2012年02月10日 

東北に関係する書籍その6〜「東北独立」を扱った小説

イメージ 1 さて、独立を果たした東北地方についてである。小説中では以下のように紹介されている。

国名:奥州国

暫定政府樹立
首相:野上高明青森県知事
60名の国務大臣:5県知事、脱出してきた国会議員からなる
合議制
・暫定政府であることを国民に告げ、完全独立が成り、国情安定後に投票による新政府樹立をすると約束
首都:岩手県盛岡市
・県名は従来通り、元号は廃止、西暦制を採用。

暫定政府の決定事項
国境:福島県、山形県の県境をそのまま指定、北は津軽海峡の中間ラインに設定

奥州国内通過問題:いずれは日本国との条約により相互通行の権利を認め合うことになるが、現時点においても通行の制限は行わない

奥州国内にある日本国の資産の没収:
・全資産を一時的に奥州国国有とすることを決定。
・鉄道は国境以北は奥州国鉄道運営局が運営管理。
・東北電力その他についても同様の処置。電力局が設置、稼働中の三基の原子力発電所、建設中の三基の原子炉も接収。
・このほか鉱山、油田、漁業関係などすべてが接収の対象。それぞれ奥州国鉱山局、漁業局、産業局に組み入れ。
・民間企業であると否とを問わず。

かつての県警の処置:
・県警察官は県が雇用、地元採用のため、警視以下は県が給料を支給。
・警視以上の国家公務員には退去を勧告、残る者はそのまま新警察に雇用。奥州国警察局が統轄。
奥州国の治安維持は東北地方守備隊が受け持つ。「奥州国警備隊」と改称。

立国の基本:「立国の基本は農業」
農業資源
・人口約1,000万人
・水田69万ヘクタール
・収穫できる米290万トン
・主食米としての消費量は年間一人当たり約88キロ、奥州国全体で概算90万トン
・余剰米が200万トン超
・畑30万ヘクタール。麦、野菜は人口に見合う
・大豆と果物など一部に若干の不足が見込まれる→耕地面積の拡大で処理

漁業資源
・漁獲量年間120万トン強(スケソウダラなど肥料用漁獲を含まず)
・消費量一人1日100グラムとして年間40キロとすれば3年分の魚が収穫できる
・貝類、海藻類を入れると数字はさらに上昇
・内水面漁業・養殖漁業で合計約1万トン。鮎、鮒、鯉、鱒、鰻、シジミなど

・余剰食品は日本国との貿易に振り向ける

鉱物資源
・金:376キロ
・銅:53.456トン
・鉄:285.548トン
・鉛:29.510トン
・タングステン:238トン
・亜鉛:111.279トン
・硫化鉄:212.752トン

・粗鋼の日本国内消費量は7000トン、一人当たり年間約690キロ
・奥州国1,000万人で年間700万トン
・生産額28万5千トンでは絶対的不足。

林業資源
・林業産物のうち素材生産量は625万立方メートル(全国の15%)
・人口比、木材需要の傾向から供給は充分。

石油資源
・一人当たり年間平均2.72キロリットル
・奥州国1,000万人で2,720万リットル
・備蓄分60日分で約450万キロリットル
・合計3,000万キロリットル
・原油産出量は年間約20万キロリットル
・極めて不足状況

 以上を踏まえた野上奥州国首相の就任演説は以下の通りである。

「人間の生活基本は農業にある。いかに時代が変化しようと、その基本姿勢は変わらない。大地を耕してそこから食物を得る。そうするかぎり、国も、われわれも、滅びることはない。

 さいわい、わが独立国奥州は広大な山野、沃野を擁している。国民人口は一千万人である。一千万人の国民が潤沢に暮らしていける資源には、こと欠かない。……

 わたしは、奥州国建国に当たって、大自然との調和を第一義に据えたいと思う。それには、まず、土壌の改良をなさねばならない。日本国は農業基本法設定以来、労働生産性のみを考え、作物の専作化がすすみ、大量の化学肥料を使用した結果、いま、土壌は極度に悪化している。土は本来生きものである。微生物による活動が有機物を分解し、作物に養分を与え、通気性を保ち、保水性を強化して、作物を力強く育ててきた。

