東北の逸品  

2017年01月30日

私的東北論その89〜再発見!東北の発酵食品(「東北復興」紙への寄稿原稿)

 もはや昨年のことになってしまったが、昨年10月16日に発行された「東北復興」第53号では、東北の発酵食品について取り上げた。こうしてみると、東北の発酵文化が実に豊かであることが分かる。以下がその全文である。


再発見!東北の発酵食品

その良さが見直される発酵食品
 発酵食品が見直されている。納豆、味噌、ヨーグルトなどの健康に対する効果に注目が集まり、改めて発酵食品の良さに注目が集まっているのである。人類と発酵の歴史は古い。現在確認されている最も古い発酵食品は今からおよそ8000年前まで遡るという。日本でも縄文時代には酒が造られていたということなので、かなり長い付き合いをしているわけである。

 このように発酵食品には長い歴史があり、それだけ人々の生活と密接なつながりを持っていて、いわば身の回りに当たり前にあるものであっただけに、その良さが顧みられることはあまりなかったが、最近食に関する研究が進むにつれて発酵食品の効能が少しずつ明らかになってきており、折からの健康ブームにも乗って、発酵食品をつくる菌を積極的に取り入れようということで、「菌活」なる言葉まで生まれている。

 我が国における発酵の第一人者で東京農業大学名誉教授の小泉武夫氏によれば、発酵食品の四大特徴は、(歛犬利くこと、栄養価が高まること、F汎辰量と匂いがつくこと、さ羔砲亮然食品だということ、とのことである。こうした特徴を日本人は古来、上手に活用してきたわけである。

東北の発酵食品
 ここ東北はとりわけ発酵食品が多い。中でも漬物は他地域を圧倒する豊富な種類がある。それは冬に雪に閉ざされる地域が多く、作物が取れないために保存食を造らざるを得なかったという地域事情がある。食物は発酵させることによって長期保存が可能になる。

 浅漬けのように発酵させない漬物もあるが、漬ける食材に元からついている乳酸菌を使って乳酸発酵させる漬物や、麹を添加して発酵させる漬物、味噌や醤油や酢など発酵させて造ったものを使う漬物など、漬物と発酵は切っても切れない関係がある。

 「塩麹」が話題になったことがあったが、これなどは会津の三五八漬けがその原型であるとされる。三五八漬けは、塩と米麹と米を3対5対8の割合で混ぜた漬け床でつくることからその名前がある。

 日々の食生活に馴染み深い味噌は、同じ東北でも地域によって中身が異なる。例えば、津軽味噌は米麹が少なく塩分の多い長期熟成の赤味噌、逆に秋田味噌は米麹歩合が高く色合いの濃い長期熟成味噌、仙台味噌は大豆と米の旨みが活きたやはり長期熟成の赤味噌と、それぞれに特徴があり、味も異なる。

 海産物の発酵食品が多いのも特徴で、塩辛と言えばイカの塩辛が東北でも盛んに造られるが、それ以外にもニシンなどで造られる魚の塩辛である切り込み、ハタハタと米麹を一緒に発酵させた熟鮓の一種である秋田のハタハタ寿司、やはり秋田でハタハタを塩で発酵させて長期熟成させた魚醤であるしょっつる、サケとイクラを米麹で漬ける福島の中通りの紅葉漬、身欠きニシンと山椒の葉を交互に重ねて、醤油、砂糖、酢などでつくったタレに漬けた福島の会津のニシンの山椒漬けなどがある。

 納豆も東北には欠かせない食品である。これについても、東北各地に地元の納豆があるが、それだけでなく、納豆菌で大豆を発酵させた後、さらに麹でもう一度発酵させた納豆が山形と福島にはある。これもまた通常の納豆に輪をかけて美味しい納豆である。

 ユニークなものとしては「しょうゆの実」がある。これは醤油の製造工程で出る搾りかすに麹と塩を加えて造る山形の発酵食品である。

 そうそう、もちろん酒類も発酵食品である。日本酒、ワイン、ビール、シードルなど、多種多様な酒類が東北では楽しめる。米、果物、ホップなど、材料となる農産物が豊富に採れる恩恵である。ヨーグルトは東北の伝統的な発酵食品に比べるとまだ歴史は浅いが、放牧して育てた牛の牛乳から造ったり、ジャージー種の牛乳から造ったり、低温で殺菌した牛乳で造ったり、複数の乳酸菌で発酵させたり、温泉熱を利用して発酵させたり、東北の各地域で様々に工夫を凝らした美味しいヨーグルトがある。

地域おこしと発酵食品
発酵食品に特化した道の駅発酵の里こうざきの「発酵市場」 千葉県の神崎町は、江戸時代から発酵食品で栄えてきた歴史があるようである。そうした歴史を踏まえて造られた「道の駅発酵の里こうざき」には、「発酵市場」があり、発酵食品や発酵に関する情報を多く揃え、「発酵文化」を広く内外に発信すると共に、さまざまな発酵食品を販売しているが、週末などは大変な人の賑わいだという。

 こうした神崎町の成功事例、発酵食品の歴史と内容では決して引けを取らないこの地域でも、大いに参考にすべきである。

 もちろん、東北でも、この「道の駅発酵の里こうざき」とまではいかなくても、発酵食品を売りにした取り組みが始まっている。

 宮城県大崎市では「みやぎ大崎ふつふつ共和国」を大々的にPRしている。大崎地方には多くの酒蔵、味噌蔵、醤油蔵が点在している。東北屈指の米どころであり、大豆の一大産地としても知られている。こうした豊富な食材を冬に備えて保存性を高めるためにこの地域で古くから根付いているのが発酵食文化であった。ホームページでは、大崎地域の発酵食品、それらが食べられる飲食店などと一緒に情報提供している。

 福島県いわき市では「いわき、発酵の旅」を打ち出している。いわき市内で発酵に関係している酒蔵、削節店、味噌醤油醸造元などを巡るツアーも提案している。自宅でできそうな発酵食品のレシピも公開している。

 また、福島市では「ふくしま発酵文化研究会」が活動している。高齢化率と要介護率が上昇を続ける中、「発酵による健康・長寿のまちふくしまを目指す」ことを標榜し、 食育セミナーや発酵食品づくり、先進地視察交流、全国ネットワークとの交流などを行っている。

 東北で発酵文化が最も盛んな地域はどこかと聞かれれば、私は秋田県と答えたい。先に紹介したハタハタ寿司やしょっつるなど、この地域ならではの発酵食品がたくさんある。その秋田県では「秋田・茨城発酵食イベント」というイベントが開催されている。今年は納豆をテーマに、秋田県が誇る自慢の発酵食品を、もっともっと多くの人に知ってもらい、食べてもらいたい!」との思いを実現するために、納豆では秋田と並んで有名な茨城にも協力を仰いで開催している。

 秋田県南の横手市には「よこて発酵文化研究所」がある。ここは横手地域に根ざした「発酵」をキーワードに、市民、民間企業、行政が連携したまちづくりを行っている。特筆すべきはその開始時期で、平成16年3月に発足したというから、既に12年以上の歴史を持っている。

 そうかと思うと、秋田には「秋田今野商店」という店がある。酒造用の麹を始め、味噌醤油用の麹、ビール酵母、パン酵母、乳酸菌など、いわゆる種菌で圧倒的なシェアを占めている。秋田と青森に跨る世界自然遺産の白神山地からは、秋田県の総合食品研究センターがパン作りに適した「白神こだま酵母」を発見した。また、桜の名所、二ツ井では桜の木から採取した酵母を用いて地ビールを醸造している。

 このように、「発酵」をキーワードにした東北各地での取り組みは既に始まっている。願わくば、こうしたそれぞれの取り組みが、単独ではなく、互いに横のつながりを密にして情報交換をしながら発酵に関する情報発信を充実させていってもらいたい。そうして、「発酵と言えば東北」というブランドイメージをつくれれば、各々の取り組みがさらに活きるに違いない。


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2016年08月24日

東北の逸品その26〜南部せんべいじゃない岩手の2つのせんべい

 岩手を代表するせんべいと言えば、誰が何と言っても南部せんべいである。その起源は南北朝時代に遡るという、小麦粉を水で練って円形の型に入れて堅く焼いて作るせんべいである。小麦粉以外に何も混ぜないプレーンの「白せんべい」もあるが、どちらかと言うと、ゴマやピーナッツが練り込まれたものがメジャーである。卵とマーガリン、砂糖を加えたクッキー生地の南部せんべいもあって人気である。最近ではせんべい店間の競争によって、さまざまな味のバリエーションが生まれていて、いったい全部で何種類あるのかさっぱり分からないくらい、数多くの味の南部せんべいがある。

 この南部せんべいが岩手を代表する土産であることは間違いないが、岩手には他にもおススメのせんべいがある。その中でもとりわけおススメの2つのせんべいを紹介したい。

000000002347 一つは「亀の子せんべい」である。岩手の内陸南部、一関市から奥州市江刺区にかけて売られている、その名の通り亀の子の形をしたせんべいである。黒胡麻をペーストにして作った胡麻飴を小麦粉で作った生地にかけた、甘さの中にごまの風味が強く感じられる。小麦粉の生地はカリッとしていて、上にかかっている胡麻ペーストはしっとりとしていて、その2つの食感がまたいい感じである。

 一関市にある「亀の子せんべい本舗 大浪」が元祖とされていて、明治の中頃に青森のせんべい店で修業をしていた大浪とよのが初めて作ったということである。「亀の子せんべい本舗 大浪」の亀の子せんべいは、一ノ関駅内の土産物店など、いろいろなところに置いてあって手に入れやすい。味も元祖だけあって、安定の旨さである。直営店に行くと、金ごまを使った「こがねせんべい」もあり、これもおススメである。

 加えて、奥州市江刺区にある「八重吉煎餅店」の亀の子せんべいがまた絶品である。生地を炭火でじっくり焼き上げ、熱いうちにつまんで、亀の甲羅のような形にして固まるの待ち、砂糖で味付けした黒ごまをたっぷりと付け、さらに炭火の上で約半日乾かす、という完成までにおよそ一日半かかる逸品である。すべて手焼きで、作れる量が限られるため、売り切れのことも多いが、見つけたら即買いである。

img58127382 そしてもう一つ、こちらは岩手の三陸沿岸宮古市にある、いかの形をした「いかせんべい」もおススメである。形がいかであるだけでなく、原材料にもいかが使われていて、せんべい生地のほんのりした甘さの中にいかの旨みが感じられて、これまた美味しいせんべいである。

 こちらの元祖は創業明治14年という「すがた」である。ここの「元祖いかせんべい」が、このせんべいのスタンダードと言える味である。スルメ煮汁とスルメ粉末を使ったせんべいはいかの風味が強く感じられる。硬めの歯ごたえと、本物のスルメ同様噛めば噛むほど味わいが増すような感じである。創業以来の手焼きで作られている。

