2015年12月31日 

私的東北論その76〜東日本大震災被災地からの伝言(「東北復興」紙への寄稿原稿)

 11月16日に刊行された「東北復興」第42号では、これまで震災に関連して「記憶の記録プロジェクト『田』」として活動してきた中で聴いた言葉を紹介した。東日本大震災を経て、どのようなことを伝えたいと現地の人たちが考えているか、その一端をぜひ知っていただきたいと思う。


東日本大震災被災地からの伝言

被災地から伝えたいメッセージ

 本紙第39号でも書いたが、私は「夜考虫。」という集まりで、震災関連のプロジェクト「記憶の記録プロジェクト『田』」を担当している。このプロジェクトでは、震災以降、とりわけ介護・福祉領域の方々の震災発生から今に至る行動やそこにある思いなどについて話していただく機会を作っている。
 そうした中で私が意識してお聴きしているのは「他の地域の人、この地域のこれからの人に一番伝えたいこと」が何かということである。この日本に住んでいる限り、いつでもどこででも地震を始めとする自然災害に遭遇する可能性はある。未曽有の大災害を踏まえて伝えたいことはどのようなことか、今回はこれまでの活動の中で得られたメッセージのうちのいくつかを紹介していきたいと思う。

津波について

・地震が来たら津波!
・津波の時いち早く高い所へ避難する。
・地震後6時間は自宅に戻るな!「津波てんでんこ」。
・津波の情報が入ったら少しでも早く内陸部に逃げる!
・大地震が来たらすぐに陸続きの高い場所に逃げて下さい。とにかく生き残る努力を。
・逃げる時は大きな声で叫んで逃げる。みんなに危険を知らせる。
・とにかく逃げろ!!!戻るな!!危険×

普段からの心構え

・まずは「個」で耐える力が必要。
・災害では周りは助けてくれない。まず自分で守るしかない。
・結婚したら海のそばに寄らないで(家を建てないで)。
・80超えた人は逃げられない。初任給をもらったらぜひ祖父母に車椅子をプレゼントして。
・住んでる所、職場で、高い所を確認、集合場所を決めておく。
・車は常に使えるようにしておく。車の燃料は半分になったら給油する。
・皆、自分の所には来ない、大丈夫と思っている。海・山の災害を忘れずに準備してほしい。
・自分の住んでいる「地域」を知る。日常生活の中での「防災」「減災」「備蓄」を話し合いで、「普段」の生活で考える。
・起きないだろうと思っていたことも起こる可能性がある。自分の住んでいるところから遠いほど、身近に感じられないもの。
・自分で生きる力を常日頃から意識していかないと。震災で動揺する人も、肝の据わった人もいた。生きる力、生きる知恵を。(震災を)知らない人には正しい情報を集めて残しておくことが必要。3日は我慢。
・日頃から訓練し、常に頭の中に置いておくべき。災害は時と所を選ばない。

震災を通じて感じたこと

・昨日までしゃべってた人でも死ぬんだなと思った。
・震災を機につながりが増えた。
・できることを一個一個やった結果として今がある。いい経験をしたと思う。
・本当に困っている人は支援がほしいと言えない。支援ニーズの把握をいかに行うかが重要。
・震災はつらい出来事だけど、それを乗り越えたからこそすばらしい出会いがあり、人と人との絆が深まったと思う。
・情報は信じる。そして共有する。「危ない」は「危ない」として対応する。何もなければそれでいい。後手に回ったら取り返しがつかない。
・行政はあてにはならない。利用者の家族、お付き合いのあった人、見ず知らずの人に助けられた。そうした関係を普段どれだけつくっておくか。
・津波から生き延びたその後が実は大変。助かった入所者に多大なストレスがあった。震災後に亡くなった人は、本来はもっと長く生きられたのではないか。
・震災で便利な生活が消えた。でも人と人のつながりが出来た。助け合わないと生活が築けない状態になった。亡くなった人も多いけど、実のある生活を知ることが出来た。
・「災害は起きる」を前提に、福祉に携わる人が協力して対応する仕組みづくりが必要。バラバラでは力を発揮できない。専門家が連携して対応する支援チームを複数つくらないと。
・災害は単独では来ない。人災もあるということをしっかり頭に入れて対応を。情報が来ない、ガセ情報が来るのも人災。天災はしょうがないが、大きな災害に並行していろいろな不備が災いを大きくする。
・震災体験は、一時期「武勇伝」化して語られた。4年経った今は忘れられ始めている。
・津波は憎い。でも、津波が取り持った縁もある。

