2017年07月31日 

私的東北論その96〜2回目の「仙台防災未来フォーラム」(「東北復興」紙への寄稿原稿)

 4月16日に発行された「東北復興」第59号では、昨年初開催された「仙台防災未来フォーラム」について取り上げた。この取り組み、ぜひ今後も毎年続けてほしいものである。以下がその全文である。


2回目の「仙台防災未来フォーラム」

「仙台防災未来フォーラム」とは
 3月12日、「仙台防災未来フォーラム2017」が開催された。昨年3月の第46号で取り上げたが、一昨年仙台で開催された国連防災世界会議をきっかけに昨年初開催された、地域における防災の取り組みを共有し、これからの防災について考えるためのフォーラムである。

 震災の発生から6年が経過した。この間の震災の経験や教訓を、地域を超えて、世代を超えて、どのように伝えていくかについては、多様な主体、媒体が手探りで様々な取り組みを続けている。そのような中で、この「仙台防災未来フォーラム」は、仙台市が主催し、震災経験の伝承や、地域防災の次代の担い手づくり、人々の多様性と防災といったさまざまなテーマについて、「伝える」ことの大切さや今後の課題について理解を深め、経験や教訓を世界へ、そして将来へどのように受け継いでいけばよいのかを考えるという趣旨で開催されている。

 一昨年の3月に開催された「第3回国連防災世界会議」には、世界185か国から6,500人以上が参加し、成果文書として「仙台防災枠組2015-2030」が採択された。「仙台」の名を冠するこの防災枠組は、防災に関わる新たな国際的な取り組みの指針で、期待される成果と目標、指導原則、優先行動、関係者の役割や国際協力等が規定されている。枠組の策定に当たっては、東日本大震災からの復興を目指すこれまでの取り組みを踏まえて、多様な主体の関与や防災・減災への投資、「より良い復興(Build Back Better)」の重要性などが日本から提案され、その考え方がこの枠組の中には取り入れられている。

 「仙台防災未来フォーラム」は、この国連防災世界会議の仙台開催から1周年となったのを機に昨年3月に開催され、今年が2回目である。仙台市では現在、子供から高齢者まで、性別や国籍の違い、障害の有無などによらず、地域のすべての関係者が自助・共助を担うという地域づくりを進められている。フォーラムは、そうした取り組みを踏まえ、防災の担い手たちが自分たちの取り組みを共有・継承することで、新たなネットワークを生み出し、未来の防災に貢献することが目的とされた。


「インクルーシブ防災」とは

 今回のフォーラムのテーマは「経験を伝える・共有する・継承する」で、6つのテーマセッション、ミニプレゼンテーション、連携シンポジウム、各種関連イベント等が開催された。6つのテーマセッションの一つは「インクルーシブ防災を目指した地域づくり」である。「インクルーシブ防災」とは、障害者や高齢者などを含む、あらゆる人の命を支える防災を目指していこうという考え方である。東日本大震災を機に防災・減災への関心は高まり、日頃からの備えと対策が必須だと言われているが、災害発生時の対応はまさに平時の取り組みの延長であるとされる。そしてまた、災害が発生した際の安心・安全の確保には、普段からの地域住民の相互理解とネットワークの構築が大切である。

 このセッションでは、そうしたことを踏まえて、「仙台防災枠組」に記載されたステークホルダーの役割を問いつつ、インクルーシブ防災をめざした地域づくりについて議論が行われた。その中で、立木茂雄氏(同志社大学社会学部)は、「災害時の当事者力イコール防災リテラシー」で、防災リテラシーは「理解×備え×とっさの行動」と指摘していた。そして、平時のケアプランから個別に災害時ケアプランを作成する『別府モデル』を構築しようとしている取り組みについて紹介した。山崎栄一氏(関西大学社会安全学部)は、法学の専門家の立場から、「インクルージョンとは、排除・除外のない状態」で、そこには「意図的な差別的取り扱い」以外に、「無配慮・無関心によるもの」もあるとした上で、各種の支援制度には、「支援」、「配慮」に「参画」を加えた三要素の連動が必要と指摘した。阿部一彦氏(東北福祉大学総合福祉学部)は、「障害による暮らしにくさは個人の問題でなく、多くは社会環境によって作り出される」と訴えた。

 コーディネーターの三浦剛氏(東北福祉大学総合福祉学部)は、「地域に住む住民を理解し、日頃からの関わりを通してどのような支援が必要か把握していくことが『我がこと・まるごと地域づくり』の推進につながる」とまとめたが、フロアから発言した熊谷信幹氏(柏木西部自治会防災担当)は、「『インクルーシブ』と言うが、そもそも障害者基準で防災システムを作るべき」と主張した。「誰でも年老いたら障害者」であり、「障害者は多数派」なのだから、「『障害者も交ぜてくれ』という話は筋違い」だという論旨で、フロアから拍手が起こっていた。

 他には「"地域のきずな"が生きる防災まちづくり〜仙台市の事例から学ぶ」というテーマセッションもあった。「持続可能な防災まちづくり」を進めていくために、日頃からの“顔の見える”人と人とのネットワークや地域コミュニティづくりがまず大切ということから、「日常的にまちづくり活動が活発で、それが防災の優れた取り組みにもつながっている」という事例を共有し、コミュニティーにおける地域防災の今後の活動や課題解決のヒントを考えるという趣旨のセッションであった。登壇した今野均氏(片平地区連合町内会)の「防災活動はまちづくりの一つ」という言葉に如実にそのことが表れていた。

