2016年04月16日 

熊本地震を受けて〜私的東北論その80

 「平成28年熊本地震」と名付けられた4月14日の地震は、直下型地震だったためにM6.5と規模はそれほど大きくなかったにも関わらず、最大震度が7という、最近では東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震以来の大きな揺れを引き起こした。改めて直下型地震の恐ろしさを知った。

 もう二度と地震で人が亡くなるのは見たくないと思ったが、今回の地震でも残念ながら9名の方が亡くなった。本当に心が痛む。ご冥福をお祈りしたい。

 テレビで報じられる映像を見ても、他人事とは思えない。居ても立っても居られないような気持ちになる。何か伝えられることはないか考えて、思いつくままに取り急ぎまとめてみる。後から思いついたことは随時追記していく。


熊本の被災地の方に伝えたいこと

 夜間に起きた非常に大きな揺れ、度重なる余震、気の休まる間もない状況だろうとお察しします。本当に心が痛くなります。気象庁が余震について解説しています(参照サイト)。これを見ると、余震は1週間から10日は続くとあります。今回の地震は殊の外余震が多いようですので、くれぐれも気を付けてください。

 特に気を付けていただきたいのは、「ため池」です。何のことかと思われるかもしれません。東日本大震災において、津波の被害の甚大さの陰に隠れてあまり知られていませんが、福島県でため池が3か所決壊しました。このうち藤沼湖の決壊では、ため池の大量の水が濁流となって下流の集落を襲い、死者・行方不明者8名という被害が発生しました。

 全国にため池はおよそ21万か所あり、そのうち7割が江戸時代事前に築造されているそうです。熊本県内にも2,158か所のため池があります。これまでの本震と余震によって、かなりのダメージを受けているため池もあるかもしれません。これらのため池の近くには決して近寄らないように特に気を付けてください。
ため池については、農林水産省のページが詳しいです(参照サイト)。

 私は、主に介護・福祉関係者の方に震災に関する話を聴く活動を行っています。その中で必ず尋ねるのが、「他地域の人、この地域のこれからの人に一番伝えたいことは何か」ということです。

 その中で挙がったいくつかの声を以下に示します。

・情報を得てください(ラジオは用意して)。
・助けが来るまでの助けはご近所。
・どんなときでも協力は強力!!助け合って!!
・とにかく生き残る努力を。
・本当に困っている人は支援がほしいと言えない。
・今後のために正しい情報を集めて残しておくことが必要。
・災害は単独では来ない。人災もあるということをしっかり頭に入れて対応を。情報が来ない、ガセ情報が来るのも人災。天災はしょうがないが、大きな災害に並行していろいろな不備が災いを大きくする。 ・人間には敵わないものがある。でも、生きてさえいれば何とかなる。
・震災はきついけれど、試練を与えられたと思って、前向きにプラスに考えたい。
・震災はつらい出来事だけど、それを乗り越えたからこそ、素晴らしい出会いがあり、人と人との絆が深まったと思う。
・震災で人の心の温かさを感じた。どんな人にも役割があって生かされている。無駄な体験は一つもない。感謝して命を大切に生きたい。

 発生したばかりで、現状を受け入れる心の余裕もないかもしれません。避難所に避難している人は、環境の大きな変化に体調を崩したりすることもあるかもしれません。でも、震災からの復興は「長期戦」です。とにかく栄養と休養をしっかり取って、家族、友人・知人とつながりを保ちつつ、できることを少しずつ、一つずつ積み重ねていってみていただけたらと思います。

(2016.4.16追記)
 この記事を書いている間に、さらに大きな地震が起こって、さらに多くの方が亡くなってしまいました。なぜそれを書かないでしまったのだろうと思います。その可能性についても頭の中にはあったのに、書かないでしまいました。書いても時間的には間に合わなかったわけですが…。

 東日本大震災で、私たちも実は同じ経験をしていました。あの3月11日のM9.0の地震の2日前の3月9日に、M7.3の大きな地震を経験していました。その2日後の大きな地震ですっかりそのことは忘れられてしまっていますが、確かに、「大きな地震があったから、後は余震だ」ということばかりでなく、それがその後に来る本震の前震ということもあるのでした。