震災を踏まえた地域づくり

・その地域に住む先人の経験を取り込んだ地域作り!!
・元々つながりが密な地域だったことが震災時の情報収集や発信にも活きた。
・今だからこそあのときのことを安心してはき出せる場が必要。そこからじゃないと未来は造れない。
・自分が、自分の身の回りの人や自分の先祖が体験したことを本当に活かせる情報の共有、コミュニティーの形成が大切。
・助けが来るまでの助けはご近所。隣に誰が住んでるかから始めて嫌がらずにご近所付き合いを。つながりは自分のため、人のため。
・日頃から地域のつながりを密にしておきたい。こういう人がいるというアピールをしておけばいざという時声掛けくらいはしてくれるかもしれない。
・いざとなると生きるために自分のことしか考えられなくなる人もいる。決していいことだけがあったわけではない。だからこそ、コミュニティーが大事。
・経済的問題で仮設から出られない人もいるのではないか。互いにできることを担って報酬が得られて共同で生活できるようなシステムが必要だと考えている。
・感謝の気持ちをもち、ありがとう一杯聞こえる豊かなまちになるように。

他の地域へのメッセージ

・あたり前のことは、あたり前じゃないよ!!
・他地域の人に伝えたいことは、人間にはかなわないものがある、ということ。
・命を大事に!いつ何があるかわからないから。
・どんなときでも協力は強力!!助け合って!!
・地域コミュニティーを大事にしよう。友人を作りましょう。
・地域のつながり、支え合いを。他の地域でも専門職が仕掛け作りを。
・今、この瞬間、自分にできる精一杯のことをして生きていますか?
・後悔しないようにポジティブに生きて。どうせ後悔するならやってから。
・自分の体調と生活環境を万全にしなければケアに向けるための力は起きない。
・常時はムリでも今の時間や家族との当たり前を当たり前と思わないで考えてみて!
・「世のため人のため」が結局は自分のためになる。人を粗末にすれば自分も粗末にされる。
・災害後、その当時のことを話せる人は話していってください。そして、聴いてください!!
・百聞は一見にしかず!!この街の「今」そして「これから」を何度でも見に来い!美味いもの食ってけらいん!
・まずは自分の命を守ること。家族の命も優先してもいい。やりたいことをしてほしい。…って自分にも言い聞かせてる。
・人は日進月歩、成長しなければならない。停滞したり、2、3歩下がったように見えたりしても、それは前進のための準備。
・東北にはいろいろな人がいる。他の地域の人は東北に学んでほしい。毎日楽しく生きて。苦しいことも悲しいことも含めて充実した1日を。
・現代の文明はありがたいが、いざという時はとても不便(使えないよ)。一人ひとりやる事はある。自信をもって生きて。隣の人を大切に。
・人は孤独ということを日頃から自覚して生きること。何か起きた時にどう動いたらいいか判断に迷ったら、自分の使命と、人とつながっていることを頼りに動いていく。
・他地域の人に伝えたいことは、管理者として、家族を持っている身として、ある程度の覚悟が必要だということ。家族の安否をあれこれ考え出すと自分を保てなくなるので考えないようにした。利用者とスタッフを守ることが最優先だったので、生きていると言い聞かせた。最悪の場合のシミュレーションをしつつ、そうならないための準備が必要。
・たくさんのご支援ありがとうございました。

これからを生きる決意

・今を生ききる。
・心の復興を、皆で行いたい。
・毎日を楽しく生きよう。
・人と関わることで楽しく生きる。皆で生きる楽しさを伸ばせる地域をつくる。
・組織の長として覚悟を決めて役割を果たす。死んでも死ぬ以上のことはない。
・震災はきついけれど、試練を与えられたと思って、前向きにプラスに考えたい。
・過去を振り返らず、前を向いて行きましょう。夢も希望もないけど、もう少し生きてみようかな。
・ただただ生きているのでは面白くない。生きてきた経験が関わる人の生き方にプラスになれば。
・人の親切、ありがたさに救われた。自分たちも何かあったら助けたい。人と人とのつながりは大切にしたい。
・自分の街をどうしたいのかな?震災時の様子・心構えなど、くらしやすい、住みやすい町にしたいな!次世代につなぐ為にも。
・いつ死ぬか分からない。いつでも後悔しない、やりたい事をやっていこー!!普通の事あたりまえかもしんないけどとても幸せなんだぜ!!丁寧に大事に物事やっていこー!!
・身体障がいの人への支援の手は少ない。居場所もない。ないなら自分達で創る。やりたいことをやって地域に貢献したい。生かされたからには自分のため人のために何かやりたい。
・身近に起きるとは見ていなかった。自分の身は自分で守る。自分で守れない人を抱えている。どんな判断をするのがいいのか悩ましい。自分の身を守れない人を守らざるを得ない立場。自分の身を守り、家族も守り、利用者も守る。
・震災で人の心の温かさを感じた。どんな人にも役割があって生かされている。無駄な体験は一つもない。感謝して命を大切に生きたい。
・僕らの震災は続いている。それを分かっていただきたい。立ち直るために必要なことがある。震災の人たちのために働きたいという心ある人たちはいる。心ない人を恨むより、心ある人たちと一緒に復興に取り組みたい。
・他の地域が同じ目に遭ったら今度は僕らが助けたい。

 これらについて私から付け加えることは何もない。これら、震災をくぐり抜けてここまで来た一人ひとりのメッセージから何か得るものがあれば、これに勝る幸いはない。


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