 ところが、いまの農作物はどうか。弱体化がはげしい。大量の農薬撒布は作物の弱体化だけではなく、人体にも害毒を瀰漫(びまん)させている。

 土壌改良には厩肥(きゅうひ)が必要である。それには家畜を増やさねばならない。とくに牛が必要である。わたしは、向こう五年間に、わが国に乳牛、肉牛あわせて五百万頭の牛を増やす政策を採りたい。飛蝗来襲前には東北六県には乳牛肉牛合わせて五十六万頭、豚百十五万頭を飼育していた。それを十倍まで増やすことが、農業立国の基本方針である。そうすることによって、はじめて、土壌改良もなろう。そして、われわれは、大量に農薬に汚染された食物とは、訣別できる。

 わが奥州国には悠久の大河がある。北上川、阿武隈川、最上川だ。まだまだ、無数の川がある。われらは、この河川を蘇らせる。鮭を放流するのだ。臨時政府は産業再編成に着手している。その主たる目的は河川の汚染厳禁にある。大小無数の河川は一、二年以内に完全に蘇るであろう。清冽な流れが戻るのだ。そこに、鮭や鱒、鮎などが群れをなして遡上することを、わたしは、約束する。鮭の放流は現在回帰率がニパーセントにまで高められている。五億匹を放流すれば、一千万尾の鮭が回帰遡上することになる。

 われわれには、山林も戻った。かつて、日本政府に押さえられていた官有林も、現在は、すべて、国民のものだ。明治以降、われわれは広大な国有林設定に、泣いた。東北地方のひとびとを漂民化し、隷属化させた最大の癌が、この山林国有化であった。

 われわれには製造工業もある。現在、三万六千以上の工場を接収している。ここからは年間四兆五千億以上の製品を出荷している。食糧から、武器まで、あらゆる製造工場が揃っている。

 製鉄、セメントなどの大規模工場もある。

 製造工場では生活必需品と、農業機械、建設機械、トラック、バスその他が生み出されるであろう。

 もちろん、よいことばかりではない。わが奥州国には鉄の絶対量が不足している。しかし、わが国はベトナムなどのように戦火の中から復興するのではない。すでに諸君は家を持っている。鉄道もあれば橋もある。鉄の不足は耐えられないものではない。わが国には地下資源が豊富だ。新たな鉱山の開発に期待をつなげる。

 電力の不足はさほど心配することはない。現在、建設中の三基の原子力発電所が稼働をはじめれば、約二十パーセントの節電で充分に乗り切れる。

 問題は原油にある。産出量は二十万キロリットル。天然ガスが五千五百万立方メートル。これは、日本国が国産を軽視して開発を怠った結果である。われわれは採掘規模の拡大、秋田沖油田の開発などに着手するであろう。アジア諸国の一人当たり消費量は〇・三八キロリットルである。われわれのニ・七ニキロリットルは明らかに使いすぎだといえる。これは、肥料、プラスチック、繊維などに石油を消費しているからにほかならない。われわれは当分の間、石油は燃料以外には消費しないのを原則とする。すでに、衣類などの各種製品は潤沢に行き渡っているはずだ。ニ、三年は、そうしたものに石油を使わなくても不便は感じないであろう。現在、流通経路上に備蓄されている石油で、すくなくとも来年の春までは保(も)つであろう。

 以上が独立国家運営における見通しである。

 つぎにわれわれは、外交における確固たる理念を持たねばならない。わたしは、外交の基本を平和におく。いかなる国とも敵対関係を持たない。これは隣国日本とも同じである。独立はしても、われわれは同胞であることに変わりはない。いずれ、条約で二国間に関するかぎり、通行制限は行なわないことを取り決めたい。ただ、わが国の侵略される懸念のある間は、特定国との安全保障条約は結ばねばならないと考える。

