2014年12月02日 

私的東北論その61〜観光振興から「東北は一つ」を〜その東北の最大の観光資源は?(「東北復興」紙への寄稿原稿)

tohoku-fukko29 「東北復興第29号が10月16日に刊行された。今回は、岩手・大槌町の復興の現状や遠野市の遠野まつりについて取り上げられている。げんさんの連載むかしばなし「芭蕉の辻で会いませう」も17回目を迎えてますます話がどこに向かうのか予断を許さない(笑)。福島県浜通りを目的地に旅を続けている「笑い仏」さまは現在、長野市の長谷寺にご逗留中のようである。

 この号に私が寄稿した記事が以下である。






観光振興から「東北は一つ」を〜その東北の最大の観光資源は?

東北各県の「魅力度」は中くらい?
 「地域ブランド調査2014」の調査結果が10月6日に発表された。これはブランド総合研究所が毎年調査しているもので、今年で9回目である。

これを見ると、「都道府県の魅力度ランキング」で上位にランクインしているのは、1位北海道、2位京都府、3位沖縄県、4位東京都、5位神奈川県、6位奈良県、7位福岡県、8位大阪府、9位長野県、10位長崎県である。1位から9位までは昨年と同じで、とりわけ北海道は魅力度ランキングに都道府県が加わってから6年連続で1位を譲り渡したことがない。

 我らが東北各県を見てみると、宮城県が13位、青森県が18位、秋田県が20位、岩手県が24位、山形県が28位、福島県が29位となっている。ちなみに、この結果も概ね昨年同様で、それほど大きな変化はない。すなわち、東北各県は、地域ブランド調査においては、ほぼ中位の位置を占めているわけである。

各市町村の魅力の発信を
 同調査では、市区町村についても「魅力度」を調査している。その結果は1位函館市、2位札幌市、3位京都市、4位小樽市、5位横浜市、6位富良野市、7位神戸市、8位鎌倉市、9位金沢市、10位屋久島町である。
北海道からなんと4つの都市がランクインしている。また、都道府県ランキングで5位の神奈川県からも2つの都市がランクインしている。これらの道県では、魅力ある都市の存在が魅力ある道県のブランドにつながっていると言えるかもしれない。
対照的なのが東京都で、都としては4位ながら、市区町村では新宿区が辛うじて20位にランクインしているに過ぎない。東京は都全体としての魅力度が突出しているわけである。

 我らが東北の市町村はと言えば、上位100位までで見てみると、仙台市が22位、青森の弘前市が49位、盛岡市が58位、山形の米沢市が99位である(参照サイト)。

 こうして見てみると、ある程度分かることがある。東北の各都市の魅力度を高めていくことが、都道府県としての魅力度向上につながりそうだということである。そのための情報発信が不可欠である。情報発信と言うと漠然としているが、要はその都市の魅力あるイメージを定着させることである。上位10位の都市のうち札幌市や横浜市などを除く中小規模の都市を見てみるとそれがはっきりしていることが分かる。函館市は函館山からの夜景、小樽市は小樽運河と倉庫群、富良野市はラベンダー畑、金沢市は兼六園、屋久島町は屋久杉といった感じである。

 行ったことがなくても都市の名前を聞くだけでそのイメージが想起される。知らないものよりも知っているものに魅力を感じやすいと考えれば、まずは知ってもらうこと、それも端的に「この街はこれ」というイメージづくりとその発信が重要だろう。

外部からの評価が高い東北各県
 都道府県の「ブランド力」ということでは、博報堂が違った視点で調査・分析した結果を今年5月に公表している。「“属”ブランド力調査」と称するものである。同社では、魅力的なブランドづくりに必要なのは「志」、「形」、「属」の3つの要素であるとして、その観点から地域社会のブランディングを支援するとしているが、このうち「属」とは同社によれば、「ブランドのもとに集まる仲間、ブランドを応援するサポーターやコミュニティ」のことである。

 「“属”ブランド力調査」では、その定義に則り、「自分の都道府県には、自分の都道府県を愛している人が多いと思うか」といった5つの質問に対する回答結果から各都道府県における“属”の度合いを明らかにすると共に、県内に住む人の評価(内部評価)と県外に住む人の評価(外部評価)をそれぞれ集計して比較している。
 その結果を見ると、東北各県はいずれも「内部評価」よりも「外部評価」が高い。つまり、その都道府県の「ブランド」について、住んでいる人の評価よりも外から見た人の評価が高い。特に、肯定的な回答をした人の割合が外部評価と内部評価とで、秋田では倍以上、青森も倍近くの差に上っており、この両県ではとりわけ内部評価の低さが際立っている。東北の他の4県もこれほどではないが概ね似たような傾向である。

 この結果についてはもちろん、東北人に特によく見られる「謙譲の美徳」の為せる業と見ることもできる。しかし、そのように「自分たちのよさ」について控え目に見ていくうちに「暗示効果」で本当によさが見えなくなってしまっては本末転倒である。