 宮古市内では、「すがた」以外にも、お母さんと息子さん二人が手焼きしている「はかたや」、「中村屋」など複数の店でいかせんべいを作っている。レシピが店によって違うので、食べ比べてみるのが楽しい。より好みの味のいかせんべいが見つかるかもしれない。宮古市内だけでなく、山田町や田野畑村でもいかせんべいを作っているせんべい店がある。

 「亀の子せんべい」も「いかせんべい」も、どちらのせんべいも元祖ががっちり伝統を守っているが、それだけでなく元祖以外の店がしっかり個性を発揮してすそ野を広げているところがいいと思う。機会があったらぜひ味わってみてほしい逸品である。


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2012年09月07日

東北の逸品その25〜中松屋の「水まんじゅう」と「栗しぼり」

120906-234243[1] 岩手県の北上山地東部にある岩泉町は、人口約11,000人の本州で最も面積の大きい町である。岩泉町と言えば、何と言っても日本三大鍾乳洞の一つ「龍泉洞(りゅうせんどう)」で知られている。龍泉洞の地底湖の水は、世界でも屈指の透明度を誇り、日本の名水百選にも選ばれている。この水は、「龍泉洞の水」として販売されている他、町中心部の水道水としても利用されている。
 
 さて、この岩泉町に「中松屋」という和菓子処がある。山間の町の和菓子処らしく、栗を使った和菓子の種類が多く、それらがまた美味しいのだが、とりわけ5月から9月に限定発売される「龍泉洞爽菓 水まんじゅう」は同店を代表する和菓子の一つと言ってよいと思う。その名の通り、龍泉洞の水を使って練った葛の中に、栗あんが入っている和菓子で、夏の暑い時期のお茶請けとして最適である。そう安いものではないので、3こも4こも食べるようなお菓子ではないのだろうが、ひとたび食べると3こも4こも食べたくなる、罪なお菓子である(笑)。

 この水まんじゅうは今年ももうすぐ終了であるが、10月からは、中松屋のもう一つの名物である「深山 栗しぼり」が登場する。こちらは栗の実と砂糖のみから練り上げて作った和菓子で、これまたお茶によく合う。以下、水まんじゅうと同文である(笑)。

 仙台から岩泉町にはなかなか足を運べないが、幸い盛岡市内でも、盛岡駅フェザン1階の「おでんせ土産館」にある「岩手菓子倶楽部」や、かわとく壱番館で購入できるので助かっている。今年、水まんじゅうは食べたので、次は栗しぼりである(笑)。


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2011年11月30日

東北の逸品その24〜日本一大きい「西明寺栗」

111110-235100 秋の味覚と言えば、柿と並んで思い浮かぶのが栗である。秋田県仙北市の旧西木村西明寺地区には、大きさが日本一と言われる大きな栗がある。それが「西明寺栗」である。秋田藩の殿様が京都や岐阜などから栗を取り寄せて栽培を奨励させたのが始まりだそうだが、西明寺地区の農家が代々栽培を続け、自然交配による改良を続けた結果、現在のような大きな栗のなる地域となったのだそうである。藩政時代には、この大きな栗を年貢米の代わりに納めていたとも伝えられている。

 西明寺栗では、通常よく市場に出回るMサイズはあまりなく、最低でも大きさが3cm超、重さが30g前後のLサイズで、その上のLLサイズがあり、さらにその上の3Lサイズがある。3Lともなると、大きさが4cmにも達する。毎年行われる「西明寺栗 年度日本一コンクール」では過去、幅5.7cm、高さ4.7cm、重さ66gという3Lサイズも超える超特大の栗が出品されたこともあるそうである。

 と、数値を並べても今ひとつピンと来ないかもしれないが、この西明寺栗、「赤ちゃんのこぶし大の大きさ」とも形容される。どこかにそれを示した写真でもないかと思ったら、実際にネット上にあった(参照サイト)。写真を見ると赤ちゃんのこぶしどころか、それよりはるかに大きいのが分かる。

 このように、とかくその大きさが取り沙汰される西明寺栗だが、もちろん味もよく、決して「大味」ということはない。栗ご飯にもなるようだが、渋皮が薄く、煮崩れしない特徴があるため、渋皮煮で食べられることが多いようである。

111122-080921 というわけで、実際にその渋皮煮を作ってみたところ、確かにおいしかった。鬼皮を剥いたりアクを抜いたりする手間はあるが、手間を掛けた分以上の満足が得られる。渋皮煮が面倒くさいという場合は、その大きさを生かして鬼皮ごと茹でて、半割にしてスプーンで食べるというのもよいそうである。


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2011年11月29日

東北の逸品その23〜この時期だけの味覚「庄内柿」

081215-225827 秋になるとスーパーや果物店などで見かける果物が柿である。栽培方法や保管方法の工夫などで年中手に入るようになった果物も多いが、柿は依然この時期にしか見かけない、この時期だけ味わえる果物のままのようである。

 毎年紹介しようと思っていながら時期を逸して紹介しないでしまうのだが、今年は一念発起して(?)ぜひ紹介したいのが、そうした柿の中の一つである庄内柿である。

 庄内柿は山形県の沿岸、庄内地方の特産で、底が平らで角型の種のない柿である。庄内地方では明治時代の始めから栽培されているが、元は地元の農家の一人が行商人から買った柿の苗木の中に一本だけあった、他の柿とは違う平らで四角で種のない実のなる柿であった。それについて相談を受けた酒井調良という人がその柿を貰い受けて大事に育て、増やしていったのだそうである。

091103-095453 庄内柿は正式には「平核無柿(ひらたねなしがき)」というそうで、甘柿ではなく渋柿だったのだが、酒井調良は焼酎を使った渋抜き方法を独自に開発し、販路を拡大させていったとのことである。お隣り新潟の「おけさ柿」や「八珍」も、この庄内柿と同種の柿である。また、奈良などで取れる「刀根早生柿」は庄内柿の変異種だそうである。

 さて、味の方であるが、この庄内柿、他の柿より糖度が高く、そのため濃厚な味である。果肉は他の柿より柔らかく、食べやすい。私の父など、本来柿は好きでなかったそうだが、この庄内柿だけは食べる。もし、「柿はちょっと…」という人がいたら、ぜひ庄内柿を一度食してみてほしい。

 地元の方に聞いたところ、庄内柿の中でも鶴岡市の旧羽黒町松ヶ岡地区で取れた庄内柿が特においしいとのことだった。ただ、他の果物ではけっこう当たり外れがあったりするが、こと庄内柿に関しては「庄内柿」と書いてさえあれば、これまで外れだった経験がない。庄内のどこで取れた庄内柿でも多分期待を裏切らない味が味わえるのではないかと思う。

 ちなみに、上の写真は2008年に撮ったもの、下の写真は2009年に撮ったものである(笑)。

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2010年08月03日

東北の逸品その22〜日本一小さなレトルト工場の最強のレトルトカレー

135839.jpg  カレー好きの私にとって、レトルトカレーは最も手軽にカレーが食べられる手段である。学生の頃はS&Bの「インド風チキンカレー」の味が大好きでよく食べていた。日本風、欧風のカレーから、インド、タイ風のカレーまで、さまざまなカレーが選べるのもレトルトカレーのいいところである。ただ、最近はスーパーの品ぞろえなどを観察すると、本格的なインド風のカレーがあまりないのが私がちょっと物足りなさを感じるところではある。

 その一方で最近はご当地レトルトカレーが大流行りのようで、一説には全国に300種類以上のご当地レトルトカレーがあるとも言われる。それらの多くはご当地の具材や味にはこだわっているものの、本当に私のようなカレー好きが満足するようなカレーはなかなかないというのが実情ではある。

 今回紹介するのは、カテゴリー的にはそうしたご当地レトルトカレーの一つに含まれるのだろうが、そうしたブームの以前からコツコツとこだわりのレトルトカレーを作ってきた、いわばご当地レトルトカレーの先駆けとも言うべき逸品である。しかも、そこいらのカレー専門店のカレーよりも格段においしいという、私的には最強のレトルトカレーである。

 以前、「東北の食べ処その14」と「東北で地ビールの飲める店その36」で紹介した、三陸沿岸にある岩手県宮古市のカレー店「カリー亭」(正確には口へんに加と、口へんに厘に亭である)のカレーをそのままレトルトカレーにしたものが岩手にはある。

 製造元の「とりもと」は宮古市で「カリー亭」と「焼き鳥とりもと」を経営する有限会社だが、ここはオーナーが自任する通り、「日本で一番小さなレトルト工場」も持っている。その設備を用いて、自慢のカレー3種をレトルトにしている。チキンカレー、キーマカレー、ビーフカレーの3種である。ビーフカレーは英国風甘口カレー、キーマカレーはバナナやパイナップルを使った南国風の中辛カレー、そしてチキンカレーは骨付き鶏もも肉が一本丸ごと入ったインド風の辛口カレーである。

 私のオススメはもちろん、チキンカレーであるが、食材からしてまさにこだわりの逸品である。岩手の骨付き鶏もも肉を、これまた岩手の大東町の菜種油で炒めて、旨みを引き出した玉ねぎと合わせて、天日塩とスパイスだけで調味している。

 特筆すべきは、これらのカレー、化学調味料を使っていないのである。ほとんどのレトルトカレーは、構造上長期保存ができることから、保存料などは元々使っていないのだが、簡単に旨みを増せる化学調味料は使っている。これに対してここのレトルトカレーは、化学調味料も含めて一切の添加物を使用していないのである。これは自分のカレーに対する並々ならぬ自信が伺える。

 同社のサイトから通販でも買えるが、宮古市内はもちろん、「かわとく壱番館」など盛岡市内の物産店で購入することもできる。

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2010年06月19日

私的東北論その15〜「五郎がびっくり焼」を食べながら考える「『奥州幕府』よ、もう一度」

027b4df1.jpg 「五郎がびっくり焼」の「五郎」って誰?
 岩手県北上市に「五郎がびっくり焼」という和菓子がある。栄泉堂という地元の老舗の和菓子店がつくる、北上を代表する和菓子の一つである。胡麻を練り込んである小豆餡と上に載っている香ばしいクルミの組み合わせが絶妙でとてもおいしい。

 この「五郎がびっくり焼」という名前であるが、北上以外の人には「この、五郎って誰だ?」と思われるに違いない。もちろん野口五郎が北上出身というわけでもない。この「五郎」は、北上の開祖と伝えられる安倍正任(あべのまさとう)、通称黒沢尻五郎正任(くろさわじりごろうまさとう)のことである。

