2016年08月24日 

東北の逸品その26〜南部せんべいじゃない岩手の2つのせんべい

 岩手を代表するせんべいと言えば、誰が何と言っても南部せんべいである。その起源は南北朝時代に遡るという、小麦粉を水で練って円形の型に入れて堅く焼いて作るせんべいである。小麦粉以外に何も混ぜないプレーンの「白せんべい」もあるが、どちらかと言うと、ゴマやピーナッツが練り込まれたものがメジャーである。卵とマーガリン、砂糖を加えたクッキー生地の南部せんべいもあって人気である。最近ではせんべい店間の競争によって、さまざまな味のバリエーションが生まれていて、いったい全部で何種類あるのかさっぱり分からないくらい、数多くの味の南部せんべいがある。

 この南部せんべいが岩手を代表する土産であることは間違いないが、岩手には他にもおススメのせんべいがある。その中でもとりわけおススメの2つのせんべいを紹介したい。

000000002347 一つは「亀の子せんべい」である。岩手の内陸南部、一関市から奥州市江刺区にかけて売られている、その名の通り亀の子の形をしたせんべいである。黒胡麻をペーストにして作った胡麻飴を小麦粉で作った生地にかけた、甘さの中にごまの風味が強く感じられる。小麦粉の生地はカリッとしていて、上にかかっている胡麻ペーストはしっとりとしていて、その2つの食感がまたいい感じである。

 一関市にある「亀の子せんべい本舗 大浪」が元祖とされていて、明治の中頃に青森のせんべい店で修業をしていた大浪とよのが初めて作ったということである。「亀の子せんべい本舗 大浪」の亀の子せんべいは、一ノ関駅内の土産物店など、いろいろなところに置いてあって手に入れやすい。味も元祖だけあって、安定の旨さである。直営店に行くと、金ごまを使った「こがねせんべい」もあり、これもおススメである。

 加えて、奥州市江刺区にある「八重吉煎餅店」の亀の子せんべいがまた絶品である。生地を炭火でじっくり焼き上げ、熱いうちにつまんで、亀の甲羅のような形にして固まるの待ち、砂糖で味付けした黒ごまをたっぷりと付け、さらに炭火の上で約半日乾かす、という完成までにおよそ一日半かかる逸品である。すべて手焼きで、作れる量が限られるため、売り切れのことも多いが、見つけたら即買いである。

img58127382 そしてもう一つ、こちらは岩手の三陸沿岸宮古市にある、いかの形をした「いかせんべい」もおススメである。形がいかであるだけでなく、原材料にもいかが使われていて、せんべい生地のほんのりした甘さの中にいかの旨みが感じられて、これまた美味しいせんべいである。

 こちらの元祖は創業明治14年という「すがた」である。ここの「元祖いかせんべい」が、このせんべいのスタンダードと言える味である。スルメ煮汁とスルメ粉末を使ったせんべいはいかの風味が強く感じられる。硬めの歯ごたえと、本物のスルメ同様噛めば噛むほど味わいが増すような感じである。創業以来の手焼きで作られている。

 宮古市内では、「すがた」以外にも、お母さんと息子さん二人が手焼きしている「はかたや」、「中村屋」など複数の店でいかせんべいを作っている。レシピが店によって違うので、食べ比べてみるのが楽しい。より好みの味のいかせんべいが見つかるかもしれない。宮古市内だけでなく、山田町や田野畑村でもいかせんべいを作っているせんべい店がある。

 「亀の子せんべい」も「いかせんべい」も、どちらのせんべいも元祖ががっちり伝統を守っているが、それだけでなく元祖以外の店がしっかり個性を発揮してすそ野を広げているところがいいと思う。機会があったらぜひ味わってみてほしい逸品である。


anagma5 at 22:45│Comments(0)TrackBack(0)clip!東北の逸品 

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