 同調査で肯定的な評価する人の割合が最も高かったのは、内部評価、外部評価とも沖縄県であった。沖縄県の人たちは自分たちの県のことを極めて好意的に捉えている。

 幸い、東北各県は好意的な外部評価の割合が極めて高い。外部評価が最も高い沖縄県の次は北海道、京都府、大阪府と続くが、その次は宮城県、青森県で、さらに長野県を挟んで秋田県、岩手県、山形県の順である。原発事故の影響か、福島県はそこから6県挟んだ次に位置するが、それでも全体の中での外部評価の順位は高い。東北は外部から極めてよく見られているのである。まずこのことを「内部」にいる我々がしっかりと認識しておくことが必要である。

「東北は一つ」を観光から
 9月25〜28日に東京で、「ツーリズムEXPOジャパン」が開催された。これは、従来の「旅フェア」と「JATA旅博」という二つの観光イベントが統合された、「日本全国、世界各国の旅情報が体験できる」を謳った世界最大級の旅行見本市である。

 このイベントには東北各県も出展する。これまでは各県個別に観光PRをするのが通例だったが、今回のこのツーリズムEXPOジャパンでは、東北観光推進機構が音頭を取って「東北はひとつ」をテーマに、青森、秋田、宮城、山形の4県と仙台市が合同で、東北の自然、歴史、暮らしを紹介する共同ブースを設けた。その近くに岩手と福島のブースも配置された。

 こうした形で、東北が一体となって観光PRをすることのメリットは大きい。6県合わせて北海道に匹敵する面積のある東北地方のスケールメリットが活かせる他、6県の中で県境を超えて相互に関連し合う観光資源を結んだツアーなどもプランニングできる。

 首都圏の百貨店などで行われる物産展を見ても、北海道物産展の人気は断トツだが、6県の物産を集めた東北物産展の人気もそれに次いで高いと聞く。個別の県のブランド力を高めることも大事だが、それ以上に6県が一つとなって「東北ブランド」の下で観光振興を図ることで、1つひとつの県でできること以上のムーブメントを起こせる可能性があるのである。

 東武百貨店で「カリスマバイヤー」として北海道物産展を売上日本一に仕立てた人物として知られる内田勝規氏は、沖縄物産展に代えて「奄美の観光と物産展」を開催した理由を問われて、「人口では到底沖縄に及びませんが、奄美には独特の歴史・文化があります。(中略)そういう歴史や文化を取り上げるところに、物産展を行う意義があると考えていました。なぜなら物産展とは、単に物産品というモノを売る場ではなく、地元で作る人たちの『心』(歴史や文化)を包んで売る場だからです。売り場の販売員は、そういう『物語』をお客様に話して欲しいわけです」と話している(参照サイト)。そのような「独特の歴史・文化」や「物語」は、東北にも間違いなくある。それをこれまでのように6県毎に細切れにして出すのではなく、一体のものとして出すことが今、必要なのだと思う。

「東北の魅力は人だと思う。」
 やや旧聞に属するが、山形県観光振興課と荘銀総合研究所がまとめた平成19年度の顧客満足度調査の報告書がある。その中では山形県内に宿泊した人に聞いた「山形県を訪れて感じた各項目の評価」がある。それを見ると、「自然や風景」「温泉」「食べ物」に次いで満足度が高かったのは「地元の人の親切さ」であった。

 これはあくまで山形県における調査結果であるが、十中八九、東北の他の5県についても同様の結果が得られるであろうと思う。東北の魅力というのはまさにここにあるのだと思う。

 「お・も・て・な・し」が流行語になる以前から、東北には他人に親切にすることが当たり前に根付いていた。24号のこの欄で私が体験した2、3の例を挙げたが、そうした話がごく普通にあるのが東北の強みだと思う。

 今年の「第62回日本観光ポスターコンクール」で審査員特別賞を受賞したポスターがある。「東北の魅力は人だと思う。」という作品名の、震災からの復興を目指す人たちを描いた一連のポスター。東北の学生のプロジェクト「aCtion!×tohoku」の活動の集大成とのことである。「東北が世界に誇れるものとは?」「東北だけにしかない魅力とは?」の問いにたどり着いた答えがこの、「東北の魅力とは人だと思う。」だったのである。私も全く同様に思う。

 先に挙げた「地域ブランド調査2014」では、岩手県、宮城県、福島県の「観光意欲度」の経年比較についても触れている。それによると震災前の宮城県と福島県の観光意欲度は震災のあった2011年に大きく落ち込み、翌2012年から2014年に掛けて回復し、2014年はかなり2010年の水準に近づいたという結果であった。

 一方の岩手県は震災のあった2011年にもほとんど観光意欲度が落ち込まなかった。これは平泉の文化遺産の世界遺産への登録が奏功したものと考えられる。しかし、逆にその後2013、2014年と同県の観光意欲度は微減傾向となっており、見方によっては「世界遺産効果」が薄らいできたとも言えそうである。

 東北にはもちろん、豊かな自然、その恵みとしての豊かな食文化、名湯秘湯がひしめく温泉、独自の歴史・文化など、さまざまな魅力があるが、それらに増して魅力ある「人」に焦点を当てた情報発信もこれから特に力を入れていくべきである。それは、観光振興という枠を超えてきっと、これからの地域コミュニティ活性化にもつながっていくことと思う。


anagma5 at 21:21│Comments(0)TrackBack(0)clip!私的東北論 

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