 正任は、前九年の役で源氏と戦った安倍氏の一族で、棟梁貞任の弟、先代の棟梁頼時の五男である。現在の北上市域にある黒沢尻を本拠としていたために、黒沢尻五郎と呼ばれていたようである。

 この「五郎がびっくり焼」は、北上の開祖、黒沢尻五郎正任に捧げるとの趣旨で作られた菓子であったらしい。そして、クルミ、小豆、そば、ごまなど、砂糖以外は正任が生きていた当時にもあった材料でできているにも関わらず、あまりにおいしいので捧げられた正任がびっくりするに違いないということで、この名がつけられたそうである。菓子の出来栄えに対する自信と、五郎正任に対する愛着とが感じられるエピソードである。

 東北の人にとって、古の東北にあって中央からの侵攻に対して抵抗した歴史上の人物にはシンパシーがあるように思える。「五郎がびっくり焼」にはそれがストレートに感じられる。アテルイを始め、この安倍一族、奥州藤原氏などがまさにそうだし、秀吉の奥州仕置に最後まで抵抗した九戸政実もそうかもしれない。幕末の会津藩もそうである。

 これら中央から見れば「逆賊」というレッテルを貼られた人に対して東北の人は総じて温かい気がする。そう言えば「判官びいき」もそうである。平安後期に安倍、清原、藤原と「政権交代」が続いた東北の地で、清原氏だけがあまり人気がないように見えるのは、清原氏が安倍氏と同じ東北の俘囚長でありながら、前九年の役で源氏に味方して安倍氏を滅ぼす側に立ったということに関係があるのではないかという気がする。

 考えてみれば、古の東北というのはこのように中央支配に抵抗する自主独立の気概を持った人の地であった。アテルイしかり、この安倍一族もしかり、奥州藤原氏もしかりである。奥州藤原氏は、鎌倉幕府に先駆けた武家政権であったと言え、そこから「奥州幕府」という言葉を用いる研究者もいる。もちろん、東北地方という、広大ではあるものの一つの地域に限定された政権ではあったが、それが鎌倉幕府に与えた影響も大きかったようである。

 平泉の遺構などを見ると、「都など何するものぞ」という気風が古にはあったように見えるのだが(もちろん「蝦夷」として遠ざけられた結果已むに已まれずという面もあったのだろうが)、近現代はそうでもないようである。東北と言うとちょっと前までは「保守王国」、とにかく自民党が強かったのは歴史の皮肉と言うべきだろうか。


「謙譲の美徳」を地で行く?東北人気質
 もう一つ考えてみると、東北は自ら他の地域に侵攻したことはなかった。アテルイの戦いも、前九年の役も、文治五年奥州合戦も、戊辰戦争も、いずれも攻められたがゆえに戦わざるを得なかった。東北人は自ら外に攻めて出たことがない。戦いは常に侵略から身を守るためのものだった。

 アテルイは朝廷軍を相手によく戦ったし、安倍貞任は源氏を相手に一時は壊滅的な打撃を与えた。奥州藤原氏も全国から動員された圧倒的な兵力の大軍を相手に阿津賀志山で3日間も防戦した。戦えば攻める側にとっては難敵ではあったが、東北人自身は決して戦いを好んだわけではなかった(と思ったが、そう言えば「建武の新政」の折、後醍醐天皇に反旗を翻した足利尊氏を討つために、陸奥守として下向していた北畠顕家が奥州の兵を引き連れて上京し、尊氏軍を打ち破ったことはあった)。

 してみると、平和・平穏を愛する心優しい気質、それが東北人を表す言葉と言えるかもしれない。また、前にも少し書いたが、決して自分を誇らない、慎み深い。「謙譲の美徳」という言葉がこれほどピッタリ来る地域はそうないのではないか。そのようにも思う。しかし、一方、その気質は裏を返せば、現状に満足する、大きな変化を好まない、多くを望まない、ということにつながるかもしれない。
 だからきっと、奥州藤原氏の「奥州幕府」は全国には広がらなかった。東北の「保守王国」も裏を返せば、まさに古から続くこの東北人気質の表れと言えるかもしれない。

 ただ、文治五年奥州合戦を経て、外が浜(青森)までが「日本」に組み入れられる前までは、東北はまさに自主独立、中央に頼らず、自分たちのことは自分たちでやってきたはずである。その800年後の今の世はまさに乱世。地方は疲弊し、中央はその痛みも知らず、それでもこれまでの「中央集権」的枠組みは強固に維持されたままである。

 地方分権または地方主権、道州制導入といった掛け声はいつまでも掛け声のままで少しも現実のものにならず、かと言って東北から積極的な声が挙がるわけでもなく、結局はやっぱり現状維持のままである。ちょっと前までは北東北三県は将来の合併(まさに今年2010年という予定だった)を視野に連携・協力関係を深めていたが、今や隔世の感がある。


「奥州幕府」をもう一度つくる!
 そう思っていたところに、4月26日、東北6県の県議や市町村議員らが超党派で集まって地域主権型道州制の実現を目指す「東北州政治家連盟」が結成されたという。8月ごろには東北版シャドーキャビネット(影の内閣)として、「明日の東北州政府」を設置し、3カ月に1度、「閣議」を開いて政策の方向性を公表し、道州制が導入された場合を想定した具体的な政策を打ち出していくそうである。代表に選出された宮城の菊地文博県議は「東北から平成維新の狼煙をあげる」と宣言したそうであるが、実際こうした政治家連盟が正式に発足したのは東北が初めてとのことで、他地域に先駆けた取り組みのようである。

 4月27日付の朝日新聞には、地域主権型道州制国民協議会の江口克彦氏のインタビュー記事も載っていた。氏は、「道州制を導入すると、州都以外が寂れる心配はありませんか」との記者の質問に、「今は東京及び近辺だけだが、道州制になれば繁栄の拠点が10倍以上増える。加えて道州内で拠点を多様化すればいい。『東北州』だと仙台がニューヨークとして州都は平泉でもいいと思う。青森を環境州都、秋田を産業州都などにしてもいいかもしれない」と答えている。

 概ね氏の意見に賛成だが、敢えて重箱の隅を楊枝でほじくるようなことを言わせていただければ、州都は「平泉でもいい」ではなくて、以前書いたように「平泉がいい」のである。

 ただ、さすがに長らく地域主権型道州制国民協議会で道州制についての議論を主導してきた江口氏だけあって、重要な指摘をいくつもしておられる。記者の「地方の政治家は必ずしも権限移譲を歓迎していないとの指摘もあります」との指摘についてはこう答えている。

「地方は、キャッチャーばかりやっていてピッチャーをやったことがないから。でも、霞が関よりいい球を投げる人も、地方公務員にはいっぱいいる。日本人の生活レベルが豊かになったころから価値観が多様化し、画一的に政治・行政が行われることに国民が閉塞(へい・そく)感を感じるようになった。霞が関のピッチャーはもう限界。中継ぎというか、リリーフのピッチャーに交代しなければならない」

 その通りである。今の仕組みで立ち行かないのであれば、中央とはまったく違う独自の仕組みを古のように作ってしまえばよいのである。言ってみれば、朝廷の支配が続いていた11世紀末に奥州藤原氏がつくったように、900年後の今、もう一度「奥州幕府」を作るのである。


まず東北全体を見渡せる人材を集めるところから

 そこで提案がある。氏は「霞が関よりいい球を投げる人も、地方公務員にはいっぱいいる」と指摘しているが、それに異論はない。それに加えて、霞が関からも意欲ある人材を引き抜いてくるべきである。氏の言う「いい球を投げるピッチャー」を東北だけでなく中央からもどんどんスカウトしてくるのである。霞が関にも東北出身者は数多くいる。故郷をよりよく変えたいという意欲を持っている人も多いはずである。

 東北出身者に限る必要はない。東北に愛着を持つ人なら他地域の人でもどんどん招聘すればよい。奥州藤原氏も土着の蝦夷ではなく元々は中央の藤原氏に連なる一族であった。

 私がこう考えるには理由がある。以前書いた「古の『黄金の国』東北、復活なるか?」の時に、東北経済産業局のレポートを紹介したが、あれはよくできていた。私があの記事を書くよりはるか前に同様の指摘をしかも緻密な調査と分析を基に行っている。さすが、霞が関の人材は優秀であると思った。

 ここでは紹介しないでしまったが、東北地方整備局がまとめた東北圏広域地方計画もよくできていると思う。「東北圏を取り巻く状況と地域特性」として、東北圏が歩んできた歴史から説き起こし、東北圏の特徴と魅力、東北圏を取り巻く潮流、東北圏発展の課題へと論を進め、その上で「これから10年で東北圏が目指す姿」を提示している。それによれば、

「…東北圏は、美しい太平洋と日本海に面し、南北に貫く脊梁山脈や起伏に富んだ山地と大きな河川や深い森林の中で、豊かな自然と水資源に恵まれ、安全な食料とエネルギー等の資源を供給できる機能を有している。
 また、優れた人材や技術、食文化やものづくり、様々な産業振興に向けた取組を始め、大切に守り続ける伝統的で特徴的な祭り、雪文化や伝統工芸等、独特の歴史・文化が力強く残っており、人情味ある人々が織りなす潤いと豊かさがあふれる多様性ある地域である。
 こうした東北圏の持つ優れたポテンシャルを活かしながら、東北圏を支える人々が持てる力を十分に発揮し、国内外の人々との交流・連携を進め、新たな時代の潮流に対応・貢献できる多様で自立した東北圏を形成することで、美しい自然と様々な国の人や多くの世代が光り輝く、森と海、人の息吹と躍動感に満ちた空間を創り上げていく。これにより、東北圏の人々が、コミュニティの人と人との温かいネットワークを基礎に、自信と誇りを持って安心して住み続けられ、訪れる人々が安らぎと温もりを実感できる「東北にっぽん」というブランドの創造に結びつけていく。
 以上を本計画における東北圏の新しい将来像とし、「美しい森と海、人の息吹と潜在的な力、可能性としての力。躍動感に満ちた『東北にっぽん』の創造」をその理念とする。」

とある。そしてそのための具体策として「戦略的目標と実現のための主要な施策」や「広域連携プロジェクト」を打ち出している。恐らく今、都道府県レベルでこのように東北全域に目を配り、その特徴を的確に押さえながらその先の姿を提示するということができる機関・団体はないのではないだろうか。

 内閣府の地方分権改革推進委員会が出した勧告のうち、第2次勧告では、「国の出先機関の抜本改革」としてこれら経済産業局や地方整備局を含め多くの機関の廃止が打ち出されている。二重行政の無駄を省くためということである。確かにそうした側面もあるだろう。しかし、もし東北6県が一つになったとして、すぐ東北全体のことを考えられる人材が地方にどれだけの数いるのだろうか。そこが心配である。

