2013年11月25日 

東北で地ビールが飲める店 番外編その24〜東北地ビール紀行第3回「岩手県編」(「東北復興」紙への寄稿原稿)

 「東北復興第17号では、第15号に続いて「東北地ビール紀行」の第3回目として、岩手県内の地ビールについて取り上げた。拙ブログをお読みいただいている方には周知の内容と思われるが、ご一読いただければ幸いである。


東北地ビール紀行その 岩手県編

ホップ生産日本一の県の地ビール
 岩手県は知っての通り、都道府県では北海道に次いで大きく、四国に匹敵する面積を有する。第一回目にも触れたように、東北は全国のホップのおよそ98%を生産しているが、岩手県はそのうちの約40%を生産する全国一のホップ生産県である。
 
 その岩手県には現在五つの地ビール醸造所がある。とりわけ県庁所在地の盛岡市には二つの地ビール醸造所がある。一つひとつ紹介していこう。まずはベアレン醸造所。ドイツから移設した約一〇〇年前の醸造設備を用いて、伝統的製法で作るクラシックスタイルのドイツビール「ベアレンビール」が好評の地ビール醸造所である。その名もズバリの「クラシック」、「アルト」(ドイツ語で「古い」の意味)、そして「シュバルツ」(ドイツ語で「黒」)の三つが定番で、これに季節限定のビールが一〇種類ほどある。
 
 ベアレンを見ていてすごいなと思うのは、とことん地域密着を志向していることである。だから、一関の全国地ビールフェスティバルや仙台のオクトーバーフェストなど、ビールのイベントにに出展することもほとんどない。その代わりに盛岡市内ではあちこちの飲食店でベアレンのビールが飲める。徹底的に地元に浸透しようという意思が感じられる。
 
 飲める店が多いだけではなくて、「ビール文化」そのものを広めようとする努力も怠らない。盛岡市内の飲食店で「ニモクビール会」という、ベアレンのビールや海外から仕入れたビールを飲めるイベントを毎月第二木曜日に開催している。盛岡市内には「ビアパブ・ベアレン材木町」(盛岡市材木町7-31、TEL 019-626-2771)と「ビアバー・ベアレン中ノ橋」(盛岡市中ノ橋通1-1-21、TEL019-651-6555)という二つの直営店があるが、これらの店舗でもそれぞれ、「ビアパブ ビール会」(毎月第三木曜日)、「中ノ橋ビール会」(毎月第一火曜日)というイベントを開催しており、ビールファンの拡大に務めている。
 
 盛岡市内にはもう一つ、地ビール醸造所がある。盛岡の地酒というと必ず名前の挙がる蔵元「あさ開」の敷地内に「ステラモンテ」(盛岡市大慈寺町10-34、TEL019-624-7206)という多国籍レストランがある。ここでは、ベルギーの白ビールスタイルの「ホワイトステラ」とチェコのピルスナータイプの「ステラピルス」という二種類の地ビールを醸造している。他にやはり「季節のビール」もある。ベアレンとは逆に、これらのビールが飲めるのは盛岡市内でこのステラモンテだけであるので、その意味では貴重である。

蔵元がつくる地ビールが多い岩手県
 民話の里として有名な遠野市。ホップ生産日本一の岩手県の中でも最も多い生産量を誇るのがこの遠野市である。ここには「遠野麦酒ZUMONA(ズモナビール)」がある。遠野の民話は全て「むがしむがしあったずもな」という言葉で始まるが、「ズモナビール」の「ズモナ」とは、この語尾の「ずもな」から取った名前である。醸造しているのは「國華の薫」などの遠野の地酒を醸造している上閉伊酒造である。ピルスナーとヴァイツェン(ドイツ語で「小麦」の意味で大麦の他に小麦も使った濁りのあるビール)、アルトがメインだが、他に龍泉洞の水を使った「龍泉洞ビール」、三陸沖の海洋深層水を使った「三陸 海のビール」など個性的なビールも醸造している。遠野の街中にある「ズモナハウスTanto Tanto」(遠野市中央通り4-6、TEL0198-63-2077)や郊外の柏木平レイクリゾート内にある「遠野麦酒苑」(遠野市宮守町下鱒沢21-110-1、TEL0198-66-2011、冬季休業)で味わえる。
 
