森吉山  

2016年10月27日

私的東北論その87〜「東北秘境ツアー」のススメ(「東北復興」紙への寄稿原稿)

 8月16日に刊行された「東北復興」第51号では、先号、先々号に続いて、東北の観光について取り上げた。この回のテーマは「東北の秘境」である。ただ、秘境というのは、私の中では、あまり人に知られていないこともその大きな要素だと思っているので、秘境について紹介することは、秘境を秘境でなくする可能性があり、その点で矛盾を感じるところもある。

 とは言え、東北の秘境はとても魅力的なところが多いので、紙面では以下の通り、紹介してみた。


東北秘境ツアーのススメ

東北の秘境?
 前回は東北の「端っこ」を紹介した。今回は東北の秘境について紹介したい。ただ、、「端っこ」については、緯度と経度で異論なく決まるが、「秘境」がどこかについては、解釈の違い、意見の隔たりが多くありそうである。

 例えば、秘境と言うと、かつて「日本の秘境100選」が選定されたことがある。JTBの雑誌「旅」が創刊750号となるのを記念して開催されたシンポジウムの場において選定されたものである。この中で東北で選ばれたのは、八甲田山(青森県)、下北半島/恐山・仏ヶ浦(青森県)、津軽半島西岸(青森県)、八幡平・乳頭温泉郷(秋田県・岩手県)、出羽三山(山形県)、檜枝岐・野岩鉄道沿線(福島県・栃木県)、裏磐梯・雄国沼(福島県)、遠野盆地(岩手県)、内間木洞(岩手県)、重茂半島(岩手県)、十二湖・白神山地(青森県)、飛島(山形県)、笹谷峠(宮城県・山形県)の13か所である。

 「日本の秘境100選」に選ばれた東北の「秘境」を見て私が最初に思ったのは、「これらは秘境なんだろうか」ということである。秘境どころか、有名な観光スポットがほとんどのように見える。これらの中で私が「確かに秘境だね」ということで同意できるのは、内間木洞くらいである。岩手県の沿岸北部久慈市にあって日本で5番目の長さを持つこの洞窟は、普段一般公開がされておらず、また龍泉洞やあぶくま洞などと比べて知名度も高くないので、その意味で秘境であると言ってよいと思う。

秘境とは何か
 そもそも秘境とは何だろうか。「デジタル大辞泉」には、「外部の人が足を踏み入れたことがほとんどなく、まだ一般に知られていない地域。」とある。「大辞林」でも、「人の訪れたことのない、まだ一般によく知られていない地域。」とある。

 どちらの解釈でもポイントは二つで、一つは「人があまり訪れていない」こと、もう一つは「一般によく知られていない」ことである。私が「秘境」という言葉を聞いてイメージするのもこれらと近い。

 そうした観点から見ると、やはり先の「日本の秘境100選」は、あまりにも人が訪れ過ぎで、あまりにもよく知られ過ぎた場所ばかりである。秘境の捉え方にもよるが、辞書的な解釈からはかなり遠い「秘境」であると言わざるを得ない。

 秘境に相応しい言葉として、「人跡未踏」という言葉が挙げられると私は思う。このご時世、人跡未踏の地などあるのかと思われる向きもあるかと思うが、東北の山の中にはつい最近まで人がほとんど足を踏み入れたことのなかった地域が多くある。これぞまさに秘境である。

手掛かりはブナの森
 東北で秘境を考える時に手掛かりになるのはブナであると思う。2013年3月の第10号で東北のブナについて書いたことがあるが、ブナは東北各地に広く森を形成していた樹種である。しかし、木材としての利用がしづらかったために、各地で伐採され、代わりに木材として利用されるスギなどが植えられた。ということは、現在もブナの森が残っている地域は、人の手が加えられていない、いわばあまり人が訪れていない地域と言うことができるのではないだろうか。

bunabayashi1 その代表がもちろん、世界自然遺産として登録された、縄文時代から続くブナの原生林が今も残る白神山地である。しかし、白神山地は世界自然遺産への登録で一躍有名になり、また訪れる人も急増したため、秘境とは言えなくなってしまった。