 地方公務員にいかに優秀なピッチャーがいると言っても、そのピッチャーはこれまで大きな球場で投げたことはなく、面積が6分の1くらいしかない小さな野球場でしか投げたことがないのである。大きな球場でキャッチャーに届く球を投げられるようになるためには時間が必要である。

 そこでである。元々そのような方向性が検討されているようだが、廃止される東北の出先機関を道州政府が人材ごと引き受けてしまえばよいのである。地方の出先機関の人材は、その地域全体を見渡す視野を既に持っている。その力は、6県が合併してできた「東北州政府」にとって大きな力となるに違いない。

 ただ、これにはとにかくスピードが必要である。人材には限りがある。早い者勝ちである。「奥州幕府」成否の鍵は、他地域に先駆けて優秀な人材をいかに集めるか、それにかかっていると言っても過言ではないのではないだろうか。今までは攻められてから初めて戦ってきた。だが、今度ばかりは他に攻められる前に、自らが外に攻めて出なければいけないと思うのである。


追記(2010.9.28):その後「東北州政治家連盟」に関する話題がちっとも聞こえてこないと思ったら、案の定こういうことだったようである。

「『地方発の平成維新』休眠中 東北州連盟、参院選で亀裂」(2010年8月23日付河北新報、閲覧には登録が必要)

 いや、休眠中って、寝てる場合じゃないって(笑)。

 10月から再始動とのことなので、もう一度期待してみましょうかね。

 だいたい、Googleで「東北州政治家連盟」を検索してこのブログが3番目に表示されるような有様(2010.9.28現在)では何をか言わんやである。

 まずはホームページでも作るところから始めなされ。


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2010年04月28日

東北の逸品その21〜麹(こうじ)納豆

考えてみると、私は発酵させたものが好きである。ヨーグルトは毎食食べても食べ飽きないくらい好きだし、すっぱ辛いキムチも、そして納豆も大好きである。そう言えば、ビールだって発酵させた飲み物である(笑)。

 ヨーグルトもビールも、その起源は紀元前にまで遡るそうで、人間とは古い付き合いのようである。納豆については、全国的には水戸納豆が有名だが、東北では各地に「ご当地納豆」がある。スーパーを覗くとたいてい大手メーカーの納豆に混じってそのような地元の納豆があり、納豆好きの私はいつも興味をそそられている。恐らく全国屈指の納豆好きの地域だと言うことができると思う。

 そもそも納豆の起源と伝えられているエピソードの一つが東北に関係している。それは、「後三年の役」の際に源義家が戦場に携行した煮大豆が入れ物の藁苞の中で偶然発酵していて食べてみたらおいしかった、というものである。

 そんな土地柄もあって、もちろん、東北の納豆は総じておいしいと思う。以前紹介した川口納豆」は私の大のお気に入りだが、他にも秋田の有名な民謡、「秋田音頭」にも登場する「檜山納豆」もおいしい。檜山納豆は他の納豆よりもにおいが少なく、納豆が苦手な人でも食べやすいのではないかと思う。それから、醤油よりも塩が合う感じである。

 このように普通の納豆もおいしいが、東北には他にちょっと変わった納豆がある。それが今回紹介する麹納豆こうじ納豆)である。普通、納豆というのは納豆菌で発酵させたものだが(中世以前は麹で発酵させていたそうだが)、麹納豆は、麹で発酵させるのが特徴である。

 さらに、まず普通に納豆菌で発酵させた後、麹でも発酵させた2度発酵の麹納豆もある。異なる菌で2度発酵させたものとして以前紹介した鳥の海ブルワリーのシャンパンビール(スパークリング・フルーツ)を思い出すのはたぶん私だけだろう(笑)。

 この麹納豆、東北でも特に山形、中でも内陸南部の米沢市を中心とした置賜地方が発祥のようで、同地域では「五斗納豆(ごどなっとう)」と呼ばれ、江戸時代の上杉藩の頃から食べられている。名前の由来は、大豆一石で作った挽きわり納豆に麹五斗、塩五斗を混ぜて、樽に仕込んで熟成させたから、とか、上杉鷹山が五斗瓶(ごどがめ)で作ることを推奨したから、と言われているようである。

 今でも「雪割納豆」という名前で、地元米沢市のまるよね食品工業が、この伝統的な麹納豆を作っており、山形県内ではどのスーパーでもたいてい手に入れることができる。この麹納豆、おいしいのだが、けっこう塩辛い。もちろん、ご飯に載せて食べるならちょうどよいのかもしれないが、普通の納豆に馴染んだ私には正直しんどい。この間ある店で見たら、雪割納豆について「納豆の塩辛のようなもの」と説明されているのがあった。なるほど、納豆として見ないで、塩辛と思ってご飯にちょっと載せて食べるのが正しい食べ方なのだろう。

 一方、それほど塩辛くない麹納豆も、探してみるとあちこちにある。麹納豆の「本拠地」米沢市周辺にも長井市のやまぜんや高畠町の高畠納豆といった地元の納豆店が作る「こうじ納豆」があるが、これは塩分を抑えてあって「味付納豆」というような感覚で食べられる。

 他に、私が酒田市で見つけた「味付納豆てんこ盛り」と福島県川俣町で見つけた「増田屋の手づくりこうじ納豆」は、最初に普通の納豆と同じように納豆菌で発酵させた後、麹で発酵させている2度発酵の麹納豆だが、これまたとてもおいしかった。

230305.jpg  「味付納豆てんこ盛り」はくろもりアルファフーズという酒田で70数年のキャリアのある納豆店が作った麹納豆(酒田市のある庄内地方では「塩納豆」と言われ、置賜地方に負けず劣らずよく食される郷土の味である)で、庄内産の大豆で作った麹納豆に鰹節や昆布を加えたものである。

 普通のものと唐辛子を加えた「とうがらし」があるが、辛いもの好きの私はもちろん「とうがらし」の方が好きである。これはご飯が進む。納豆本来の旨みに麹で発酵させた旨み、それに鰹節と昆布の旨みが加わっているのである。これはもう旨みの三重奏である(笑)。

232100.jpg  もう一方の「増田屋の手づくりこうじ納豆」は、川俣町にある創業100年の老舗の麹店である増田屋商店が作った、福島県産大豆を使ったこうじ納豆で、見た目はほとんど普通の納豆である。

 しかし、食べてみるとやはり違う。納豆特有のにおいがほとんどないし、味も深みがある。普通の納豆よりも賞味期限が長いのもありがたい。川口納豆の倍くらいの値段だが、一パックで2,3食はまかなえるので、お得である。



110824-011259追記(2011.8.8):山形自動車道のさがえサービスエリアで見つけた、川西町の酢屋吉正が作っている「元祖 南蛮納豆」も米麹を使った麹納豆だが、これもとてもおいしかった。

 納豆はひきわりになっており、そこに粉末の唐辛子でほんのり辛味を加えている。塩味も控えめで、ご飯がよく進む味である。

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2009年10月17日

東北の逸品その20〜岩木山麓の嶽きみ

6583eae6.JPG 夏の味覚の一つとして、夏らしさを演出するのに欠かせないアイテムの一つがとうもろこしである。焼きとうもろこしは夏祭りの出店の人気メニューでもある。

 並居るとうもろこしの中で、東北が誇るのが青森の「嶽きみ(だけきみ)」である。嶽きみは、青森の弘前市にある岩木山の山麓、嶽地区の高原で栽培・収穫されたとうもろこしの総称であるが、嶽地区は夏の朝晩の寒暖差が大きく、その気温差は10度以上もあるそうである。その自然環境と作る人の手間隙によって、嶽きみは生でも食べられるくらい、とても甘く出来上がるそうである。

 もともとは自家用としての生産が主だったとのことであるが、糖度が他の産地のとうもろこしに比べて極めて高く、「甘くて美味しい」と口コミで評判が広がったことから、いまや青森のみならず東北を代表するとうもろこしとなっている。「きみ」とは、津軽弁で「とうもろこし」のことである。ちなみに、仙台もそうだが、東北の他の地域では「とうもろこし」のことは「とうきび」と言う。

 生産量が少なく夏の終わりにちょっとだけ出てきて、すぐなくなる辺り、以前紹介しただだちゃ豆」を彷彿とさせるが、ただの枝豆を圧倒的に凌駕するだだちゃ豆同様、嶽きみも普通のとうもろこしとは全く次元の違うおいしさである。

 嶽きみの最大の特徴は何と言ってもその卓越した甘みである。とにかく甘みがあっておいしいのである。この甘みのおかげで、確かに嶽きみは生のままで食べても十分においしい。普通のとうもろこし同様ゆでると、その甘みはさらに増す。その甘みは、下手な果物をはるかに超えている。もちろん、甘ったるいということでは決してない。果物の甘みではなく、やはり野菜の甘みである。

 だだちゃ豆もそうだが、この嶽きみ、同じ東北でも、仙台ではほとんど見掛けない。盛岡で見掛けるのが南限かもしれない。もちろん、最近ではネットで入手できるので、送料を厭わなければ全国どこでも送ってもらえる。

 メロンなどでは、例えば山形の庄内砂丘メロンはおいしいが、夕張メロンとどちらがおいしいかと聞かれると、甲乙つけがたい。しかし、この嶽きみの味は圧倒的であるように思う。もちろん、嶽きみ同様、全国に出回らないおいしいとうもろこしが他にもあるのかもしれないが、ぜひ一度味わってみてほしいと思うオススメの逸品である。

 と言いつつ、今年はもうそろそろシーズン終了であるが…(笑)。

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2009年07月05日

東北の逸品その19〜相馬松川浦の青のり

a45092de.jpg 私がどこかへ行ってお土産を買う時、真っ先に見るのは箱や袋の後ろである。そこに「販売者:○○会社」と書いてあれば、その会社の住所がその地にあっても、そのお土産はまず買わない。販売しているのは地元の会社でも、作っているのはどこか別のところだろうからである。その土地に行ったらやはりその土地のものをお土産に買いたい。たとえば、ハワイで買ったお土産に「Made in Japan」とか書いてあったら、何だかがっかりした気分になるのと同じである。だから、「製造者:○○会社」とあって、その住所がその土地だったらそのお土産は地元で作っているわけだから、そのお土産は私のチョイスの第一段階をクリアしたことになる。

 お菓子などはこの方法でだいたいOKなのだが、難しいのは海産物などである。たとえ製造者の欄に地元の会社や商店の名前が記載されていても、地元の素材を使っていないケースもままあるからである。もちろん、水産加工品であれば、それでもいいこともある。たとえば、「博多名物」として有名な辛子明太子に使われるたらこはほとんどが宮城県の石巻産であると聞く。それはそれで博多には辛子明太子のブランドと製造のノウハウがあるわけであるから、元が石巻のたらこであっても、別にがっかりしない。ところが、判断に困るのは、それが余り加工されていない場合である。

