2016年09月30日 

私的東北論その86〜「東北端っこツアー」のススメ(「東北復興」紙への寄稿原稿)

 「東北復興」紙の第50号とその次の第51号では、前回第49号で考察した東北の観光の現状等を踏まえて、東北の観光資源の「掘り起こし」を図った。第50号では、東北の東西南北端を巡るツアーを提唱してみた。

 以下がその全文である。


「東北端っこツアー」のススメ

 東北は南北約530km、東西は最大約180kmに及ぶ広大な地域である。南北に長いことから、東北の南端に近い福島県いわき市の小名浜では桜の開花が平年値で4月6日なのに対し、北端の手前にある青森県むつ市では平年値が4月29日と、桜前線が東北を縦断するのには1か月近い期間を要する。

 日本の東西南北端の場所は有名で、最東端は南鳥島、最西端は与那国島、最南端は沖ノ鳥島、最北端は択捉島のカモイワッカ岬である。これに対して、各地方の東西南北端はと聞かれてすぐに答えられる人はほとんどいないに違いない。こと東北に関して言えば、最北端の下北半島・大間崎は有名である。大間崎は東北の最北端というだけでなく、本州の最北端でもあることからある程度知名度があるのかもしれない。しかし、東北の最東端である岩手県宮古市の魹ヶ埼(とどがさき)も本州の最東端であるにも関わらず、知名度は今ひとつである。最南端や最西端に至っては恐らくほとんどの人が知らないに違いない。そこで今回は東北の「端っこ」を紹介してみたい。


最北端・大間崎(おおまさき)
kaikyo 大間崎は、青森県の北東、マサカリのような形をした下北半島の最北端にある。大間崎を抱える大間町は、マグロの一本釣りで有名な漁業の町である。大間のマグロは東京・築地のセリで高値がつくことでもよく知られる。

 地図をよく見ると分かることだが、北海道の最南端よりも大間崎の方が北に位置している。もちろん、れっきとした東北の一部なのだが、下北半島で見られる景色は東北の他の地域とは明らかに異なる。北海道にも通じるような雄大さとおおらかさを兼ね備えたような景色である。なにせ県庁所在地の青森市から下北半島の中心都市むつ市までは約100kmもある。同じ青森県内でも、津軽や三八上北とも違う、下北ならではの風景がここにはある。

 むつ市郊外には恐らく下北半島で最も有名と思われる、日本三大霊山、日本三大地獄の一つ、恐山(おそれざん)がある。火山ガスが噴き出す荒涼とした風景がまさに地獄を彷彿とさせ、おどろおどろしいイメージがつきまとう恐山だが、隣接する宇曽利湖(うそりこ)は波静かで極楽浄土に比せられる。つまりここは地獄だけでなく、極楽も体験できるスポットなのである。ちなみに、恐山の「恐」と宇曽利湖の「宇曽利」は元々同じ読み。ここは地獄と極楽が同居する稀有な地なのである。

 下北半島には薬研(やげん)温泉や下風呂(しもふろ)温泉など、名湯がある。が、せっかく東北最北端の地に来たのであれば、ぜひ東北最北端、すなわち本州最北端の温泉に入ってみてほしい。それが大間温泉である。おおま温泉海峡保養センターが所有する温泉で、宿泊もできる。

 マグロで有名と書いたが、実は大間町には「陸(おか)マグロ」と称されるものがある。それは大間町で肥育されている大間牛のことで、これがまた大間の本マグロにも負けない最高等級の牛肉なのである。ちなみに、おおま温泉海峡保養センターでは大間マグロとこの陸マグロの食べ比べコースもある。

 大間町には以前紹介したことがあるが、本州最北端の地ビールがある。梅香山崇徳寺(ばいこうざんしゅうとくじ)という江戸時代から続くお寺がつくる、全国でも恐らく唯一の地ビール「卍麦雫(まんじむぎしずく)」である。境内にはこれまた全国でも唯一と思われるこの地ビールの自動販売機もある。これもぜひ味わってみてほしい。

 本州最北端の大間崎、対岸の北海道が間近に見られることで有名だが、南側以外ぐるっと海に囲まれたロケーションであることから、実は海から昇る朝日と海に沈む夕日が両方見られる。このようなスポットというのは日本中探してもあまりないと思うのだが、そのこと自体あまり知られていないようである。ここはもっとアピールすべきポイントである。


最東端・魹ヶ埼(とどがさき)
27 最東端の魹ヶ埼は、岩手県の三陸沿岸、宮古市の重茂半島にある岬である。先にも紹介したように、本州最東端の地でもあるのだが、知名度は最北端の大間崎に遠く及ばない。その理由は何かと考えてみると、|鰐召読めない、辿り着くのが大変、ということがあるように思われる。,砲弔い童世┐弌◆屬箸鼻廚箸いΥ岨自体がまず読めない。パソコンでも環境依存文字で、正しく表示されるかどうかはパソコン次第である。△砲弔い討蓮宮古市の中心部から入口まで車で約50分もかかるだけでなく、駐車場に車を止めてから「山道」を約1時間ほど歩かなくては辿り着けないということがある。なぜ海のそばなのに山なのかと言うと、三陸海岸は昔習ったように「リアス海岸」であるからで、海のすぐそばまで山なのである。

 往復2時間と考えると訪れるのに二の足を踏んでしまいそうになるが、ここは行って損のないスポットである。眼前には太平洋が遮るものなく茫洋と広がり、三陸沿岸屈指のビューポイントである。