 福島を除く東北5県の国有林を管理する東北森林管理局のデータによれば、管内国有林の樹種別蓄積では、スギが6,686万立方メートル(26%)で最も多いが、次いでブナが5,708万立方メートル(24%)で、以下カラマツ1,503万立方メートル(6%)、ヒバ1,382万立方メートル(6%)、アカマツ1,280万立方メートル(5%)、ナラ類823万立方メートル(4%)と続く。だいぶ伐採され、植え替えられたとは言え、依然ブナの木が東北には多く残っていることが分かる。

image-19 白神山地以外でブナの原生林が残っている地域として挙げられるのが、福島県の奥会津・只見町である。只見町のブナ林はその規模や原始性において、白神山地と並んで国内随一と言われている。伐採を逃れたブナ林は、やはりあまり人が入らない奥山に残っている。只見町では、町内のブナ林のパンフレットを作成しており、ウェブ上でも閲覧できる。


巨樹・巨木も手掛かり
 もう一つ、秘境の手掛かりとしてあるのは巨樹、巨木である。それが神域にあったために伐採を免れ、大事にされてきたというケースもあるが、そうでなければ単に発見されなかったために今に至るまで残った巨樹・巨木も多くある。

img481 林野庁は「森の巨人たち百選」を選定したが、100のうち27が東北にある。これらの中には、元々古くから巨樹として知られてきた木もあるが、環境省が1988年と2000年に全国で行った巨樹巨木林調査の結果、存在が明らかになった巨樹もある。岩手と秋田両県にまたがる和賀山塊もブナの原生林が多く残ることで特筆すべき地域だが、ここにある「日本一のブナ」や「日本一のクリ」の存在が明らかになったのは、まさにこの調査の結果である。和賀山塊について詳しく知りたい場合は、「美しき水の郷あきた」のサイト内にある「巨樹の森・和賀山塊」が参考になる。

 山形県の北部、最上(もがみ)地域もそうである。1市4町3村からなるこの地域は、総面積の8割が森林であるが、ここでも全国有数の巨樹・巨木が多く見つかっている。最上地域観光協議会のサイトで詳しく紹介されている。

奥会津の秘境
 先に紹介した只見町は奥会津と称される地域にある。会津と言うと、この地域の中心都市会津若松市が有名で、確かに市内を歩くとそこかしこに会津らしさが感じられるのだが、こと自然に関しての会津の魅力は実は、会津若松からさらに奥地に入ったところにあると私は思う。それが只見町のある奥会津地域であり、それに隣接する南会津地域である。

wgn5QT4C これらの地域には新潟県側にまたがって越後三山只見国定公園があるが、福島県側のポイントは只見町の田子倉湖と只見町に隣接する檜枝岐村の奥只見湖である。ちなみに、檜枝岐村は東北で最も人口の少ない市町村である。昨年現在の人口は614人で、東北で唯一三桁の人口である。また、村の面積の約98%が山林であるために全国で最も人口密度が低い市町村で、その数値は1平方キロメートル当たり1.73人である。つまり、1キロメートル四方に2人いない計算である。日本一人口密度が高いのが東京都中野区の1平方キロメートル当たり20,180人であるので、檜枝岐村の人口密度はその約11,665分の1である。

 田子倉湖も奥只見湖も、全国屈指の規模のダムによって生まれた湖であるが、この2つの湖を結ぶ地域はまさに人跡未踏の地として知られている。どちらのダムも建設時に多数の殉職者を出した末にようやく完成したと言い、今もお盆には慰霊祭が行われているそうである。

秋田内陸にある秘境
kimimachisugi 先に紹介した「森の巨人たち百選」の中には「きみまち杉」という、樹高が58メートルという日本一の高さの杉がある。58メートルと言うと、15階建てのビルに相当する高さだそうである。

 この「きみまち杉」があるのは、秋田県能代市の仁鮒水沢スギ植物群落保護林である。この保護林もほとんど知られていないので秘境と言って差し支えないと思うが、人工林ではない秋田杉の天然林が見られる希少な場所である。一歩足を踏み入れると、とにかくそのスギの存在感に圧倒される。植林されたスギとはスケール感がまるで違う。入口にある看板の文句が面白い。「道路沿いなどによくある人工林とは段違いのスケールを誇る巨木林です。ただ目が慣れると感激が薄れてしまいますのでご注意ください」とある。「森と水の郷あきた」のサイト内の解説が詳しい。