 中立を守る意味で、三沢にある米軍基地および、日本国の陸海空各自衛隊基地は早急なる撤去を要請する。わが国にはいかなる国の軍隊をも駐留させないのが、基本方針である。

 ……

 最後に、国民諸君に独立国家誕生についての充分なる認識と気概を持たれることをお願いする。日本国が、自衛隊による武力行使に訴える可能性がないとは、いいがたい。そうなっても、断じて、屈してはいけない。屈伏は第二の戊辰戦争となるだけである。われらは日本国の奴隷となるよりも名誉ある死を選ぶべきである。二度と、われらは、隷従しない。

 わが国にある無数の石の地蔵をこれ以上、増やさないために、われらは侵略に体を張るべきである。血をもってあがなわねばならぬものなら、そうしよう。

 われらは、永遠の侵略に歯止めをかけるべきときに遭遇している」

 野上首相の下、東北地方が「奥州国」として独立を果たした1978年当時の人口は約1,000万人とあるが、現在では921万2千人となっている(新潟県を含めた7県では1,157万2千人)。今後、少子化の進展でさらに人口減少の度合は加速すると見られる。

 小説では東北六県が独立したことになっているが、これに新潟県も加えた7県で見た場合、域内GDPは41兆7,830億円で、これは北欧のスウェーデンの41兆5,366億円を上回る。「国」としての実力は、欧州の中堅国並といったところである。

 問題は歳入構成比で、全国平均と比べ、東北地方は歳入に占める地方税の割合が低く(全国平均31%、東北地方19.3%)、逆に、地方交付税(全国平均20.0%、東北地方29.0%)と国庫支出金(全国平均15.7%、東北地方17.9%)の占める割合が高い。他地域よりも国の財源に依存する度合いが大きいということである。

 小説の中では「農業立国」を基本としているが、これは独立する、しないに関わらず、今後東北が必ず取り組んでいかなければならない最重要テーマであると私も思う。そして、農業立国のベースとなるのが、農業の成長産業化である。日本では農業は「衰退産業」というレッテルを半ば貼られてしまっている。高齢化の進展、なり手がいない、国土が狭い、高コストで輸入品に太刀打ちできない、などなど、事ある毎に農業の衰退が取り沙汰される。では、なぜ同じように高齢化が進み、国土が狭いヨーロッパの国々の中で農業が基幹産業となっている国があるのだろうか。それらの国の日本との違いは何なのだろうか。

 宮城大学副学長の大泉一貫氏はこの農業の成長産業化について、具体的な方策も含めて主張している。氏の講義を以前聞いたが、なるほどと思うことがいくつもあった。「農業において『余ったら輸出』というのが世界の常識だが、『余ったら生産調整』が日本の常識」、「市場発見、顧客発見の必要が農業にもあるにも関わらず、日本の農業政策は輸出忌避、顧客志向忌避で衰退させるべくして衰退させている」と指摘し、オランダ、デンマーク、スイス、フィンランド、ノルウェーなどの取り組みを紹介する。なるほど、まだまだヨーロッパ諸国に学ぶことはたくさんあるのだなと実感する。

 大泉氏が挙げるのは\こ市場への進出(市場の発見・創造、輸出の推進)∪源裟の向上(重機による分業協業、オートメーション工場、IT化施設の導入)CΓ閏〇唆伐宗蔽工業化社会、情報産業化、サービス産業化、ブランド化、他産業との融合)である。その中で、その通り!と思った氏の発言は「東北は食糧供給県ではない!」というものである。東北と言うと、まさにそのような位置づけで語られることが多い。しかし、発想の大転換が必要である。食糧を供給するのではない、味、品質共に優れた東北の食糧を日本含め世界中に売り込む、そのような意識が「農業立国」には絶対に必要である。そう言えば、以前紹介したが、青森県は三村知事を筆頭に、農産物の積極的な海外進出を図っていた。あの姿勢が必要なのである。そうそう、こうした大泉氏の講演、ウェブ上では全国肥料商連合会での講演の内容が文字になっている。当日の配布資料もPDFデータとなっていてありがたい。