 私は実は岩のりが好きである。味噌汁に一つまみ入れるだけで、磯の香りが漂い、また食べてもおいしい。そんなわけで、海沿いの地に行くと岩のりがお土産の候補になることも多いのだが、けっこう判断が難しいことがある。たとえば、岩のりの袋に「製造者」として地元の会社や商店の名前が書いてあるにも関わらず、袋にはその土地が産地であることが明記されていない場合である。この場合、確かに「製造」しているのは間違いなくその土地であるかもしれない。ただ、辛子明太子と違って、岩のりについて言えば、それほど複雑なプロセスを経て製造しているわけではない。極端な話、どこかよその土地の岩のりを持ってきてその土地で乾燥させたとして、それはその土地で作ったお土産と言えるのだろうか、という問題が横たわるのである。そして、岩のりの袋を見ただけでは、たいていの場合それが判断できないので、岩のりを買う場合は「○○産」と明記されている場合のみ買うことにしている。

 ついでに言えば、非常に紛らわしいのは「前浜産」と書いてある岩のりである。「前浜」とはいったいどこなのか。けっこうありそうな名前で、明らかに地元、とは判断できない。現に、あちこちで「前浜産」と書かれた岩のりを目にする。これはそれぞれの土地に「前浜」なる浜があるのか、その土地の目の前に広がる浜を「前浜」と称するのか、それとも全国の「前浜産岩のり」の供給を一手に引き受けている「前浜」という地がどこかにあるのか(笑)、袋を見ただけではさっぱり分からないので、買わないことにしている。

 さて、福島県沿岸北部の相馬市には、松川浦という潮干狩りや松葉ガニで有名な潟湖があるのだが、ここのもう一つの名物が、「青のり」である。青のりは通称で、正式には「ひとえぐさ」と言うそうであるが、相馬市内の土産物店で売られている青のりはほとんど「相馬松川浦産」と明記されている。「岩のり」より希少で、きちんと産地も明記されており、私の相馬土産の定番である。味噌汁などに入れると濃い緑色が広がり、もちろん風味もいい。

 相馬市の隣の南相馬市にある「黒潮海苔店」の青のり(写真参照)の袋には、「青のりには炭水化物と蛋白質と少量の粗繊維と脂肪、それにカリウム、カルシウム、ナトリウム、鉄、マンガン、燐、硫黄、珪素、沃素、塩素などの無機質でできており、ビタミンA、チアミン(B1)、リボフラビン(B2)、ナイアシンなど10種類のB類及びC類を豊富に含んでおります。医学的にも動脈硬化の防止機能を有することが証明されています」と書かれている。海苔類は一般に栄養価が高いことで知られるが、青のりもその例外ではないようである。

 ただ一つ、気をつけなければならないのは、保存方法である。袋にも「冷凍保存」を勧める記載があるが、これはその通りで、開封後は普通の岩のりよりも常温での品質劣化が早い感じである。放っておくと、あっと言う間に風味が落ちる。そこだけ気をつければ、いつでも手軽に磯の風味が味わえる、いいお土産である。


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2009年06月30日

東北の逸品その18〜山形の無濾過ワイン

山形県東北屈指の「果樹王国」である。さくらんぼやラ・フランスが特に有名だが、それ以外にもりんご、もも、砂丘メロン、私も大好きな尾花沢すいかや庄内柿、そしてぶどうなど、いろいろな果物が取れる。以前、山形は東北で地ビールが最も少ない県だと書いたが、このように果物が豊富な土地柄であるので、「地ワイン」の方はたくさんある山形県観光情報総合サイトによると山形県内には11ものワイナリーがある。山元町の「桔梗長兵衛商店」だけが頑張っている隣の宮城県とは天地ほどの差がある。

 ところで、「無濾過(無ろ過)」という言葉はよく国内の地ビールやドイツ、ベルギーのビールなどでよく聞く言葉である。私の好きな銀河高原ビールも無濾過の味わいが売りの一つとなっている。日本の大手ビールメーカーのビールがフィルターで濾過を行って、酵母などを取り除いているのに対し、これらのビールではあえて濾過を行わず、本来の風味を生かしている。日本酒でも、濾過を行ったものとは別に無濾過のにごり酒(どぶろく)がある。

 ビールや日本酒だけでなく、ワインについても実は無濾過のものがあった。ただ、ワインでは無濾過で品質を保つのが難しいらしく、そのため普段酒屋などではあまり見掛けないのだが、山形にはこの無濾過ワインに取り組んでいるワイナリーがいくつもある。ワインのことはあまり詳しくないのだが、これは特筆すべきことではないだろうか。

 その中で、月山山麓の西川町にある月山トラヤワイナリーは、寒河江市の地酒蔵元の千代寿虎屋の関連会社だが、ここにはその年に取れたぶどうを使って限定醸造する「月山山麓しぼりたて濁りワイン とらやのほいりげ」という無濾過ワインがある。

222058.jpg マスカットベリーとセーベルを使ったロゼとセーベルのみを使った白、それに自社農園のシャルドネを使ったシャルドネ(白)がある(写真はロゼとシャルドネ)が、いずれも発酵後直ちに冷却させることで、完全無添加でボトリングしたワインである。アルコール度数は7度で飲みやすく、普段ビールしか飲まない私でも違和感なく飲める。

 この「ほいりげ」、取り扱いには細心の注意が必要で、瓶には「『ほいりげ』は全くの生で酵母が生きております。必ず5度以下で保存して下さい。強い振動や衝撃をあたえないで下さい」、「全くの生で少々炭酸ガスを含んでいます。必ず冷蔵の上、お早めにお飲み下さい。開栓時はふきこぼれないよう、布等をあててガスを抜いて下さい」と書いてある。発酵が進んでしまうので冷蔵保存が鉄則、それに発酵の過程で炭酸ガスが発生しており、強い衝撃や振動を与えると最悪の場合コルク栓が飛んで吹きこぼれてしまうこともあるそうである。

 こうした慎重な取り扱いが求められるために一般にはなかなか流通しないのだろうが、そのためもあってかまたそもそも出荷本数が少ないこともあってか、この「ほいりげ」、毎年出すとあっという間に売り切れる「幻のワイン」となってしまっている。月山とらやワイナリー以外に、山形県内ではタケダワイナリーも「ドメイヌ・タケダ《キュベ・ヨシコ》」という瓶内二次醗酵による発泡ワインと「サン・スフル」という無添加無濾過の生詰めワインを醸造しているし、高畠町にある高畠ワイナリーも「アンフィルタード」と銘打った無濾過ワインを醸造している。朝日町の朝日町ワインも「無濾過秘蔵ワイン」と「出羽山麓山葡萄酒」という無濾過ワインを醸造している。「山形ワイン」ブランドの南陽市、大浦ぶどう酒も無添加無濾過の「完全無添加赤ワイン ピュア」とノンフィルター、生詰めの「大浦の樽熟成ワイン バレルエージング」という無濾過ワインを醸造している他、同じ南陽市にある、創業1892年、東北最古の醸造所という酒井ワイナリーなどは、代表銘柄の「バーダップワイン」など一貫して無濾過・無清澄・無殺菌のワインを醸造している。天童市の天童ワインにも「ナイヤガラにごりワイン」という無濾過ワインがあり、米沢市にある「モンサンワイン」の浜田も「無ろ過にごりワイン」を限定醸造している。他のワイナリーも、私が知らないだけで同様のワインを醸造しているかもしれない。

 これだけのワイナリーが無濾過ワインを醸造している県は、全国広しと言えどもそうないのではないだろうか。「ほいりげ」を飲んでみると、濾過されなかった果実分などが生きており、普通のワインよりもより濃厚に「ぶどう」の味が感じられる。「果樹王国」山形でこれだけの無濾過ワインが醸造される背景には、この果物としてのぶどうを存分に味わってほしいというワイナリーの方々の思いがあるように思える。

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2009年04月17日

東北の逸品その17〜庄内の誇る和風スイーツ「笹巻」

090412-235753 以前ちょっと紹介した、庄内各地のクオリティの高い物産品をさまざま取り揃えている「清川屋」であるが、最近はオリジナルのスイーツの人気が高いようである。特に、「ほわいとぱりろーる」という卵白を使った純白のロールケーキは楽天市場などネット上でも人気が高く、これまでに70,000本以上売り上げているそうである。

 ほわいとぱりろーるはもちろん清川屋の自信作だけあっておいしいが、庄内でスイーツと言えば、この時期には「笹巻」がある(写真参照)。私も大好きな、この時期しか味わえない、庄内の誇る「和風スイーツ」である。

090413-000126 笹巻は、端午の節句にお供え物として各家庭で作られていた、木灰汁で煮た飴色のもち米を笹の葉で三角に包んだものである。笹を剥いて、添付の黒蜜を全体につけ、さらに添付の黄粉や黒砂糖をまぶして食べる。やさしい甘さの懐かしい味わいで、この時期になるとなんとなく食べたくなるものである。

 清川屋の笹巻は古来からの習慣通り、4月に入ってから5月の連休明けくらいまでしか置かれていない。まさに、期間限定の極上スイーツである。

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2008年11月09日

東北の逸品その16〜添加物を一切使用しない壽屋寿香蔵の漬物

b2a9d9ec.jpg 全国の様々な地域と同様、東北にもたくさんの漬物があり、その地域その地域で、様々なものを漬け込み、食している。特に、冬季雪に閉ざされる地域が多い東北では、漬物が保存食として生活になくてはならないものだった。このことも東北で漬物が多く食されることと大きな関係があるのだろう。経済産業省の工業統計によれば平成18年現在、東北六県で野菜漬物の出荷金額が最も大きいのは山形県であり、漬物が多く食される東北の中でも、山形は特に漬物づくりが盛んな地だと見ることもできる。

 昨今では、「だし」が首都圏など他地域でちょっとしたブームになったのが記憶に新しい。「だし」というのは、きゅうり、なす、みょうが、しそ、ねぎなどの夏野菜を全部みじん切りにして、醤油をかけて少し漬けた山形の漬物の一種である(参照サイト)。

 さて、このような中でも特にオススメしたい漬物店が東根市にある。壽屋寿香蔵(ことぶきやじゅこうぐら)である。全国に商品として流通している漬物にはたいてい、保存料が添加されている。元々保存食なのに保存料を追加しなければいけないというのは、流通に乗せるためのやむを得ない措置なのだろうが、ちょっと釈然としないものを感じていた。ましてや、原材料名に「調味料(アミノ酸)」などという表示を見つけると、なんとなく調味料の味でごまかされたような気がして、どうして素材そのものの味と本来の味付けの味だけではいけないのか疑問に思ったりしていた。