 報道では、気象庁は16日午前の記者会見で、熊本、阿蘇、大分へと震源が移動して地震が起きていることについて、「広域的に続けて起きるようなことは思い浮かばない」と話していますが、これは見方を変えれば、東日本大震災で起こったことが時間をかけて起こっていると見ることもできます。東日本大震災では、5分前後の間に3つの震源で地震が起きました。まず宮城県沖の震源で地震が発生し、それに続いて宮城県のさらに沖合で地震が発生し、さらに茨城県北部沖でも地震が発生し、それらが複合して巨大な地震になったとされています。今回はそれが5分ではなく数日という単位で起こっているという見方もできるのではないでしょうか。
 
 とすると、先の文章で「余震は1週間から10日続く」という気象庁の解説を紹介しましたが、もっと長いスパンで備える必要があると思います。東日本大震災では、2011年3月11日の本震の27日後の4月7日に、M7.2の極めて大きな余震を経験しました。その4日後の4月11日にもM7.0の地震がありました。これらの地震でそれぞれ4名の方が亡くなっています。地震から4か月後の7月10日にM7.3、翌年2012年の12月7日にM7.3、2年後の2013年10月26日にもM7.1の余震があり、2012年の地震で1名の方が亡くなっています。

 くれぐれも用心してください。ひょっとしたら、今回の地震も本震でないかもしれない、という前提で。また、もし今回の地震が本震であったとしても、本震がM7.3ということは、余震は14日の地震と同じクラスのものが来る可能性が大いにあります。山の斜面に近い建物、瓦屋根の建物、1981年以前に建てられた建物、そしてブロック塀には決して近づかないでください。

 ブロック塀は、鉄筋が入っていない塀が多数崩壊しているのを見てショックを受けました。私が子供の頃体験した1978年の宮城県沖地震の時は28名の方が亡くなりましたが、うち18名が鉄筋の入っていないブロック塀の下敷きとなって亡くなりました。それ以来、ブロック塀には必ず鉄筋を入れることになったはずなのですが、それ以前に作られたのか、いまだそうでない塀が多く存在しているのですね。

 瓦屋根の建物は台風には強いですが、建物上部が重くなる分、地震には極めて弱いです。1981年は1978年の宮城県沖地震で建物倒壊が相次いだことを受けて、建築基準法が改正されて耐震基準が強化された年です。この年から建物を建てる際に、「震度6強から7程度の大規模地震でも倒壊は免れる」ことが義務づけられていますので、この年以降に建てられた建物であれば、もちろん100%とは言えませんが、倒壊で命を落とすような事態はある程度避けられると思います。

(2016.4.19追記)
 Googleが「災害情報マップ」で「熊本地震リソースマップ」を公開し始めました。「スーパー営業情報」、「炊き出し&支援物資集積地点」、「給水所」、「給油可能ガソリンスタンド」、「営業中の銭湯・温泉」、「利用可能トイレ」、「自動車通行実績マップ」を地図上で確認することができます(右上の「レイヤ」をクリックして欲しい情報の項目にチェックを入れます)。

(2016.5.2追記)
 1981年以降に建てた建物は「震度6強から7程度の大規模地震でも倒壊は免れる」ことが義務づけられていると書きました。ところが、その後の調査では1981年以降の建物でも倒壊した建物があったとのことです。その理由として、建築基準法では震度7の地震が2度来ることは想定しておらず、1回目(4/14)の地震で倒壊はしなかったもののダメージを受けた建物が2回目(4/16)の地震で耐え切れず倒壊したということが考えられます。そしてさらに、「地震地域係数Z」の欠陥が指摘されています(参照サイト)。

 建物を新築する場合、建築基準法が定める「新耐震基準」に従って耐震設計を行います。この時、地震によって建物に作用する「地震力」を、「地震力」=「地震地域係数Z」×「標準地震力」という式で計算します。「標準地震力」というのは、「震度6強から弱い震度7程度の地震力」を意味します。問題の「地域地震係数Z」はその名の通り、地域によって異なる係数となります。地域係数Zが「1.0」であれば作用する地震力は「震度6強〜弱い震度7の地震力」、地域係数Zが「1.2」であれば作用する地震力は「一般的な震度7の地震力」、地域係数Zが「0.8」であれば作用する地震力は「弱い震度6強の地震力」になるとされます。つまり、同じように「新耐震基準」に従って耐震設計を行っても、地域によってその強度には差が出るということです。
 今回地震のあった熊本では、最初に設定された「地域地震係数Z」は0.8、その後2度ほど改訂されていますが、最新の2007年版でも熊本は0.8と0.9となっています。つまり、「新耐震基準」の建物でも、熊本の建物は震度7の地震には耐えられない可能性があったわけです。今回のような地震を経験すると、「地震地域係数Z」は有害無益であると言えます。参照サイトの記事によると、耐震強度を1.5倍にしてもそれによるコスト増は3〜5%程度であることが紹介されています。

