2017年01月30日 

私的東北論その89〜再発見!東北の発酵食品(「東北復興」紙への寄稿原稿)

 もはや昨年のことになってしまったが、昨年10月16日に発行された「東北復興」第53号では、東北の発酵食品について取り上げた。こうしてみると、東北の発酵文化が実に豊かであることが分かる。以下がその全文である。


再発見!東北の発酵食品

その良さが見直される発酵食品
 発酵食品が見直されている。納豆、味噌、ヨーグルトなどの健康に対する効果に注目が集まり、改めて発酵食品の良さに注目が集まっているのである。人類と発酵の歴史は古い。現在確認されている最も古い発酵食品は今からおよそ8000年前まで遡るという。日本でも縄文時代には酒が造られていたということなので、かなり長い付き合いをしているわけである。

 このように発酵食品には長い歴史があり、それだけ人々の生活と密接なつながりを持っていて、いわば身の回りに当たり前にあるものであっただけに、その良さが顧みられることはあまりなかったが、最近食に関する研究が進むにつれて発酵食品の効能が少しずつ明らかになってきており、折からの健康ブームにも乗って、発酵食品をつくる菌を積極的に取り入れようということで、「菌活」なる言葉まで生まれている。

 我が国における発酵の第一人者で東京農業大学名誉教授の小泉武夫氏によれば、発酵食品の四大特徴は、(歛犬利くこと、栄養価が高まること、F汎辰量と匂いがつくこと、さ羔砲亮然食品だということ、とのことである。こうした特徴を日本人は古来、上手に活用してきたわけである。

東北の発酵食品
 ここ東北はとりわけ発酵食品が多い。中でも漬物は他地域を圧倒する豊富な種類がある。それは冬に雪に閉ざされる地域が多く、作物が取れないために保存食を造らざるを得なかったという地域事情がある。食物は発酵させることによって長期保存が可能になる。

 浅漬けのように発酵させない漬物もあるが、漬ける食材に元からついている乳酸菌を使って乳酸発酵させる漬物や、麹を添加して発酵させる漬物、味噌や醤油や酢など発酵させて造ったものを使う漬物など、漬物と発酵は切っても切れない関係がある。

 「塩麹」が話題になったことがあったが、これなどは会津の三五八漬けがその原型であるとされる。三五八漬けは、塩と米麹と米を3対5対8の割合で混ぜた漬け床でつくることからその名前がある。

 日々の食生活に馴染み深い味噌は、同じ東北でも地域によって中身が異なる。例えば、津軽味噌は米麹が少なく塩分の多い長期熟成の赤味噌、逆に秋田味噌は米麹歩合が高く色合いの濃い長期熟成味噌、仙台味噌は大豆と米の旨みが活きたやはり長期熟成の赤味噌と、それぞれに特徴があり、味も異なる。

 海産物の発酵食品が多いのも特徴で、塩辛と言えばイカの塩辛が東北でも盛んに造られるが、それ以外にもニシンなどで造られる魚の塩辛である切り込み、ハタハタと米麹を一緒に発酵させた熟鮓の一種である秋田のハタハタ寿司、やはり秋田でハタハタを塩で発酵させて長期熟成させた魚醤であるしょっつる、サケとイクラを米麹で漬ける福島の中通りの紅葉漬、身欠きニシンと山椒の葉を交互に重ねて、醤油、砂糖、酢などでつくったタレに漬けた福島の会津のニシンの山椒漬けなどがある。

 納豆も東北には欠かせない食品である。これについても、東北各地に地元の納豆があるが、それだけでなく、納豆菌で大豆を発酵させた後、さらに麹でもう一度発酵させた納豆が山形と福島にはある。これもまた通常の納豆に輪をかけて美味しい納豆である。