 この壽屋寿香蔵で作られるすべての漬物には一切そうした添加物の類が使われていない。いわば、昔あった本来の姿の漬物がそのまま売られているのである。もちろん、昔の漬物のように保存のために塩味がやけに強烈というようなことはない。ちなみに、こうした添加物を一切使わない漬物店は、ここを含めて全国に三社しかないそうである。貴重である。

 もちろん、一切添加物を使わないとしても、その結果おいしくない漬物になってしまってはオススメできないのであるが、ここは実に多種多様な漬物があるにも関わらず、たいてい外れなく(まだ全部食べつくしたわけではないので断言はできないのであるが)、漬物としてとてもおいしい。

 そのようなわけで、特にオススメを挙げるのは実に難しい。漬物だけで30種類以上あるのである。独断で挙げれば、看板メニューの一つ茜姫(地元産の完熟梅の砂糖+リンゴ酢漬け)、さらさら漬(たまねぎのリンゴ酢漬け)、梅たくあん、ワインたくあん、すっぱいたくあんなどのたくあん類、それに青菜漬(せいさいづけ)、おみ漬(青菜の刻み漬け)、ぺそら漬け(なすのピリ辛漬け)などの山形に元からある漬物もやはりおいしい。他に、わらわら飯喰は(ままけは)(白瓜と青唐辛子の米麹漬け)、なんばん味噌漬(青唐辛子の味噌漬け)も辛いもの好きの私のお気に入りである。というように、一つに絞り切れないのである。逆に言えば、たくさんある中から目についたもの、気に入ったものを自由に買うのが一番よい気がする。

 そうそう、この壽屋寿香蔵の漬物を作っている所は「工場」ではなく、「道場」と呼ばれている。「壽屋漬物道場」という名称である。「安全で安心そして味の良い漬け物を作るにはその食品作りへの真摯な心を養わなければならない」との考えからだそうである。中国国内だけでなく、日本においても様々な偽装など、食に対する信頼や安全が揺らいでいる最中にあるが、そうした中で必要なのは、まさに食品をつくる担い手としての心なのだろう。

 この「壽屋漬物道場」のサイトでは、ここで作られている漬物のレシピが惜しげもなく公開されている。こうしたことも、よいものを少しでも広めたいという「漬物文化の担い手」としての「心」を感じさせるところである。

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2008年08月04日

東北で地ビールが飲める店その33 & 東北の逸品その15〜山形県金山町・全国初の「メープルの里」のメープルビールとメープルシロップ

7b0f1e84.jpg  メープルシロップと言えば、カナダの国旗にも描かれているサトウカエデの樹液を煮詰めた甘味料である。独特の風味のあるやさしい甘さの甘味料で、パンやホットケーキにかけるととてもおいしいので私も大好きなのだが、ちょっと高価なのが玉に瑕という感じである。まあ、樹液を集めてそれを煮詰めて濃縮させるという工程にはそれなりに手間がかかるのだろうなと思うので、やむを得ないことではあるのであるが。

 このメープルシロップはカナダの特産品であるし、国産品などはないと思っていたのだが、なんと山形の北部、最上地方の金山町に1999年からこのメープルの里づくりに取り組んでいる人がいる。同町の山あいにある13戸の小さな杉沢集落で「暮らし考房(くらしこうぼう)」(最上郡金山町杉沢、TEL/FAX0233-52-7132、 kurasikoubou@amber.plala.or.jp )を営む栗田和則氏である。

 栗田氏は農山村での豊かな暮らしを創り伝えたいとの思いから1993年に「暮らし考房」を立ち上げ、いわゆるグリーンツーリズムに先駆けて、都市の農村との交流活動を始めた。メープルに注目したきっかけは哲学者の内山節氏との会話の中で、氏が「メープルシュガーでコーヒーを飲みたい」と言ったことだったそうである。

 この地区にはイタヤカエデが多く自生しており、また「二月泣きイタヤ」という言葉も伝わっていたという。旧暦2月にイタヤカエデを切ると、木がまるで涙を流しているかのような透明な樹液を出すのだそうで、この時期に炭焼きなどで山に入った人は喉が渇くとイタヤカエデを切ってその樹液を飲んでそのほのかに甘い樹液で喉を潤していたのだそうである。カナダのサトウカエデに対して、栗田氏はこのイタヤカエデの樹液を使った商品作りに取り組んだ。

 最初に作ったのは樹液100%をそのまま飲み物にしたメープルサップ楓露(ふうろ)」である。このメープルサップ「楓露」から始まって、今ではメープルドロップ楓飴(かえであめ)」、メープルソフトクリーム楓華(ふうか)」、メープルシロップ楓の雫(かえでのしずく)」、そしてメープルビール楓酔(ふうすい)」と、イタヤカエデの樹液を使った様々な商品を開発し、世に送り出した。

 他に国内では、埼玉県秩父市が秩父市内の菓子業者が結成した「お菓子な郷推進協議会」が2005年から同市内にあるカエデから取ったメープルシロップを使った菓子作りに取り組んでいる他(参照サイト)、宮崎県の椎葉村でも今年からイタヤカエデのメープルシロップ作りに取り組んでいる(参照記事)が、栗田氏の取り組みはそれらに先んじており、金山町杉沢集落が国内最初のメープルの里であることに異論は出ないであろう(実際には戦前から戦後にかけて北海道や青森の営林署で事業化試験が行われていたそうだが結局事業化には至らなかった)。

 イタヤカエデから作ったメープルシロップ「楓の雫」は文字通り栗田氏のこれまでの努力の結晶である。カナダのメープルシロップの等級はシロップの色が薄いほど高級になるが、この「楓の雫」、カナダの等級で言うと最上級の「Canada No.1 - エキストラ・ライト(Extra Light)」に当たる。カナダ産とは違って、逆にこれ以上濃縮はできないそうである。イタヤカエデはミネラル分がサトウカエデの倍以上含まれており、これ以上濃縮するとこれらのミネラル分が結晶化して沈殿してしまうからであるらしい。

 一方のメープルビールは、ここで取れたメープルサップと、同じくこの地周辺に自生する野生のホップ唐花草(からはなそう)を使った地ビールで、醸造は「いわて蔵ビール」の世嬉の一酒造が担当している。メープルサップのほのかな甘み、唐花草のワイルドなほろ苦味の感じられる栗田氏自慢のオリジナルビールである。

 楓の樹液を使ったビールはカナダにもないそうで、全世界唯一とのことである。また、野生の唐花草を使ったビールも私が知る限り、東北では以前紹介した秋田市内の郷土料理店「味治(みはる)」のオリジナルビール「森の唐花草」があるくらいで、東北以外では寡聞にして聞かない。ちなみにこのメープルビールやメープルサップ、メープルソフトクリームやメープルシロップ入りのコーヒーなどは、「暮らし考房」のショップ&カフェ「楓」で味わうことができる。

 なお、イタヤカエデの樹液が取れるのは「二月泣きイタヤ」の言葉通り、現在の3月のみであるが、この時期は暮らし考房でメープルサップ作りの体験もできる。また、毎年3月の第一日曜日には「メープルフェスタ」も開催されている。メープルビールは、この3月に取れたメープルサップを使用して醸造される。その年の5月頃から出荷され、11月近くまで飲めるが、限定1,500本なので早い者勝ちである(写真はショップ&カフェ「楓」。人懐っこくてかわいらしい栗田氏のお孫さんと)。


追記(2008.9.11):福島路ビールの「裏磐梯名水仕込み オー!ラガー(おらがビール)は、「裏磐梯から湧き出た名水と、この地域に自生するアロマホップを使用」とある。裏磐梯に自生するアロマホップ、これすなわち唐花草である。原材料には、「麦芽、ホップ(一部生使用)」とあり、この生のまま使用した分が唐花草だと思われる。


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2008年02月21日

東北の逸品その14〜仙台のずんだ餅

56ebc33e.jpg 仙台名物と言えば、最近では特に牛タンが有名であるが、私的には子どもの頃から親しんでいて、かつ他の地域にあまりないということで、ずんだ餅の方が思い入れが強い。

 ずんだとは、枝豆をすりつぶして作るあんこのことで、とてもきれいな黄緑色をしている。仙台名物と書いたが、実際は仙台だけでなく宮城県全域と山形県内陸部、それに秋田県の県南地方でも見かける。ちなみに、山形では「じんだん」と呼ばれている。

 もっともポピュラーなのはずんだ餅だが、餅以外にも宮城県内ではあんこやごま、しょうゆと並んでだんごの定番の一つとしても定着しているし、最近ではまんじゅうになったり、大福になったりもしている。仙台の老舗のお茶屋さんである「お茶の井ケ田」が展開する喜久水庵の大福である喜久福の「ずんだ生クリーム大福」は私のお気に入りの和菓子の一つである。和菓子だけではなく、最近ではケーキやデザートなど洋菓子にもずんだが使われてきている。

 仙台市内でずんだ餅と言うと、一番の老舗は創業130年の歴史を誇る村上屋餅店仙台市青葉区北目町2-38、9:00〜18:30(日曜、祝日は〜18:00)、不定休)であるが、私は子どもの頃から慣れ親しんでいることもあってエンドー餅店のずんだ餅(写真参照)の大ファンである(エンドー餅店では「づんだ餅」と表記している)。

 エンドー餅店のずんだ餅の好きなところは、甘さ控えめで豆本来の旨みや甘みがよく感じられることで、そのずんだと県内産のブランド餅米「みやこがね」を使った柔らかくてよく伸びるお餅との相性が抜群である。ここのずんだの味に慣れているためか、他の店のずんだは砂糖の甘さがやや強いように感じてしまう。

 最近では、宮城県米山町産の仙台ちゃ豆を使用した「極みづんだ餅」も販売している(要予約)。こちらは仙台ちゃ豆自体、普通の枝豆より甘みが強いので、さらに砂糖の使用量を抑えているそうである。ちなみに通常のずんだ餅は5個683円だが、この「極みづんだ餅」は5個1,155円である。いつか食べてみたいとは思っているが、普通のずんだ餅でも十分においしいことと前日までの予約が必要なこともあって、まだ買ってみたことはない。お中元の季節には仙台市内の百貨店でもこの「極みづんだ餅」を取り扱うそうである。

 そうそう、この店で子どもの頃から親しんだ味がもう一つ。もち米を使った変わりご飯の「味付おにぎり」である。考えてみると、おにぎりを売っているお餅屋さんというのも珍しいかもしれないが、私が子どもの頃から今に至るまで変わらず売り続けられているロングセラー商品である。

