12月23日 23:00
5 NICE ARTICLE!
2. Posted by 大友浩平   2012年01月04日 00:54
Thank you very much!

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