 知る人ぞ知る、映画「喜びも悲しみも幾年月」の舞台となった魹ヶ埼灯台もある。映画の当時は灯台守が海の安全を守っていたが、今は無人である。市街地から遠く離れた「陸の孤島」であるこの灯台で灯台守の夫婦がどのように生活していたのかと考えると、先人たちの苦労が偲ばれる。

 最東端ということで、魹ヶ埼は東北で最も早く朝日が昇るスポットである。ちなみに、緯度の関係で本州全体で最も早く朝日が昇るのは千葉県の犬吠埼である。


最南端・矢祭町(やまつりまち)
1454037976_8a 東北の最南端は福島県いわき市であると思っている人も多いに違いない。冒頭で紹介したように、いわき市は東北で最も早く桜が開花する地である。しかし、緯度上の最南端はいわき市ではない。もっと南に存在するのが矢祭町(やまつりまち)である。この矢祭町の国道349号線沿いにある明神峠の西側の山麓が東北最南端の地である。

 矢祭町は人口7,000人弱の小さな町だが、いわゆる「平成の大合併」の折に小規模自治体が切り捨てられることに反発して、「合併しない宣言」を採択して話題となった。宣言を出しただけでなく、小規模自治体が財政的に自立できるよう、行財政改革を徹底して行って成果を上げており、全国の自治体から視察がひっきりなしに行われている町としても有名である。

 観光スポットとしては、町の中心にある矢祭山とそのそばを流れる久慈川の周辺が中心となる。矢祭山は町全体が見下ろせるビュースポットであると同時に、山つつじの名所としても知られている。久慈川流域は「東北の耶馬渓」と称される四季折々の景観で知られる。個人的なおススメは「阿武隈の秘境」と呼ばれる滝川渓谷で、全長3kmの散策路内に四十八滝がある。渓谷を上り切った先にある「滝川の里」で食べられるそば粉十割の手打ちそばも美味しい。

 矢祭町の特産品はゆずで、香り高いことで知られている。町内では、ゆずシャーベットなど、このゆずを使った加工品がある。


最西端・御積島(おしゃくじま)
osyakujima 東北の最西端について知っている人はほとんどいないに違いない。日本海側に突き出た半島がそうなのではないかと考える人もいるかもしれないが、東北地方は北東方向から南西方向に伸びている。したがって、恐らく東北の日本海側で最も有名な半島と思われる、ナマハゲで有名な男鹿半島は東北の最西端ではない。岩木山が海に浮かんだように見える、津軽半島の小泊半島も最西端ではない。

 離島を含めるかどうかでも違ってくるのだが、離島まで含めるのであれば、山形県酒田市にある御積島が東北最西端で、離島を含めないのであれば、山形県鶴岡市の鼠ヶ関が最西端である。御積島を知っている人は東北の人であってもなかなかいないと思われるが、酒田市に属する離島で、トビウオで知られる飛島(とびしま)の西約2kmに位置する無人島である。スキューバダイビングのスポットとして知られている。この御積島の西に位置する岩礁、カラカサノイボの経度は東経139度31分13秒である。

 これに対して、離島を含めない場合は鶴岡市の南端にあって、出羽と越後の境であった鼠ヶ関が最西端となる。鼠ヶ関の弁天島のすぐ西にある岩礁の経度は東経139度32分18秒で、ほんのわずかな差ではあるが、御積島の方が西である。

 御積島のある飛島には、酒田港から定期船「とびしま」で75分である。ちょっと書いたようにトビウオが多く取れる。トビウオの焼干しやつゆは特産品として有名である。海藻もいろいろ取れ、特にイギスやアラメ、ホンダワラなどは他地域のものに比べて美味しいと評判である。飛島からは御積島も回る遊覧船が出ている。

 一方の鼠ヶ関は、江戸時代には念珠ヶ関とも表記され、福島県白河市にある白河関といわき市にある勿来関と共に、奥羽三関の一つとして東北への玄関口として知られる。ちなみに、現在の鼠ヶ関の史跡は「近世念珠関址」と呼ばれ、移転された事情は定かではないものの、古代の鼠ヶ関があった場所から北方に約1km移動している。これに対して元々鼠ヶ関があった場所は「古代鼠ヶ関址」として、石標が建てられている。その西端である弁天島へは現在は遊歩道が整備され、地続きである。源義経が兄頼朝に追われて平泉に逃れた際に上陸した地として伝わる(新潟の村上から当地までは船に乗ったとの伝承がある)。飛島も鼠ヶ関も、日本海沿岸ということで、言うまでもないが海に沈む夕日の絶景スポットである。


ぜひ「東北端っこツアー」を
 以上紹介した東北の東西南北端を巡るツアーなどは今のところないが、個人的にはやってみたら面白いのではないかと思う。それぞれ全く異なる雰囲気があり、東北の多様さを体感できるツアーになるに違いない。

 本州の東西南北端については、「本州四端踏破ラリー」がある。これまでに紹介した、本州最北端である大間町、最東端である宮古市、それに最西端である山口県下関市、最南端である和歌山県串本町で構成する本州四端協議会が、地域活性化のために協力して実施している取り組みで、すべて踏破した人には、本州四端踏破証明書と本州四端オリジナル記念品が贈られる。平成16年に始まって以来、これまでに1,792人が踏破者としてカウントされている。手始めに、同様の取り組みを東北でもやってみてはどうだろうか。


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