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2007年12月07日

東北の逸品その13〜鶴岡のだだちゃ豆

407b6f12.jpg ビールのつまみと聞いて真っ先に思い起こすのは、ドイツ人やポーランド人ならソーセージにザワークラウトなのだろうが、日本人にとっては枝豆であろう。この枝豆であるが、どれも同じように見えてその実なかなか奥が深い。聞くところによるとその品種は全国に200種ほどあるとか。それだけあるわけなので、一括りに枝豆と言っても、その地域によってさまざまな種類の枝豆が食べられているわけである。

 その枝豆であるが、東北人にとって最高級の枝豆と言えば、山形県鶴岡市の「だだちゃ豆」を措いて他にはない(参照サイト)。このだだちゃ豆、鶴岡市白山が原産の枝豆の「在来種」で、サヤが茶毛の茶豆の一種だそうである。サヤのくびれも深いため見た目こそ良くないが、味は絶品である。普通の枝豆にはない特有の甘みと旨みがある。だだちゃ豆を食べてから普通の枝豆を食べると、普通の枝豆がまったく物足りなく感じてしまうほどである。したがって、銀河高原ビールにだだちゃ豆という組み合わせは、私にとっては東北出身同士の黄金コンビというイメージである。

 ちなみに、だだちゃ豆の「だだちゃ」とは庄内地方の方言で「お父さん」のことである。庄内藩の酒井の殿様も相当この枝豆が好きだったらしく、領内のあちこちから枝豆を献上させ、「今日はどこのだだちゃの豆か」と尋ねながら食べたことからその名がついたそうである。

 このだだちゃ豆、難点を挙げるとすればまず当然ながら普通の枝豆よりは値が張ることである。しかし、これは希少価値のある枝豆であり、味も文句のつけようがないのでしようがない。問題はむしろ、出荷時期が8月のお盆の頃から9月上旬頃という、短い期間に限られることである。なので、「黄金コンビ」が組める期間は実はそう長くないのである。

 ただ、最近は幸運なことに鶴岡を含む庄内地方に行けば、冷凍保存されただだちゃ豆が手に入る。庄内を代表する物産店である清川屋にも冷凍だだちゃ豆があった(写真参照)。普通なら「生に比べれば冷凍ものなんて〜」と思ってしまうところだが、これまでの経験から清川屋が扱っているものに外れはまずないので、買って食べてみた。やっぱりおいしかった。生のだだちゃ豆をゆでたのと同じ味である。これがあることでだだちゃ豆が年中食べられるのはありがたい。

 ちなみに、仙台には「仙台ちゃ豆」という枝豆がある。これもだだちゃ豆と同じ茶豆の一種で、実は数年前まで「だだちゃ豆」の名で売られていたが、だだちゃ豆は鶴岡の特産品ということで、現在の名称に変わったという経緯がある。「仙台ちゃ豆」ももちろん悪くないが、やっぱりだだちゃ豆の方が味は上だと思う。

 そうそう、このだだちゃ豆、おいしい枝豆ということで首都圏など他の地域でもその名は知られているようであるが、残念なことに東北山形の鶴岡の特産品であることはそれほど知られていないようである。う〜ん、ここでも東北のPR下手が出てしまっているのかなぁ〜、と思うのは私だけだろうか。せっかくブランドイメージがあるのだから、これからも豆にPRを行ってほしいものである。

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2007年02月22日

東北の逸品その12〜下北半島のいか寿し

81f3380d.jpg 青森の海の幸と言えば、もちろん大間の高級マグロもあるが、私にとって馴染み深いのはやはりイカとホタテである。特に、夏ともなると夜、イカ釣り船が大挙して漁に繰り出す。水平線上にその明かりがずらりと並んで見える光景は、青森の夏の風物詩でもある。

 津軽海峡を隔てた函館には有名ないかめしがあるが、こちら青森の下北半島にはいか寿し(いかずし)がある(写真参照)。寿しとは言っても、いかめしのようにイカの中にご飯が入っていたりはしない。下北半島のいか寿しとは、いかの酢漬けの中に、刻んだキャベツ、にんじん、生姜などの野菜、それにイカのゲソが入った食べ物である。

 このいか寿しの「元祖」というむつ市の倉本水産によると、下北半島は周りを海で囲まれて昔からたくさんのイカがとれるため、その保存食として、この地域の各家庭ではもともといか寿しが作られていた。昭和50年に、倉本水産がそれまでのいかずしを基本にアレンジし、いかの酢漬けの中にキャベツ、にんじん、生姜、ゲソを入れるというスタイルの、現在広く売られているいか寿しの商品化に成功したのだそうである。以来、このいか寿しは、下北半島の郷土料理としてこの地域の人に広く親しまれているという。

 実際に食すると、イカの酢漬けの酸味とモチモチ感、それに刻んだ野菜のシャキシャキ感がマッチしてとてもおいしい。恐らく、特に女性に好まれる味なのではないかと思う。一度食べるとやみつきになるおいしさである。しかし、このいか寿し、下北半島以外では、同じ青森県内でも売っているのをほとんど見かけない。本当の意味で「郷土の味」なのだろう。最近では、全国発送もしてくれるようだが、このいか寿し、下北半島を訪れた際の楽しみの一つと言える。

 このいか寿し、恐らく縁起を担いでということなのだろうが、イカ本来の白色と、着色した赤色のものとがある。ただ、個人的には、あえて人工の着色料で赤く染めなくてもいいように思うので、私が買うのはいつも白色の方である。ちなみに、土産物店で買うよりも安いので、私は地元の人に交じってマエダ本店の生鮮食品売り場でこのいか寿しを買い求めるのが常である。

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2006年08月31日

東北の逸品その11〜赤湯「龍上海」のからみそラーメン

65ec0026.jpg 東北のラーメンで一番好きなラーメンは?と聞かれたら、私は間違いなく真っ先にこのラーメンを挙げるだろう。山形県南陽市の赤湯にある「龍上海」の「からみそラーメン」である。

 みそラーメンは元々札幌が発祥とされる。全国に広まったのは昭和40年代半ばで、それまではラーメンと言えば醤油ラーメンであった。
 ここ龍上海でも、昭和33年の創業以来、一貫して製麺も含めてすべて自家製のラーメンを作ってきたラーメン店であったが、創業当初は醤油ラーメンだけであった。しかし、思ったほど売れず、仕込んだスープの大半が残る日々だったそうである。この残ったスープをどうにかしようとして、当時は家族がみそを入れて味噌汁代わりに食べていたりしたそうである。

 先代の主人は、これにヒントを得て、この味噌汁代わりに食べていたスープを逆にラーメンに応用できないかと考えたという。時は昭和35年。札幌みそラーメンが一世を風靡するおよそ10年前のことである。ただのみそラーメンでなく、「からみそラーメン」となったのは、以前紹介した赤湯の伝統的な逸品である「石焼唐がらし」の存在が大きかったに違いない。しかし、ここでも東北のPR下手が災いしてか、このからみそラーメンの存在が全国に知られることはなかった。

 以前聞いたところでは、このからみそラーメン、実に60数種類の材料からできているそうである。確かに、スープを口にすると、辛さだけではない、何とも形容しがたい独特の旨みが感じられる。この旨みとそのスープの個性に負けていない極太の縮れ麺との相乗効果が、私を含めてこのラーメンにやみつきになる人を多く生む源となっているに違いない。

 ちなみにこの龍上海、今でこそカップ麺になってコンビニで売られたり、請われて新横浜ラーメン博物館に出店したりして知名度が上がっているが、かつては取材拒否の店であり、地元山形のメディアに登場することもほとんどなかった(もちろん、既に地元の人は誰でも知っている有名店だったが)。私は例によって父親に教えてもらったのだが、学生の頃から食していて今に至るまで、全国津々浦々でここを超えるラーメン店にはいまだ出会っていない。もちろん、ラーメンは人によって好みがまるで異なるので、あくまで「私にとっては」、というほどの意味合いでしかないのであるが。

 ただ、私の住んでいるここ宮城県にも、明らかに龍上海に影響されたと思われるからみそラーメンを出す店が少なくないことを考えると、龍上海が周辺のラーメン店に与えた影響の大きさが窺い知れるというものである。某大手カップ麺企業がご当地ラーメンの一つとして「仙台辛みそラーメン」というカップ麺を出している。確かに仙台にも辛みそラーメンを出す店は多くあるが、それらはほぼ龍上海のフォロアーであるので、私的には「仙台辛みそラーメン」という称号には、やや抵抗感がある。からみそラーメンは山形が発祥である。

 そうそう、学生の頃から食していると言ったが、さすがに南陽は仙台からはやや気軽には行きづらい。そんなことで、私はもっぱら山形市内にある山形店の方に通いつめていた(写真参照地図)。辛いもの好きな私は、いつもからみそを増量してもらっていた。からみその増量はプラス50円なのだが、足繁く通って毎度増量していたせいか、山形店のご主人は私に対しては、いつもプラス50円分をオマケしてくれていた。それは社会人になってからもである。一応、こちらは恐縮して、会計の時に正規の金額を出すのだが、必ず50円バックしてくれるのである。ささやかながら嬉しいことである。

 今でも、この龍上海のラーメンが無性に食べたくなる時がある。そんな時は仕事が終わった後、愛車のソアラを飛ばして(麺かスープがなくなると営業時間内でもその日の営業は終了なのである)、山形市内のこの龍上海の支店にからみそラーメンを食べに行ったりしている。ここで、からみそチャーシューメンの大盛り、からみそ追加という、この店で最高値のラーメンを食べるのが(しめて1,150円である。ただし50円バックしてくれるが)、私にとっては最高の贅沢である。


img290追記(2006.9.18):新横浜ラーメン博物館の「龍上海」に行ってみた。同博物館の中でもここだけ、夜9時半頃だったにもかかわらず行列ができていた。なんとなくうれしかった。肝心のからみそラーメンだが、麺の縮れが若干少ない感じはしたものの、それ以外は赤湯の本店や山形店と比べても遜色ない味だった。元の値段より少し割高なのは横浜で食べられることを考えればやむを得ないところ。持ち帰り用も売っていた。


追記(2010.7.30):このところいつ行っても山形店にいつものおじさんがおらず、若い店員さんばかりだったので聞いてみたところ、おじさんは引退したとのことだった。考えてみれば、学生の頃から20年くらいも経っていて、その頃から既におじさんだったし、それも無理のない話かと思った。とは言っても、20年くらい舌に馴染んだ味がもう味わえないというのも寂しいものである。そう、やっぱり今の人が作るのと味が違うのである。それが年季というものなのかもしれない。ともあれ、おじさん、今までありがとうございました。そして、お疲れ様でした。