001 北秋田市にある森吉山周辺もまさに秘境と呼ぶに相応しい地域である。古くから霊峰として山麓住民の信仰の対象となってきたこの森吉山にも豊かなブナの森がある。水の豊かな山で、山間のあちこちに滝があることでも知られている。

 その中で、秘境の面目躍如たる滝が「九階の滝」と呼ばれる、落差が100メートル以上もある滝である。かつてはこの地のマタギでさえも「神様の沢」として畏れ、近寄れなかったと伝えられる場所で、登山道が整備されていないこともあって、これまで地元の人でさえ数えるほどしか到達していないという、まさに秘境の滝である。

 九階の滝までたどり着ける人はそう多くはないだろうが、小又峡の三階滝までなら行ける。これまた奥森吉を代表する見事な滝である。三階滝までは遊歩道が整備され、場所によって表情を変える清流を横目で見ながら散策ができる。森吉山について詳しく知りたい場合は、「美しき水の郷あきた」のサイト内にある「水の郷・森吉山」が参考になる。

普通の「東北」に飽き足らない方へ
 これまで紹介してきた地域は、恐らくあまり知られていないと思われる。いずれも「東北の秘境」という称号に値する地域と言えるのではないだろうか。冬ともなるとまさに人跡未踏の地となるが、今の時期であれば、もちろん奥地まで入り込むのであれば本格的な装備が必要となるが、そこまででなければ比較的軽装でも、十分秘境の醍醐味を味わうことができる。

 有名な観光地巡りには飽きたという方や、東北らしさを存分に味わいたいという方にはぜひおススメしたい。


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2011年10月29日

東北をめぐる鉄道の旅その9〜秋田内陸縦貫鉄道

111016-071931 秋田内陸縦貫鉄道(秋田内陸線)は、秋田県の県北にある北秋田市の鷹巣(たかのす)と中央部にある仙北市の角館町とを結ぶ総延長94.2kmの私鉄である。

 この94.2kmという距離は、東北新幹線の新青森延伸に伴って移管された青森県内の旧JR東北本線の青い森鉄道の121.9kmや、三陸沿岸を走る北リアス線(71.0km)と南リアス線(36.6km)を合わせた三陸鉄道の総延長107.6km(現在は震災の影響で休止中である)にこそ及ばないものの、東北の私鉄としては長い部類に属する。

 南端の角館町は黒塀の武家屋敷に映える枝垂桜で有名な東北屈指の桜の名所である。春の桜の時期には、この角館からJR鷹ノ巣駅とホームを共有する北端の鷹巣駅でJR奥羽本線に乗り入れ、岩木山をバックに弘前城址に咲き誇るソメイヨシノでやはり東北屈指の桜の名所として知られる青森県の弘前市を行き来する臨時列車「快速弘前お城とさくら号」、「快速角館武家屋敷とさくら号」も走る。最近では社長を公募したことでも話題を呼んだ。

 沿線には、以前紹介した私曰く「東北最後の秘境」である森吉山がある。阿仁前田駅の駅舎「クウィンス森吉」内にある温泉も名物である。この温泉、ありがちな加水・加温・循環などではなく、源泉かけ流しである。車窓から見える山里の景色の中をのんびり走る列車は、先を急ぐ旅とは無縁の、時間を贅沢に使った旅にはピッタリである。

0857_001 車窓からの「絶景ポイント」や沿線の見どころをピックアップしたパンフレットが有人の駅で手に入る。パンフレットは角館起点で書かれているが、逆に県北の方を起点として見てみる。例えば県北の中心都市大館市からは、大館発6:24のJR奥羽本線快速秋田行に乗ると、鷹ノ巣6:38着である。秋田内陸縦貫鉄道の鷹巣発6:39の角館行始発列車への乗り換え時間は1分しかないが、先に書いたように両線はホームを共有しているので、ちゃんと乗り換えができる。

111016-072059 秋田内陸縦貫鉄道の車両は、様々な色に塗られているので、列車待ち合わせ時には反対側から来る列車の色も楽しめる。駅によっては阿仁合い駅のように10分以上停車するところがあるので、列車を降りて駅舎に足を運んだりすることもできる。駅では沿線地域の観光パンフレットなども入手できる。