 ユニークなものとしては「しょうゆの実」がある。これは醤油の製造工程で出る搾りかすに麹と塩を加えて造る山形の発酵食品である。

 そうそう、もちろん酒類も発酵食品である。日本酒、ワイン、ビール、シードルなど、多種多様な酒類が東北では楽しめる。米、果物、ホップなど、材料となる農産物が豊富に採れる恩恵である。ヨーグルトは東北の伝統的な発酵食品に比べるとまだ歴史は浅いが、放牧して育てた牛の牛乳から造ったり、ジャージー種の牛乳から造ったり、低温で殺菌した牛乳で造ったり、複数の乳酸菌で発酵させたり、温泉熱を利用して発酵させたり、東北の各地域で様々に工夫を凝らした美味しいヨーグルトがある。

地域おこしと発酵食品
発酵食品に特化した道の駅発酵の里こうざきの「発酵市場」 千葉県の神崎町は、江戸時代から発酵食品で栄えてきた歴史があるようである。そうした歴史を踏まえて造られた「道の駅発酵の里こうざき」には、「発酵市場」があり、発酵食品や発酵に関する情報を多く揃え、「発酵文化」を広く内外に発信すると共に、さまざまな発酵食品を販売しているが、週末などは大変な人の賑わいだという。

 こうした神崎町の成功事例、発酵食品の歴史と内容では決して引けを取らないこの地域でも、大いに参考にすべきである。

 もちろん、東北でも、この「道の駅発酵の里こうざき」とまではいかなくても、発酵食品を売りにした取り組みが始まっている。

 宮城県大崎市では「みやぎ大崎ふつふつ共和国」を大々的にPRしている。大崎地方には多くの酒蔵、味噌蔵、醤油蔵が点在している。東北屈指の米どころであり、大豆の一大産地としても知られている。こうした豊富な食材を冬に備えて保存性を高めるためにこの地域で古くから根付いているのが発酵食文化であった。ホームページでは、大崎地域の発酵食品、それらが食べられる飲食店などと一緒に情報提供している。

 福島県いわき市では「いわき、発酵の旅」を打ち出している。いわき市内で発酵に関係している酒蔵、削節店、味噌醤油醸造元などを巡るツアーも提案している。自宅でできそうな発酵食品のレシピも公開している。

 また、福島市では「ふくしま発酵文化研究会」が活動している。高齢化率と要介護率が上昇を続ける中、「発酵による健康・長寿のまちふくしまを目指す」ことを標榜し、 食育セミナーや発酵食品づくり、先進地視察交流、全国ネットワークとの交流などを行っている。

 東北で発酵文化が最も盛んな地域はどこかと聞かれれば、私は秋田県と答えたい。先に紹介したハタハタ寿司やしょっつるなど、この地域ならではの発酵食品がたくさんある。その秋田県では「秋田・茨城発酵食イベント」というイベントが開催されている。今年は納豆をテーマに、秋田県が誇る自慢の発酵食品を、もっともっと多くの人に知ってもらい、食べてもらいたい!」との思いを実現するために、納豆では秋田と並んで有名な茨城にも協力を仰いで開催している。

 秋田県南の横手市には「よこて発酵文化研究所」がある。ここは横手地域に根ざした「発酵」をキーワードに、市民、民間企業、行政が連携したまちづくりを行っている。特筆すべきはその開始時期で、平成16年3月に発足したというから、既に12年以上の歴史を持っている。

 そうかと思うと、秋田には「秋田今野商店」という店がある。酒造用の麹を始め、味噌醤油用の麹、ビール酵母、パン酵母、乳酸菌など、いわゆる種菌で圧倒的なシェアを占めている。秋田と青森に跨る世界自然遺産の白神山地からは、秋田県の総合食品研究センターがパン作りに適した「白神こだま酵母」を発見した。また、桜の名所、二ツ井では桜の木から採取した酵母を用いて地ビールを醸造している。

 このように、「発酵」をキーワードにした東北各地での取り組みは既に始まっている。願わくば、こうしたそれぞれの取り組みが、単独ではなく、互いに横のつながりを密にして情報交換をしながら発酵に関する情報発信を充実させていってもらいたい。そうして、「発酵と言えば東北」というブランドイメージをつくれれば、各々の取り組みがさらに活きるに違いない。


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