追記(2012.8.18):上で紹介した「いつものおじさん」、夜、久しぶりに行ってみたらカムバックしておられた。どんな事情があったのか(夜間に人手が足りないとか?)は聞かなかったが、個人的には「やった!」という感じである。久しぶりにおじさんの作るからみそラーメンを食べたが、やっぱり私の慣れ親しんだ味はこれである。大抵の日の夜はおられるということだったので、また足を運んでみたいと思う。


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2006年05月02日

東北の逸品その10〜鳥の海ブルワリーのシャンパンビール

de1dbfed.jpg 鳥の海ブルワリーは、宮城県の沿岸南部、亘理町にある地ビール醸造所である。亘理町は秋のはらこめし、冬のほっきめしで有名だが、東北一の生産量を誇るいちご、宮城県一の生産量を誇るりんごなど、果実類の生産でも有名である。鳥の海ブルワリーでは、ラガーやピルスナーの他に、これら地元の果実を用いた「いちごラガー」「りんごラガー」「ぶどうラガー」など、フルーツビールの種類が豊富なのが特徴である。

 一時は、仙台市中心部にある直営の居酒屋「地麦酒館 鳥の海」(仙台市青葉区中央1-8-19東洋信託ビルB1F、TEL022-262-1783)で1,200円で飲み放題を実施したり、ペットボトル入りの地ビールを仙台駅構内の弁当店で売り出したり、かなり印象的な取り組みをしていた。しかし、地ビール醸造所のご多分に漏れず実情は厳しいのか、いつの間にかペットボトル入りビールはなくなり、飲み放題メニューから地ビールが対象外となってしまった。先日「地麦酒館 鳥の海」に行ったら、売りであるはずのフルーツビールすらなくなっていた。これには思わず席を立とうかと思ったくらいである。

 実情がどうなのかはわからないが、こうしてだんだんに縮小に縮小を重ねていくのを目の当たりにすると、他のいくつかの地ビール醸造所のように結局は消滅してしまうのか、と残念に思っていたのだが、さにあらず。そんな矢先、鳥の海ブルワリー起死回生(?)の新商品にお目にかかった。これがまた、他に例を見ないような、非常にユニークな地ビールである。その名も「シャンパンビール」と言う(写真参照)。

 何がユニークかと言うと、このビール、その名の通り、ビール酵母とシャンパン酵母の両方を用い、まずビール酵母で一次発酵させた後、シャンパン酵母で二次発酵させ、長期熟成させたビールなのである。鳥の海ブルワリーお得意のフルーツを使用し、いちご、桃、りんご、メロン、マスカットの種類がある。「奥州仙臺六十二万石麦酒」と書いてあるものもあれば、写真のいちご味のもののように「鳥の海ブルワリー」としか書いていないものもあり、正式名称は分からない。

 味は、このビール独特のものと言える印象で、まさにビールとシャンパンの中間のようなさっぱりとした風味である。地ビールらしく、酵母は無濾過であり、ビンには数百億個の酵母が生きている旨記載されている。

 このシャンパンビール、「インターナショナル・ビアコンペティション2005」の「フルーツビール」の部で「ピーチ」が金賞を獲得し、「ジャパンビアカップ2005」の「フリースタイル・ビール」の部で「いちご」が金賞を獲得するなど、なかなか評価も高いようである。

 ちなみにこのシャンパンビール、生産量の関係で、亘理町の鳥の海ブルワリーで、土曜と日曜の10:00〜15:00のみ販売される。県内の催事に出店していることもある。300ml瓶で450円である。新商品開発の意欲と力があったと分かって安心した。あとは、このシャンパンビールを仙台市内の「地麦酒館 鳥の海」でも早く飲めるようになることを期待したい。


追記(2006.12.16):上記の仙台市内の居酒屋「地麦酒館 鳥の海」に久々に行ってみたところ、店を閉めてしまっていた。結局シャンパンビールは仙台の街中では飲めずじまいだったわけで残念である。


追記(2007.3.4):年に1回行われる「亘理町産業祭り」に今年も鳥の海ブルワリーが出展していた。この日はシャンパンビールが通常より安く3本1,000円で買えるので嬉しい。久々に購入したところ、ラベルが変更されすべて「シャンパンビール」に統一されていた。また、普段は、亘理町国民保養センター「鳥の海荘」でも購入できるそうである。


追記(2008.5.5):釜房ダムの湖畔にある国営みちのく杜の湖畔公園は、ゴールデンウィークともなるとたくさんの人で賑わうが、そのような時は出入り口付近で地元の物産を売るスペースが出現するが、鳥の海ブルワリーのシャンパンビールもここに毎年出店している。ここでも3本1,000円で買える。


追記(2008.5.17):亘理町国民保養センター「鳥の海荘」は温泉を掘り当てたことを契機に全面改築され、わたり温泉鳥の海としてリニューアルオープンしたが、ここの売店では酒類販売業免許がまだ取得できていないとの理由で、今のところシャンパンビールは瓶の見本しか置いていない。

 仕方ないので、鳥の海ブルワリーで直接購入をと思ったが、現在レストランは営業しておらず、090-1377-3460に電話すると担当の方が来てくれるようになっている。雑談で「みちのく杜の湖畔公園でも買いました」と話したら、ここでも3本1,000円にしてくれた。ちょっと嬉しかった。


追記(2008.8.15):シャンパンビールに新しい種類が出ていた。「チャーガ&蜂蜜」である。チャーガとは、ロシアなど寒冷地に生息し、白樺に寄生するキノコの一種だそうである。キノコを使ったビールも恐らく初めてではないかと思われるが、飲んでみると他のフルーツを使った種類よりもくせのない味わいで飲みやすい。

 なお、3本セットの値段は1,200円と若干値上がりしていた。


追記(2009.3.8):シャンパンビールではないが、新製品が出た。「青葉の薫風(かぜ)」という名の発泡酒である。「仙台発幸せ行き」とあって、「キレイな貴女に贈る新発泡酒 アロエ果汁&柚子果汁配合」というコピー通り、女性をターゲットにした商品のようである。柚子果汁のせいか、さっぱりとした味わいが印象的で、確かに女性に好まれる味かもしれない。


212824.jpg追記(2010.3.7):今年の「亘理町産業祭り」で売られていたシャンパンビールである。使用した果物のイラストをあしらったラベルは、ちょっと高級感があってよい。以前の仙台城やら七夕やらのイラストが書いてあって「奥州仙臺六十二万石麦酒」などと「伊達政宗麦酒」を意識したような表記があるラベルより格段にいいと思う。表記は「Sparkling  Fruit」に統一されている。
 写真は左からりんご、イチゴ、ぶどうの「Sparkling Fruit」である。


追記(2011.9.15):鳥の海ブルワリー(宮城マイクロブルワリー)は、3月11日の東北地方太平洋沖地震による津波で被災し、社長以下従業員は無事だったものの、建物と醸造設備をすべて流されてしまったそうである。

 しかし、社長は強い意欲を持って再開に向けて準備を進めておられるとのことである。また、あの東北で無二のフルーツビールが飲める日を期待して待っていたい。


追記(2012.12.28):別のところに詳しく書いたが、鳥の海ブルワリーは岩手県花巻市に所を移して、「夢花まき麦酒醸造所」としてこの12月に再出発した。 ぶどうとりんごの「スパークリング・フルーツ」も出来上がっていて、以前と同様の味わいだった。

 将来的には、被災した亘理町でも再度醸造所を作りたいとのことで、今後にも期待である。 


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2005年11月21日

東北の逸品その9〜宅の店の歌舞伎くるみ

ccd3acb1.jpg 私は辛いものが好きだが、甘いものも好きである。他の地域と同じように、東北にも様々なおいしい甘味があるが、今回紹介する「宅の店の歌舞伎くるみ」もその一つである。

 山形の日本海沿岸の酒田市は古くは港町であり、京都の北前船の航路だったこともあって、京都の文化や物産品が多く入ってきた。和菓子もその一つであったろう。そのせいか、今でも庄内にはおいしい和菓子屋さんが多い。代表的なのは、鶴岡市の木村屋が作る、羽黒山の出羽三山神社の鏡池から見つかった大量の銅鏡をかたどった和菓子「古鏡(こきょう)」で、もちろんこれもおいしいが、個人的には「宅の店の歌舞伎くるみ」ももっと有名になってもいいのになと思う。

 「宅の店の歌舞伎くるみ」はその名の通り、酒田市にある宅の店(山形県酒田市駅東2-3-15、TEL0234 -24-5700)という和菓子店の代表的な和菓子である。原材料はくるみと寒天と砂糖だけで、砂糖を入れた寒天にくるみを入れて固めたものである。一口食べるとコンデンスミルクのような甘さが口に広がり、その後くるみのほろ苦さがやってくる。そのバランスが絶妙である。

 酒田市には、250年前から続く黒森歌舞伎という農民歌舞伎がある。東北地方では福島県の南会津の檜枝岐村の檜枝岐歌舞伎が有名だが、この黒森歌舞伎もそれに劣らぬ歴史を持つ。毎年旧暦の正月に1回だけ上演され、雪国であるだけに吹雪の中での熱演となることもある。「宅の店の歌舞伎くるみ」はこの黒森歌舞伎に感動した「宅の店」初代幸治郎氏が考案した菓子だそうである。

 今ではこの黒森歌舞伎だけでなく、東京銀座の歌舞伎座でも販売されるようになっているので、歌舞伎好きの方にはむしろ知られている菓子かもしれない。もっとも、その菓子が銀座のはるか北、東北・山形の酒田市内の一菓子店で作られているということを知っている人は少ないかもしれないが。歌舞伎座のサイトから通信販売で注文もできる。

 ちなみに、この「宅の店」、「人生菓集」という肩書き(?)を持っている。確かに、「歌舞伎くるみ」以外の同店の菓子の中には粒の栗を栗餡で包んだ焼き菓子「栗三年」やバウムクーヘン「年輪」、生クリームと生チーズクリームと生レモンが入ったカステラ「辛抱」など、「人生」を思わせるようなネーミングの菓子が多い。250年受け継がれた黒森歌舞伎に感動して「歌舞伎くるみ」を作ったように、人の生の様々な営みへの応援歌を和菓子に託するというのが初代から続く同店のコンセプトなのかもしれない。


追記(2007.11.20):宅の店の「辛抱」が清川屋にあったので買って食べてみた。ふんわりしたカステラに生チーズクリームと生レモンの酸味がアクセントとなった生クリームの甘みがよくマッチしておいしかった。これがなぜ「辛抱」というネーミングとなったのかについては直接聞いたわけではないので憶測の域を出ないのだが、「人生酸いも甘いもあるが辛抱すればいいこともある」といったメッセージなのではないかと思った。

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