 秋田内陸縦貫鉄道のパンフレットにある「絶景ポイント」は角館寄りに多いので、後半は見どころの連続である。そのようにして車窓からの景色を楽しみつつ角館に着くのは9:21である。ここから秋田方面に向かうには、まず9:43のJR田沢湖線大曲行に乗る。JR角館駅併設の土産店を覗くくらいの時間はある。大曲には10:03着で、大曲からは10:28発のJR奥羽本線秋田行がある。やはり時間があるので、大曲駅周辺を散策する時間がある。秋田には11:20着である。

 秋田方面とは逆に盛岡方面に向かおうとすると、角館発15:17発の盛岡行まで列車がないので、自動的に角館散策となる(もちろん秋田新幹線を使えば別だが)。ちなみに、土曜日や一部の休日は角館12:13発の田沢湖行があるので、この列車がある日なら田沢湖散策も可能である。

 このように東北でJRの普通列車と私鉄の両方を利用する場合は、「東北ローカル線パス」が便利である。金土日か土日月の3日有効で6,000円、新幹線を除く東北地方のJR各線と、仙台市地下鉄と仙台空港アクセス線と津軽鉄道を除く東北地方の私鉄各線が乗り放題である。今年は11月26日までの発売である。


追記(2012.6.5):今年の「東北ローカル線パス」は、2月1日から4月14日(利用は2月3日から4月16日)までの期間発売されたのに続いて、東北の28エリアを博覧会場に見立てた「東北観光博」が2013年3月31日まで開催されているのに合わせて、5月31日から2013年1月26日までの長期間に亘って発売されることになった(利用は6月1日から2013年1月28日)。東北各地をローカル線でのんびり巡る旅にはうってつけである。

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2006年10月19日

東北のオススメスポットその7〜「東北最後の秘境(?)」秋田県北地方

58d9ca65.jpg 秋田と言えば…、と言って思い起こせるものはいろいろある。民謡「秋田音頭」に出てくるものだけでも、八森のハタハタ、男鹿のぶりこ(ハタハタの卵)、能代の春慶、檜山の納豆、大館の曲げわっぱがあるし、それ以外にもきりたんぽ、しょっつる、とんぶり、じゅんさい、比内地鶏といった料理・食材、角館の武家屋敷&枝垂桜、田沢湖、十和田湖、八幡平、鳥海山、といった観光スポット、竿燈まつり、土崎港曳山祭り、花輪ばやし、西馬音内盆踊り、飾山ばやし、なまはげ柴灯まつり、かまくら、紙風船上げといった個性的な祭りなど、様々な「秋田」がある。

 その中で忘れてはならないのが秋田杉である。秋田杉は青森ヒバ、木曽ヒノキと並んで、日本三大美林の一つとされている。

 その秋田杉であるが、確かに秋田県内にもあちこちに杉林はあるものの、そのほとんどは人工林である。秋田杉の天然林は、秋田杉が藩政時代から有名でどんどん切り出されたということで、県内を見渡しても今ではほとんど残っていない。

 その秋田杉の天然林が辛うじて残っているのが、秋田の県北地方なのである。前回取り上げた森吉山の山麓、桃洞渓谷と佐渡谷地にある秋田杉の天然林は「桃洞・佐渡のスギの原生林」として国の天然記念物に指定されている。他に、青森県との県境の矢立峠付近にも秋田杉の天然林が残っている。また、面積の94%が森林という上小阿仁村にある上大内沢自然観察教育林も、700本以上の天然の秋田杉で構成される林である。ここには古くから地域の御神木として崇められ、林野庁の「森の巨人達百選」にも選ばれた「コブ杉」がある。

 このような天然の秋田杉と人工林の秋田杉とでは、素人目に見ても違いが分かる。それはその大きさである。天然林の秋田杉は樹齢が平均でもおよそ250年に達しており、林齢が長くても80年の人工林とは、一本一本の杉の「存在感」がまるで違う

 そうした天然の秋田杉が見られるスポットの中で、今回は能代市の旧二ツ井町にある仁鮒水沢スギ植物群落保護林を紹介したい。ここには日本一高いと言われる杉の木があるのである。

 場所は旧二ツ井町の中心部から車で30分ほど南に下った山中である。面積18.46haの林の中に天然の秋田杉が2,812本あり、それらの樹齢は180年〜300年と言われている。その中に樹高58mの日本一高い杉があるのである。

