将棋のさとブルワリー  

2014年07月15日

東北で地ビールが飲める店 番外編その27〜東北地ビール紀行第6回「山形県編」(「東北復興」紙への寄稿原稿)

 3月16日に刊行された「東北復興」の第22号では、東北地ビール紀行の第6回目として山形県内の地ビールと地発泡酒を取り上げた。片やドイツスタイルを貫き通す麦芽100%のビール、片や山形らしく果物や蕎麦などを使った発泡酒と、それぞれのスタイルで地ビール・発泡酒を醸造している。詳細は以下の通りである。


東北地ビール紀行その6 山形県編

山形県内で唯一の地ビール
 山形県内には現在、一つの地ビール醸造所と二つの地発泡酒醸造所がある。今回はこれらを紹介していきたい。
月山名水館では出来立ての「地ビール月山」が飲める
 まず、唯一の地ビールは山形県中央部、月山の麓の西川町にある「地ビール月山」である。ドイツの「ビール純粋令」に忠実に、麦芽とホップのみを使い、月山山麓に湧き出す「月山自然水」で仕込んだ地ビールである。馴染みあるピルスナーと、濃色のミュンヒナーが定番で、それに季節ごとの限定ビールが加わる。
 
 後で紹介する二つの醸造所が果物や蕎麦などを使った特徴的な地発泡酒を造っているのとは対照的に、麦芽とホップのみで造る地ビール月山は地味な印象もあるが、そのクオリティーは高く、多くのビール好きに評価されている。看板メニューのピルスナーは、普段あまりピルスナーを飲まない私が飲んでも他のビールとは違うことが分かる味である。ヴァイツェンなど地ビールに多いスタイルのビールが苦手という人にもぜひ飲んでみていただきたいビールである。
 
 国道112号線沿いにある「道の駅にしかわ 月山名水館」(西村山郡西川町大字水沢2304、TEL0237-74-4582)内に醸造所と地ビールレストランがあり、出来立ての地ビールが樽生で飲める。売店では瓶ビールを購入できる。月山名水館に隣接して「水沢温泉館」という日帰り温泉施設があるので、これまでに紹介した岩手の沢内銀河高原ホテル、秋田のたざわこ芸術村、宮城のやくらいリゾード、夢実の国、オニコウベと同様、湯上がりに地ビールを飲むという「極楽体験」もできる。
 
 ただし、この「月山名水館」、道の駅であることで分かるように、車以外では行きにくい場所にあるのが地ビールを目的に足を運ぶ際のネックと言えば言えるかもしれない。尤も、その気になれば山形市からJR左沢線と路線バスを使って行き来することもできる。

「果物王国」の地発泡酒
将棋むら天童タワーでは様々なフルーツの地発泡酒が飲める 地ビール月山以外の二つの地発泡酒は、いずれも将棋の駒の製造で有名な天童市にある。東北で「果物王国」というと山形と福島を指すことが多いが、これら二つの地発泡酒には「果物王国」山形の果物を使ったものがある。
 
 その一つは国道48号線沿いにある「将棋むら天童タワー」(天童市大字久野本1273-2、TEL023-653-3222)が醸造している「将棋(こま)のさとブルワリー」と「果実むらブルワリー」の二種の発泡酒である。前者はピルスナーやスタウトなど、ビールと同様の種類の発泡酒、後者は山形が誇るラ・フランスやさくらんぼ、りんご、ぶどうの発泡酒である。
 
 「将棋むら天童タワー」内にある売店で瓶のものが購入できる他、食堂ではこれらの樽生が飲める。これらの地発泡酒が飲み放題となる「宴会飲み放題コース」もある。

温泉ホテルが造る地発泡酒
全国でも珍しい温泉ホテルが醸造している地発泡酒がある湯坊いちらく もう一つは、天童温泉内にある温泉ホテル「桜桃の花 湯坊いちらく」(天童市鎌田本町2-2-21、TEL023-654-3311)内にある天童ブルワリーが醸造している地発泡酒である。ここでは、さくらんぼを使った「聖桜坊(セントチェリー)」、蕎麦を使った「Mr.A(ミスター・エー)」の、山形らしい二種の地発泡酒が飲める。
 
 先述のように、「地ビール月山」を始め温泉施設が併設されている地ビール醸造所は東北にいくつかあるが、温泉ホテルが自ら地ビール(地発泡酒)を醸造しているケースは全国的に見ても珍しいのではないだろうか。聞けば、既存のビールではない、オリジナルのビールで宿泊客をもてなしたいということで敷地内に醸造所を造ったそうである。従って、外来の客でも売店で瓶のものは購入できるが、ここで樽生が飲めるのは宿泊客だけである。
 