 電力の問題も大きい。小説の中では原子力発電所を接収したことになっているが、東日本大震災後、事故を起こした福島第一原発は言うに及ばず、福島第二原発、女川原発、東通原発がすべて停止したままである。太陽光発電、風力発電など、自然エネルギーによる発電が模索されているが、その不安定さやコスト高がどうしてもネックになる。私が注目しているのは地熱発電である。日本は世界第三位の地熱資源がありながら、その活用は遅れている。その理由の一つが、地熱発電の候補地が温泉地に近く、地熱発電の開発によって温泉の源泉に影響が出るのではないかという懸念である。

 この懸念を払拭するバイナリー発電という方式での地熱発電が現在導入され始めている(参照サイト)。日本の地熱資源の中でも、東北には有望な地域が多い。日本地熱開発企業協議会は昨年9月に東北六県の地熱開発有望地区についての調査結果を発表している(参照PDF)。青森県の下北、八甲田、岩手県と秋田県にまたがる八幡平、岩手県と秋田県と宮城県にまたがる栗駒山、山形県と宮城県にまたがる蔵王、福島県の磐梯山が挙げられているが、中でも福島県の磐梯地域には、なんと原発2基分の地熱が埋まっているということである。八幡平地域もこの磐梯地域に匹敵する「埋蔵量」が見込まれている。確かに、八幡平山麓の玉川温泉だけ見ても、98度という沸騰寸前の日本一高温の温泉が、これまた日本一の毎分約9,000リットルも湧出している。これをバイナリー発電に生かさない手はない。また、風力発電では、洋上風力発電にも期待したい。

 農業以外の産業については、これまた以前紹介したが、「鉱業」を強く推したい。「都市鉱山」の開発は「黄金の国復活の狼煙となるに違いない。この「都市鉱山の開発」=非鉄金属リサイクルは秋田県北部を中心として現在産業化が進んでいる。それを含めた東北の産業創出プロジェクトは現在進行中である。東北地域産業クラスター形成戦略、通称「TOHOKUものづくりコリドー」である。

 この中では自動車関連部材等分野、光産業分野、半導体製造装置関連分野、医歯工連携・健康福祉分野、MEMS(微小電気機械素子)技術分野、非鉄金属リサイクル分野、IT分野の7つの技術・産業分野を、広域仙台地域、北上川流域地域、山形・米沢地域、広域郡山地域の4つの「牽引役」と、青森・弘前地域、八戸地域、秋田北部地域、本荘・由利地域、会津地域、いわき地域の6つの「産業集積地域」において、相互に連携を図りながら重点化することを目指している。このプロジェクトを基に、東北の各地域のさらなる産業発展を図っていくのが、「奥州国」の産業振興の近道であろうと考える。

 そうそう、「奥州国」という名称だが、奥州と言うと、陸奥国、すなわち東北の太平洋側の地域を指すので、もし東北地方が丸ごと独立する場合は別の名称を考えた方がよいと思う。「東北国」が真っ先に思い浮かぶが、この東北という言葉は中央から見た方角しか指し示していない。まあ、世界の国を見渡してみても、意外に「え?そんな意味だったの?」という国名が結構あるので(参照サイト)、「東北国」でもいいと言えばいいのだろうが、歴史的に言えば、小説の中で野上首相も紹介した「日高見(ひたかみ)国」を名乗るのもありだろうし、「蝦夷(えみし)国」「日之本(ひのもと)国」なども考えられる。

 独立国と言えば、以前「ミニ独立国」が流行ったことがあった。現在でも活動している国はあるようだが、どちらかと言うと下火の感がある。とりあえず、東北六県ないしは新潟も含めた7県は、この「ミニ独立国」として独立してみてはどうだろうか。規模から言ってまったく「ミニ」ではない「ミニ独立国」となるが、インパクトは大、地域振興にそのスケールメリットも最大限活かせるのではないだろうか。

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