 ともあれ、1981年以降に建てられた建物でも、「危険」と判定された建物には決して近づかないでいただきたいと思います。


東北を含む他地域の方に伝えたいこと

 政府の地震調査研究推進本部が長期評価結果一覧を公表しています(参照サイト)。これを参考に、自分の住んでいる地域でどのような地震が起こり得るのか、把握しましょう。ただし、この中の発生確率にはあまり左右されないようにしてください。低くても決して安心してはいけません。阪神淡路大震災の発生直前の同地域の地震の30年以内の発生確率は0.02〜8%でした。今回の平成28年熊本地震は布田川断層帯、日奈久断層帯が動いて起きたのではないかという見解が既に出ていますが、これらの30年以内の地震発生確率も、布田川断層帯で最大でもほぼ0〜0.9%、日奈久断層帯で最大でもほぼ0%〜16%でした。仮に自分の地域がほぼ0%であっても決して油断してはならないことが分かります。次にどこで大きな地震が起こるかを予測することは、現在のところほぼ不可能です。いざという時のための備えを進めましょう。

 今回の地震の被災者へのマスメディアによるインタビューで「え?」と思ったことがありました。「家具が倒れてきて…」という話が多いです。家具転倒防止対策をしていない家も多かったのかもしれません。これは必須です。ホームセンターに行けば家具転倒防止用品がいろいろ売っています。倒れてくると危険な大きな家具にはこれを使うようにしましょう。L字型金具が最も効果が大きいとされますが、壁や家具にねじ止めするのが難しい場合もあります。L字金具に比べると効果が低いとされるストッパー式、マット式、ポール式も、複数組み合わせることで効果を高めることができます。総務省消防庁は「地震による家具の転倒を防ぐには」を公開していて参考になります(参照サイト)。

 今回、家屋の倒壊が相次ぎましたが、建物の耐震補強工事は金銭的な面でなかなか進まないという現実もあります。それでも、屋内に耐震シェルターを設置するという方法もあります。費用は20万円から可能だそうで、仮に住宅が倒壊してもこの中にいれば守られるとのことです。東京都の耐震ポータルサイトに詳しい説明があります(参照サイト)。

 支援物資を送らなければと考えている人も多いと思います。その前に認定NPO法人レスキューストックヤードのサイトを見てみていただきたいと思います。「支援物資等を提供する」にある「物資による支援をする前に」は参考になります。(参照サイト)。以下のようなことが書かれています。

1. ものが不足するのは、ものが無いからではない

 災害で直ちにものがなくなることはなく、交通やライフラインが断たれて一時的に品不足が起こるだけ。供給ルートが立ち直ればすぐに大量の物資が被災地に届く。逆に被災地内外のルートが寸断されている限り、個人で物資を送っても被災者には届かない。

2. 届いた時には必要とする物が変わっている

 TVや新聞で足りないものを知ってそれから物資を送っても、被災地に届くまでに数日かかる。その間に被災地で必要なものは変わってしまい、受け取り手がいなくなった物資は、被災地で不良在庫になる。

3. 個人の物資支援はむずかしい

 個人で送れる物資は、量も質もバラバラ。同じ箱に衣類や学用品や食料をまとめて詰め込んだものは特に面倒。開封して仕分けないと配布も出来ないが、災害時にそんな人手はない。被災自治体は職員が総動員で被害の確認や避難所の運営に当たっているが、こうした人たちに一層の負担を強いることになり、結果的には有効に配布できないまま終わってしまうことになる。

4. 保管も処分もお金がかかる

 物資には保管料もかかる。最後の最後まで余った物資は廃棄処分することになるが、阪神・淡路のある自治体では物資の処分に2,300万円かかったとのこと。被災者の税金を使って処分しているのだから、こうなるともはや二次災害。