 岩手県南部の一関市は先述の全国地ビールフェスティバルの会場として期間中は全国から多くのビールファンが訪れる地だが、ここには「いわて蔵ビール」という地ビールがある。醸造しているのは一関の地酒「世嬉の一」の蔵元、世嬉の一酒造である。岩手はこのように五つの地ビールのうち、三つが日本酒の蔵元によって作られている。東北では他に蔵元が作っている地ビールはないので、これは岩手の地ビールの特徴として挙げることができる。
 
 いわて蔵ビールは非常に種類が多い。定番のビールだけでもヴァイツェン、イギリススタイルのペールエール、それに三陸の牡蠣の身と殻を使ったオイスタースタウト、レッドエール、インディアン・ペールエール(通常のペールエールより苦みが強い)、パッションフルーツを使ったパッションエールがあり、これに季節限定のビールがあるが、その中には山椒の実を加えた「ジャパニーズハーブエールSANSHO」や干し柿から取った酵母を使った「自然発酵ビール」、地場産麦芽を100%使った「こはるビール」など個性的なビールが揃う。他に、贈答品限定としてクチナシ色素を使った青色の「サムシングブルー」もあり、結婚式などで人気である。いろいろなチャレンジをしていることが窺えるラインナップである。
 
 これらのビールは醸造所の敷地内にある「蔵元レストランせきのいち」(一関市田村町5-42、TEL:0191-21-5566)で味わえる。また、このいわて蔵ビールや遠野麦酒ZUMONAは、一関の全国地ビールフェスティバルや仙台のオクトーバーフェストにも出展しているので、地ビール好きにとっては結構お馴染みのビールと言えるかもしれない。

全国一、二の生産量を誇る地ビールも
 最後の一つは岩手県内屈指の豪雪地帯、旧沢内村(現西和賀町)にある「銀河高原ビール」である。九六年に醸造を開始した、東北では老舗の地ビールである。銀河高原ビールは東北の地ビールの中で屈指の生産量を誇っている。生産量を公開していない醸造所もあるので断言はできないが、東北のみならず、全国でも一、二を争う生産規模であることは間違いのないところである。そのお蔭で、缶に入った銀河高原ビールは全国のスーパーや酒屋チェーンなどで見掛けることも多い。値段も1缶二〇〇円台で地ビールの中では比較的安価であることもあり、私の日々の晩酌によく利用されるビールである(笑)。
 
 もちろん、安いだけではない。地ビール醸造所の中でドイツをお手本にしたところは、麦芽とホップと酵母と水以外の原料は使わないというドイツの「ビール純粋令」に忠実に従ってビール作りをしているところが多いが、銀河高原ビールも、麦芽100%、そして酵母無濾過を貫いたビールを作っている。別にビール純粋令を守っているビールがいいビール、守っていないビールが悪いビールということではなく、要はスタイルの違いというだけの話なのだが、普通、オレンジピールやコリアンダーなどを加えて柑橘系の香りと味を出すベルギースタイルの「白ビール」であっても、銀河高原ビールはドイツ流に麦芽100%で作ってしまう。ビール純粋令の制約を逆手に取って、それを活かして銀河高原ビールらしさに変えてしまう、このような姿勢がお気に入りの理由の一つである。
 
130603-211613 定番は何と言ってもヴァイツェンで、他にペールエールもあるが、このペールエールもヴァイツェンのように濁りがあるところが銀河高原ビールらしいところである。よく飲まれているピルスナーだけではなく、ビールにはヴァイツェンというスタイルもあるのだということを世に知らしめた一番の立役者が銀河高原ビールであると思う。醸造所に隣接している「沢内銀河高原ホテル」(和賀郡西和賀町沢内字貝沢3地割647-1、TEL0197-85-5311)で出来立てが飲める他、仙台駅近くにある「夕焼け麦酒園」(仙台市青葉区花京院1-2-20、TEL022-262-5573)でも写真のような樽生が味わえる。
 
 こうして見てきたように、岩手県内には実に個性的な地ビール醸造所が、それも五つもある。足を運んだ折にはぜひ複数の地ビールを味わってみていただきたいものである。


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