 ただ、山形市内には系列の居酒屋「かくれ居酒屋 桜桃の花」(山形市十日町4-2-7ホテルキャッスルB1F、TEL023-632-3687)がある。実はここでこれら二種の地発泡酒の樽生が飲めるので、温泉に宿泊して飲むことが難しい場合はこちらがオススメである。

各地の地ビールが飲める店も
アーキグラムでは常時各地の地ビール数種類が樽生で飲める 他に、醸造所ではないが、全国各地の地ビールが樽生で飲める店もある。山形市にある「ジ・アーキグラム・ブリティッシュ・パブ&カフェ」(山形市十日町2-1-35、TEL023-622-7570)がそうである。
 
 イギリスのパブ風の雰囲気の店内で、各地の地ビールが常時数種類樽生で飲める。何が飲めるのかはその時々で違うので、行く度に楽しみがある。東北以外の地ビールが樽生で飲める店は、東北では私が知る限り、ここと秋田市にある「酒場 戸隠」(秋田市山王2-7-29-2F、TEL018-863-8699)くらいであり、貴重である。



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2010年11月25日

東北で地ビールが飲める店その56〜山形県天童市

d1e4b62f.jpg  天童市は山形市の北隣に位置する人口6万3000人の市である。以前紹介した、山形市の南隣にある上山市と共に、温泉で有名なところであると共に、ラ・フランスやさくらんぼ、もも、りんご、ぶどうなどの果物でも知られる。また、天童市は将棋の駒の生産でも有名で、全国の将棋の駒の大部分を生産するという、全国有数の「将棋の町」である。毎年4月中旬に開かれる「人間将棋」は有名だが、それ以外にも街中の歩道に「詰め将棋」があしらわれていたり、街の至るところに将棋を感じさせるものがある。

 さて、この天童市であるが、以前ちょっと紹介したように、2箇所地ビールを醸造しているところがある。正確に言えば、いずれも「ビール」ではなく「発泡酒」なので、「地発泡酒」と言うべきなのかもしれないが、とにかく一つの市にそうしたところが2箇所あるのは、現在、東北では他に岩手県盛岡市(ベアレンのビールとステラモンテのビール)、秋田県仙北市(田沢湖ビールと湖畔の杜ビール)である。

 以前山形市のところで紹介したことがあるが、天童市の2箇所の醸造所のうち、1箇所は「将棋むら天童タワー」にある、「将棋(こま)のさとブルワリー」である。天童タワーは天童市の街中からはちょっと離れた国道13号線沿いにあり、JR天童駅から歩くと30分はかかる。屋根の大きな将棋の駒が目印である。タワーと言ってもそれほど高い建物ではないのだが、中にレストランがあり、そこで地発泡酒の樽生を飲むことができる。以前は、「果実むらブルワリー」というのがあって(醸造所は「将棋のさとブルワリー」と同じ)、そこが天童の自慢の果物を使った発泡酒を醸造していたのだが、最近は見かけない。

 もう1箇所は、天童温泉の温泉街の中にある「桜桃の花 湯坊いちらく」(写真参照)の中にある「天童ブルワリー」である。ここでは、温泉客をオリジナルのビールでおもてなししたいとの考えから、醸造所を作ったそうである。「ビールでもてなしたい」と考える辺り、きっとここの社長はかなりのビール好きに違いない(笑)。ここでは、山形の誇るさくらんぼを使用したチェリービール「聖桜坊(セントチェリー)」、そしてこれまた山形の誇るそばを使用した「SOBA DRY(そばドライ)」が飲める。しかし、飲めるのはこのいちらくに宿泊した人だけである。それ以外の人は山形市内にある「かくれ居酒屋 桜桃の花」で飲むことはできる。

 これら2箇所以外に天童市内で地ビールなどが飲める店を飲食店が集中している天童温泉の温泉街を中心に探してみたが、残念ながら見つけられなかった。地ビールが飲みたければ「湯房いちらく」に泊まるか、駅から30分歩くか、という選択になりそうである。


追記(2016.11.22):山形市内の「かくれ居酒屋 桜桃の花」は残念ながら閉店してしまった。「天童ブルワリー」の地ビールを飲みたい場合は「湯坊いちらく」に宿泊するか、年に数回開催されるイベントに参加するかということになりそうである。


137028822_4094912647203250_5764104248729944022_n追記(2021.9.14):上記天童タワーの「将棋のさとブルワリー」は醸造を取りやめてしまったが、その醸造設備を使って新しい醸造所ができた。「ブリューラボ108(トウハチ)」である。
山形県内の農産物等を使った様々なビールを醸造しており、瓶は天童タワー内の売店で購入でき、レストランでは樽生を飲むことができる。


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