5. 「まだ使える」ものと、「これなら使いたい」もの

 自分のタンスにあるもので「まだ着られる」と思う衣類と、フリーマーケットで「これなら着てみたい」と思う古着、品質にずいぶん差がある。「まだ使える」中古品を被災地に送って、そのぶん自分が新品を買うのなら、はじめから新品を買えるお金を被災地に送った方がいい。救援物資は在庫処分ではない。

6. 送るときに注意したいもの

 古着は避け、なるべく新品を送る。食料では、生鮮品は腐り、保存食なら自治体に備蓄があったり、企業から提供があったりする

7. ものは金に替える

 ものを被災地に役立てたいのなら、フリーマーケットなどに出品して、お金に替えてしまうのも手。売り上げた金額は少ないかもしれないが、宅急便一箱送るのにもけっこうお金がかかる。その送料分を上乗せして被災地に送れば、それなりの金額になる。

8. それでもものを送る場合

 被災地支援をしているNGO/NPOやボランティアグループが物資の募集をしていることがある。これまでの経験を踏まえて、あらかじめ品目を絞ったり、被災地の外で仕分けをして被災地に届けるしくみを考えたりしている。いきなり被災地に届けるよりは多少は有効に使ってもらえる可能性が高い。

 救援物資が「二次災害」にもなり得るというのですから、よくよく考えなくてはなりません。このように見てくると、支援はモノよりお金の方がよいということが分かります。では、そのお金をどのように被災地に届ければいいのかということになります。

 すぐに思いつくのは、日本赤十字社などへの義援金です。「義援金」は被災者に配分されるお金です。今回の地震の義援金の受け付けも始まりました(参照サイト)。もう一つ、「支援金」というものがあります。被災者への配分ではなく、被災地で活動している専門性の高い緊急支援団体への支援として使われるのが「支援金」です。寄付サイト「GiveOne」のスタッフブログに詳しい説明があります(参照サイト)。

 熊本地域の被災者の方々に向けてそれぞれできる支援を行っていくと共に、自分自身の周囲を見回してみて、今ここで地震が来たら、という想定をしてみて、対応が不十分と思われるような箇所については、速やかにそれを補う取り組みを進めていく必要があると思います。

(2016.4.18追記)
 木楽社が、出版している「災害支援手帖」を、熊本地震を受けてWeb上で限定公開しています(参照サイト)。これは本当に素晴らしい判断です。英断です。熊本地震で支援を行いたいと考える人たちにとって、参考になる内容が本当にたくさん盛り込まれています。「支援はモノではなくお金で」という見解を紹介しましたが、それでもどうしてもモノを送りたい!という人はぜひ、この書籍の第2章「モノで支援しよう!」は最低限読んでから、行動を起こしていただければと思います。

(2016.4.19追記)
 旭川医科大学病院緩和ケア診療部の阿部泰之先生が東日本大震災の折に書かれた「災害時の『こころのケア』」という文章があります。東日本大震災の時にも「心のケア」の必要性が叫ばれ、いろいろな個人、団体が被災地にやって来ましたが、中には有効どころか有害と思われるものもあったという話を聞いています。ひょっとしたら「釈迦に説法」かもしれませんが、熊本で「心のケア」に当たる方々にはぜひご一読いただきたいです。

(2016.4.21追記)
 昨年、仙台で国連防災世界会議が開催されましたが、そこで採択された今後15年間の防災に関する国際的なガイドラインが「仙台防災枠組2015-2030」です。防災・減災日本CSOネットワーク(JCC-DRR)は、国連加盟国向けのこの文書を市民向けに解説した冊子「市民のための仙台防災枠組2015-2030」を作成し、配布しています。冊子の中では仙台防災枠組に盛り込まれた項目について、市民の立場からどのような取り組みが必要かについてもまとめられていて、身の回りの防災について考える上で役立ちます。防災に関する具体的なアクションについては、東京都がまとめ、全戸に配布した「東京防災」が大いに参考になります。

 災害発生時に対応に当たる責任ある立場の自治体職員の方々には、「東日本大震災の実体験に基づく災害初動期指揮心得」をぜひ読んでおいてほしいです。東日本大震災の折に東北地方整備局が行った災害対応の経験知を他の地方整備局向けにまとめたいわば内部資料ですが、Kindle版を無償公開してくれています。実際の体験に基づく心得はとても説得力があります。また、あまりマスメディアでは取り上げられなかった方々の奮闘ぶりを知る上でもとても有益です。


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