2014年04月16日 

私的東北論その56〜そうだ、桜を見に福島へ行こう(「東北復興」紙への寄稿原稿)

tohoku-fukko23 「東北復興第23号が本日発行された。同紙には創刊号から記事を寄稿しているが、寄稿した記事については、これまで概ね同紙の発行から1か月以上経過した後に本ブログでも紹介するようにしていた。

 ただ、今回寄稿した記事のテーマは「桜」である。1か月後では花は既に散ってしまっているだろう。今回、東北最大の桜の名所である福島県を取り上げたが、今の時期にこそ読んでいただきたい内容であったので、今回の記事に限り、発行人である砂越氏の承諾を得て、「東北復興」紙と同時に本ブログでも掲載することにした。

 そうそう、もちろん私の記事などよりも読み応えのある記事が他にたくさんあるので、ぜひ「東北復興」紙の方も読んでみていただければと思う。

そうだ、桜を見に福島へ行こう

東北最大の桜の名所・福島県
 今年も桜のシーズンがやってきた。東北で最も桜が早く咲く福島県いわき市では4月2日、ソメイヨシノが開花し、桜前線が東北に到達した。
 
 聞くところによると、桜前線の速度はおよそ時速0・7kmとのことである。東北の最南端である福島県いわき市の勿来の関から、東北の最北端である青森県大間町の大間崎までは直線距離で約520kmであるので、時速0・7kmで北上すると約31日掛かる計算になる。従って、桜前線はおよそ1ヶ月かけて東北を北上し、だいたい5月のゴールデンウィーク期間中に津軽海峡を渡ることになるわけである。ちなみに、いわき市の標本木は東日本大震災時に津波を被ったが、その塩害にも負けずに今年も花を咲かせたそうである。
 
 日本中がこれだけ、いつ咲くか、いつ咲くかと気にする花は、桜を措いて他にない。唯一対抗できるとすれば、花ではないが秋の紅葉であろうか。そう言えば、どちらも「前線」の動きに注目が集まる。ともあれ、それだけ日本人にとって桜は特別な意味を持った花で、桜の樹の下で花見をすることはあっても、チューリップの花を見ながら花見をすることはまずない。
 それだけに、桜の名所と呼ばれる場所、あるいは桜の名木と呼ばれる樹は、日本中至る所にある。ここ東北に関してもそうである。とりわけ有名なのは「東北桜三大名所」と呼ばれる弘前城(青森県弘前市)、角館(秋田県仙北市)、北上展勝地(岩手県北上市)の桜であるが、それ以外にも東北には各地に桜の名所、名木が存在する。
 
 この時期、ウェブ上でも桜の名所を紹介したサイトが多数存在する。それらのサイトで東北の桜の名所を調べてみると、あることが分かる。例えば、るるぶ.comの「桜前線とれたて便2014」では、東北六県の桜の名所の数は、青森10、岩手11、宮城9、秋田12、山形14、福島36である。Walkerplusの「全国お花見1000景」では、青森11、岩手26、宮城20、秋田21、山形25、福島47である。駅街ガイド.jpの「お花見ガイド2014」では、青森21、岩手24、宮城23、秋田25、山形27、福島62である。
 
 お気づきのように、先に紹介した「東北桜三大名所」にこそ入っていないものの、福島の桜の名所の数は、東北の他の5県と比べても突出して多いのである。「東北・夢の桜街道〜復興への祈りを捧げる 桜の札所・八十八カ所巡り」では、東北の88ヶ所の桜の名所(札所)を挙げているが、ここでも福島の桜の札所は全88ヶ所のうち21ヶ所に上る。ちなみに、福島におけるこの桜の名所の数の多さは全国的に見ても、概ね東京、京都に次ぐものとなっているようである。

福島の桜は咲き誇る
 地元福島県でも、こうした状況をよく理解しているのであろう。福島県内の桜の名所を紹介したサイトは実に充実している。ふくしまの旅(福島県観光情報サイト)の「ふくしま さくらスポット」には実に、195ヶ所もの桜の名所が紹介されている。福島県のサイト内にある「さくら回廊ふくしま」も、地域ごとに桜の名所、名木を詳しく紹介しており、見応えがある。
 
滝桜(三春町観光協会のサイトより) そうした中で、東北最大の桜の名所・福島を代表する桜と言えば、何と言っても三春町の「滝桜」であろう。日本三大桜の一つに数えられる、樹齢1000年以上とされる枝垂れ桜の巨木である。無数に咲いた花が、まさに滝のように流れ落ちるように見える。「滝桜」と呼ばれるようになったのもむべなるかなという姿だが、実は滝という地名の場所にある桜だから滝桜という名なのだそうである。三春町のサイト内には「滝桜ライブカメラ」があり、滝桜の現在の様子をリアルタイムに確認できる。開花している時期にはアクセスが集中するそうである。
 