 駐車場に車を止めて林に入っていくと、ちょっと行った所に「見学の皆様へのお願い」という立て札が立っている。それによると、杉の語源は『直ぐ』の木から来ているそうで、まっ直ぐ伸びるその性質は群生するほどに良く現れるそうである。ここには日本一高い杉の木以外にも50m級の天然秋田杉が林立しており、林としても日本一の杉林と言えるとあった。

 面白かったのは次の文言である。

「道路沿いなどによくある人工林とは段違いのスケールを誇る巨木林です。ただ目が慣れると感激が薄れてしまいますのでご注意ください」

 前半部分は分かる。確かに、一歩林の中に足を踏み入れると同時に、その杉の木々の存在感には圧倒される。これが杉の木の本来の姿なのか、という印象である。人工林の杉林とはまるで違う。太さもさることながら、何よりもその高さがすごい(写真参照)。しかし、後半部分には異議を申し立てたい。「ご注意ください」と言われてもどうすりゃいいんですか、という感じである(笑)。どこを向いてもめったに見られないような巨木が目に映るので、確かにそういうこともあるかもしれないが…。

 日本一高い天然杉までは、林の入り口から普通に歩くと20分くらいだろうか。日本一と言われるだけあって、確かに高いようだ。が、周りにも同じくらい高い杉の木があり、離れてはそれらの木に隠れて見えないし、逆にすぐそばでは木自身の葉や枝にさえぎられててっぺんまで見えない。案内板によれば、この木の高さは58メートルあって、これは15階建てのビルに相当するそうである。私の職場が15階にあるので、その高さと同じだと言うと確かにすごい。職場からは仙台平野が一望でき、太平洋が望めるのである。

 太さは164cmで林内一とのことだが、太さ自体に関して言えばこれを上回るような杉は全国あちこちにある。私が見た中では、屋久島の縄文杉がもちろんそうであるし、前回紹介した白山中居神社からさらに山の手に入ったところにあるいとしろ大杉もそうであった。なお、材積は40立方mあって、この木一本で建物面積53坪の木造住宅一戸が建てられるそうである。

 ちなみに、この「きみまち杉」と名づけられている「日本一の杉」、秋田営林局が平成7年から8年にかけて、国内各地の高いとされている杉を実測したところ、実際にはどれも50m程度であったため、晴れて日本一を宣言した、とのことであるが、現在でも他に「日本一」を主張する杉の木がある。愛知県にある鳳来寺山の傘杉や高知県にある杉の大杉(南大杉)などである。傘杉はきみまち杉を上回る59.27mとされている。また、杉の大杉も樹高60mとある。

 樹高を正確に測定するのは意外に難しいらしく、それゆえ「きみまち杉」を含めて日本一を称する杉が各地に存在しているわけであるが、仮にきみまち杉が日本一の高さでなかったとしても、他にも樹高50mを超える杉が多数存在して見る者を圧倒せずにはおかないこの林は、「団体戦」では間違いなく日本一だと言える。

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2006年10月05日

東北のオススメスポットその6〜「東北最後の秘境(?)」秋田県北地方

33e305c2.JPG 東北で「秘境」と言うと、どこだろうか。ちょっと考えて思いつくのは、以前紹介した東北の北端である下北半島、あるいはこれまた以前紹介した津軽半島であろうか。確かに、仙台を起点にして考えた場合、下北半島も津軽半島も東京に行くよりも、距離的にも時間的にも、さらには心理的にもはるかに遠い。

 しかし、これらの地は確かに本州の北端ということで、「最果ての地」というイメージはあるかもしれないが、実際には石川さゆりの歌う「津軽海峡冬景色」に登場する竜飛崎ライブカメラ)を抱える津軽半島、本州最北端の尻屋崎、日本三大霊場の恐山を抱える下北半島とも知名度は高く、訪れる人も多いので、必ずしも秘境ではない。

 ちなみに、私はここで「秘境」という言葉をこんな意味で使っている。行ってみる価値が大いにあるにもかかわらず、いまだにあまり知られていない場所あるいは地域、である。だから、極端な話、行ってみる価値がそれほどなさそうな場所であれば、それは今のまま人に知られなくても構わないのである。