 また、菅井茂氏(南材地区町内会連合会)は、「自分達のまちは自分達で守る。自分の命は自分で守る。そのために地域で顔の分かる関係の構築が大切」と訴えた。町内会として他の被災地に「押しかけ支援」としてできる範囲の支援・協力を行ってきたを続けてきた福住町町内会の菅原康雄氏は、その秘訣として「できることから始める」を挙げた。その上で、「自助・共助に加えて、自制(見返りを求めない)・他助が大事」として、「自助・共助で助かった命で他を助ける」ことの重要性も強調した。

 こうした発表について、佐藤健氏(東北大学災害科学国際研究所)は、「日常的なまちづくり、ひとづくり、きずなづくりの取り組みが防災力を高め、活動の持続可能性と次世代の人材育成という波及効果ももたらす」として、そこでは「ソーシャルサポート」と「コミュニティ・ソリューション」の2つがキーワードであるとした。


「多様な主体」による防災・減災
 フォーラムのまとめとして、「クロージング」が行われた。ここでは、それぞれのテーマセッションでの議論結果が報告されると共に、それを基に震災の経験や教訓などを伝えることについて、その大切さや課題について考え、多様な主体(マルチステークホルダー)による防災・減災の取り組みの今後の方向性などについて参加者で共有した。

 「ともに考える防災・減災の未来〜『私たちの仙台防災枠組講座』、『結プロジェクト』合同報告会〜」の保田真理氏(東北大学災害科学国際研究所)は、報告会の模様を紹介しつつ、「社会の構成員全てが共に考えることがレジリエントな社会をつくる」と述べた。「もしものそなえ SENDAIと世界のつながり〜伝えよう、共有しよう、継承しよう〜」の秋山慎太郎氏(JICA地球環境部)は、JICAの取り組みを伝えつつ、「伝えていく中で、伝えられる側、伝える側双方の学びが重要。それがもしもの備えにつながる」と指摘した。

 「震災から6年・教訓伝承と防災啓発の未来〜連携と発信の拠点づくりに向けて」と「次世代が語る/次世代と語る〜311震災伝承と防災〜」の武田真一氏(河北新報社防災・教育室)は、「震災だけでなく、地域の過去や未来、希望も併せて伝えることでさらに(震災のことを)伝えられる」と強調した。ミニプレゼン・展示ブースの小美野剛氏(JCC-DRR事務局)は、「教訓を未来の活動につなげる」ことの重要性に言及しつつ、「全ての活動は共感に基づく」こと、そしてこれからは「単なる支援から、新たな価値の創造への移行が必要」であることも併せて主張した。

 コメンテーターの松岡由季氏(国連国際防災戦略事務局)は、一連の発表を踏まえて、「『レジリエント』と『インクルーシブ』が仙台防災枠組のキーワード」であり、「社会全体が『レジリエント』であるためには『インクルーシブ』である必要がある」とまとめた。また、「伝承は人の命を救う力がある」とも述べた。もう一人の立花貴氏(公益社団法人MORIUMIUS)は、「防災は日常の延長線上」にあるとして、「地域の取り組みが有事にも機能」するとした。また、「単なる事実でなく、そこに込められた思いを伝える」ことが震災の伝承においては重要であるとも指摘した。

 会場では、「救州ラーメン」も販売された。東北の被災地での提供食数が10,000食超というプロジェクトで、博多ラーメンの老舗「秀ちゃんラーメン」によるラーメンの炊き出しを通じた復興支援である。また、仙台市内では2月から3月に掛けて、今回のフォーラムに関連して、様々な防災・減災・復興に関するイベントが開催された。まさに「多様な主体」による防災・減災の取り組みである。


六県連携でより幅広い発信を
 仙台市では、11月に「世界防災フォーラム/ IDRC 2017 in SENDAI」の開催が決定した。スイスのダボス2年に1回開催される防災の国際会議「国際災害・リスク会議」(IDRC)で発表されたもので、東北大学、仙台市が中心となって内外の防災関係者が集い、震災の教訓・知見の発信や議論を行いながら連携を強化する場として開催するもので、今年だけでなく、以降も隔年での開催が予定されているという。

 仙台防災未来フォーラムに加え、世界防災フォーラムも開催されることとなり、東日本大震災への対応、そこからの復興に関する情報発信を継続的に行っていく場が着々とつくられていることは実に喜ばしいことである。願わくは、これを仙台市だけの取り組みとするのではなく、宮城県内の他の市町村や東北の他の五県とも連携して、より幅広い情報を発信していってほしい。

 岩手県内の沿岸市町村の復興への動きは仙台市とはまた異なるし、福島県内の沿岸市町村は言うまでもなく原発事故による影響が加わってさらに複雑な課題への対応を余儀なくされている。あまり知られていないが、青森でも津波によって24平方キロメートルが浸水し、死者も出ている。直接の被害が軽微であった秋田・山形両県では、被災地のバックアップという点で重要な役割を果たしており、そこでの知見も大いに伝えられるべきである。せっかくの震災から得た知見を地域や世代を超えて発信していく場である。より多くの知見をより多様な視点から伝えるということに、今後はより力を入れていくべきであると考える。


anagma5 at 23:52│Comments(0)clip!私的東北論 | 震災関連

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