 福島県内には、この滝桜以外にも大玉村の馬場桜や、猪苗代町にあって会津五桜の一つに数えられる大鹿桜など、樹齢1000年を超えるとされる桜の古木がある。また、樹齢500年以上と言われる桜も県内各地に点在している。福島の人たちがいかに古くから桜を愛でてきたかを如実に示していると言える。 他にも、小野町にある夏井川の千本桜や会津若松市の鶴ヶ城公園の桜、そして東北の「桃源郷」として知られる福島市の花見山、下郷町の戸赤集落の山桜などは実に見事である。
 
 郡山観光交通のサイト内には「平成26年春場所枝垂れ桜花番付表」がある。東西横綱2本(東の正横綱はもちろん滝桜である)以下、大関6本、関脇6本、小結6本、前頭80本の、実に100本の枝垂桜が大相撲の番付表になぞらえて紹介されている。他にも枝垂れ桜を除く「福島の一本桜best30」と、「福島のお花見名所best30」が挙げられており、その充実ぶりが窺える。

桜の花の真実の姿
 桜の名所ということで言えば、返す返すも残念だったことがある。2km以上に亘って道の両側に植えられた桜のトンネルが続く富岡町の夜の森(よのもり)公園近くの桜並木である。私も大好きで何度も足を運んだこの桜の名所は、東日本大震災による福島第一原発の事故によって今も帰宅困難区域となっており、震災前に富岡町に住んでいた人が一時立ち入りする以外の立ち入りは認められていない。
 
夜の森の桜並木のトンネル(富岡町のサイトより) 従って、今まで紹介した各サイトでも、この見事な夜の森公園の桜並木は取り上げられていないのである。いつかまた大手を振って足を運べる時が来ることを切に願う。
 
 富岡町のサイトでは、震災後の2012年に撮影した夜の森公園の桜が、写真と動画で紹介されている。また、マウス操作によって360度のパノラマ写真で富岡町の桜を鑑賞できるページもある。これらの写真、動画は実に美しいが、この美しい桜が見られない現実を思うと、本当にやるせない、悲しい気持ちになる。
 
 昨年のNHK大河ドラマ「八重の桜」は、幕末から明治という激動の時代を生き抜いた新島八重の生涯を描いたドラマだったが、その最終回に会津藩の家老だった西郷頼母と新島八重との間で、桜の花を愛でながら、次のようなやり取りがある。

西郷頼母「わしはな、新政府がなじょな国つくんのか、見届けんべと、生ぎ抜いてきた。…んだげんじょ、戊辰以来、わしの眼に焼ぎ付いたのは、なんぼ苦しい時でも、懸命に生きようとする人の姿。笑おうとする人の健気さ。そればっかりが、俺の心を、胸を揺さぶんだ」
 
新島八重「花は、散らす風を恨まねえ。…ただ、一生懸命に咲いでる」

西郷頼母「八重、にしゃ桜だ。…花は散っても、時が来っと、また花を咲かせる。何度でも、何度でも、花咲かせろ」

 「八重の桜」で作者が一番訴えたかったことは、まさにここにあったのだろうと思う。
 
 桜は、その散り際の潔さから、かつては戦場で命を捨てる兵士の姿になぞらえられた。しかし、そうした桜の姿は、桜の一面のみを見ているに過ぎなかったのだと思う。「八重の桜」の西郷頼母の言う通り、桜は、花を散らせて終わり、では決してない。今年無慈悲な風雨にさらされてその花を散らせても、翌年再びまた見事に花を咲かせるのである。それこそが、桜の花の真実の姿である。そしてきっと、だからこそ、桜は日本人にとって、特別な花であり続けたのだろうとも思う。夜の森公園の桜も、残念なことに誰も見る人はいないにしろ、きっと今年もまた見事に咲くに違いない。
 
 折りしも、ふくしまプレDC「福が満開、福のしま。」と銘打った福島県観光キャンペーン特別企画が実施されている。その中では、福島県205の花の名所を巡る「花の王国ふくしま キビタンフラワースタンプラリー」も実施されている。サイトからは公式ガイドブックもダウンロードできるが、ガイドブックの中だけでも春爛漫の花盛りで、実物はさぞやと思わせられる。
 
 今年はぜひ、福島で咲き誇る桜を見届けに行こうと思う。


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