 ちょっと前までは、秋田県と青森県の県境に広がる世界一のブナの森である世界遺産・白神山地は間違いなく「秘境」であった。しかし、世界遺産登録後、その知名度は格段に上がり、一躍東北屈指の観光スポットとなり、今では逆に手付かずの自然をいかに保全するかが大きな課題となっているほどである。

 さて、では東北の秘境はどこにあるかであるが、それは秋田県の県北地方にある、と私は言いたい。この地域には、もちろん手付かずの自然があり余るほどある。が、ただそれだけでなく、それらは見る人を魅了せずにはおかない魅力を持っているのである。にもかかわらず、あまりに知られていない。秋田県北地方と言えば十和田湖八幡平が代表的な観光地であり、それぞれ魅力的なエリアであるが(参照サイト)、それらは「秘境」ではない。

 秋田県北地方の中で、私が特にオススメなのは2つのエリアである。一つは北秋田市の旧森吉町・旧阿仁町の森吉山周辺、もう一つは能代市の旧二ツ井町にある仁鮒・水沢スギ植物保護林である。今回は前者を紹介したい。

 森吉山は標高1454mの独立峰で、山麓には白神山地と同様ブナの原生林など豊かな自然がそのまま残っている。6月から10月までは太平湖という人造湖に遊覧船が出るので、それに乗るのがオススメである。遊覧船の着いた先からは森吉山登山にも挑戦できるが、登山道に入らなくても「三階の滝」まで続いている小又峡の遊歩道は軽装で気軽に自然を満喫できる。小又峡を流れる水は驚くほどきれいで、また場所によって様々な表情を見せる。三階の滝は、この遊歩道の締め括りとしてはうってつけのスポットである。

 秋田県内には滝が多いが、ここ森吉山にはとりわけ多くの滝がある。つい10年ちょっと前にも地元のマタギの間に古くから「神々の滝」と言い伝えられてきたという「九階の滝」が実際に発見されて話題になった。他にも「桃洞(とうどう)の滝」など個性的な滝が多いので本格志向の方は十分な装備をした上でこうした滝を訪ね歩いてみるのもよい。

 冬は北側斜面の森吉スキー場と反対側の阿仁スキー場でスキーが楽しめる。雪質は地元の人が東北随一と自慢するだけあって、正真正銘のパウダースノーである。北側の森吉スキー場の方が雪質は良さそうだが、南側の阿仁スキー場は標高が高いので、大差はない。阿仁スキー場では樹氷も見られる。

 宿泊は森吉山の北側にある国民宿舎森吉山荘がオススメである。国道から延々1時間近く山の懐に入ったところにある「秘境の宿」だが、それだけに静かで自然に抱かれてのんびりできる。温泉もある。数年前に改築されてきれいになった。道も以前は車一台すれ違えるかどうかの狭い道だったが、最近は随分拡張されたので行きやすくなった。他に、温泉通であれば、その森吉山荘に温泉を供給している杣温泉(そまおんせん)がオススメである。また、大人数でわいわい泊まるのであれば、森吉山麓にある「妖精の森コテージラウル」がよい。森吉スキー場には森吉ヒュッテもある。

 南側の阿仁は「マタギの里」として知られる。こちらにも「安の滝(やすのたき)」という名瀑がある(写真参照)。日本三大名瀑に数えられる仙台の秋保(あきう)大滝のような、圧倒的な水量による迫力があるわけではないが、流れ落ちる水の軌跡が美しい、優しげな表情の滝である。こちら側であれば宿泊は、打当温泉(うっとうおんせん)がよい。少し前に新館「マタギの湯」もオープンした。近くの熊牧場も楽しい。人を見ると立ち上がって手を叩いて遠くから餌をせがむ、やけに人馴れしたツキノワグマたちの姿が愛らしい。

 打当温泉から先の林道をそのまま行くと、峠を越えて八幡平エリアにある、かの玉川温泉の手前に出る。阿仁・森吉エリアから八幡平エリアに出る最短ルート(距離的には)で私はよく使う道だが、ほとんど通る車はない。決して万人にオススメはしないが、林道マニアにはオススメの道である。


追記(2009.9.14):その後森吉スキー場は閉鎖されてしまった。残念である。阿仁スキー場は健在である。

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