猪苗代地ビール  

2014年07月15日

東北で地ビールが飲める店 番外編その28〜東北地ビール紀行第7回「福島県編」(「東北復興」紙への寄稿原稿)

 5月16日に発行された「東北復興第24号では、前回の山形に続いて、福島県内の地ビールを取り上げた。福島県内には現在、みちのく福島路ビールと猪苗代地ビールがあるが、このうちみちのく福島路ビールは、実は東京都内でも飲める。記事中でも紹介した「アウグスビール」、それに記事では触れなかったがビール好きには有名な両国の「ポパイ」で飲める「エクストラピルス」がそうである。


東北地ビール紀行その7 福島県編

吾妻連峰山麓にある地ビール
みちのく福島路ビールは吾妻連峰山麓にある 現在、福島県内には2つの地ビール醸造所がある。一つは、福島市にあるみちのく福島路ビール(以下福島路ビール、福島市荒井字横塚3-182、TEL024-593-5859)である。福島市の西部、吾妻連峰の山麓に「アンナガーデン」という、聖アンナ教会を中心とした個性豊かなショップが揃うスポットがあるが、この一角に福島路ビールの醸造所がある。
 
 ヨーロッパの麦芽を吾妻山の美味しい水で仕込んで醸造している福島路ビールは、ピルスナー、ヴァイツェン、デュンケル、レッドエール、それに福島県産米「ひとめぼれ」と県オリジナル酵母「うつくしま夢酵母」を使用した米麦酒(マイビール)、福島市特産の桃を使用したピーチエールの5種が定番で、それらに加えて最近では福島県内の果樹農家とタイアップして、「林檎のラガー」や「苺のラガー」なども手掛けている。
 
 醸造所に併設された売店で出来立てのビールが樽生で飲める他、同じ敷地内にある「セントヒルズ・ピッツァ」で樽生が、「イヴのもりカフェ」では瓶のビールが飲める。
 
 市街地からは離れるが、福島交通バスで行くことができる。福島駅東口から土湯温泉方面のバスに乗り(約30分)、自治研修センターで下車して徒歩約10分である。

猪苗代湖畔にある地ビール
猪苗代湖畔で飲める地ビール もう一つは、猪苗代町にある猪苗代地ビールである。全国で第4位の面積を誇る猪苗代湖は、標高514mという高所にあるため別名「天鏡湖」とも呼ばれる。その湖畔に「世界のガラス館」という、世界各国のガラス製品を展示・販売している施設があるが、その同じ敷地内に「猪苗代地ビール館」(福島県耶麻郡猪苗代町大字三ツ和字村東85、TEL0120-72-7472)という施設がある。ここでは、ドイツビールを範に、磐梯山の天然水とドイツの大麦・小麦麦芽、ホップを使用して醸造した猪苗代地ビールと、この地ビールに合うオリジナルソーセージなどの料理が楽しめる。
 
 この猪苗代地ビール館、国道49号線沿いなので車でなら行きやすいのだが、車で行くと飲めない。公共交通機関で行こうとすると、最寄駅は一応JR猪苗代駅である。ただ、駅からは歩いて行けるほど近い距離ではないので(4km弱である)、駅からは野口英世記念館方面行きのバスを利用することになる(野口英世記念館のほぼ向かいに世界のガラス館がある)。あまり本数がないので、バスの発車時刻に合うように駅に着くようにすることが重要である。なお、駅前にある塩田自転車店にはレンタサイクルもあるのでそれを利用する手もあるが、行きはともかく、帰りは押して帰ってこなければならない定めである。
 
 猪苗代地ビール、現在のラインナップは5種類で、ゴールデンエンジェル、ピルスナー、ヴァイツェン、ヴァイツェン・デュンケル(濃色のヴァイツェン)、ラオホ(燻製麦芽を使ったビール)である。このうち、ゴールデンエンジェルは、ピルスナーモルトとカラムンチモルトをブレンドした、赤みがかったすっきり味のビールで、猪苗代地ビールの看板とも言うべきオリジナルビールである。また、ヴァイツェン・デュンケルは、瓶での販売はしておらず、ここで飲める樽生のみの貴重な存在である。

 なお、猪苗代地ビール館は年中無休だが、観光シーズンなどは館内のビアレストランがツアー客で貸切になっていたりするので、事前に確認した方がよいかもしれない。ただ、貸切になっていた場合でも、建物の外にあるテラスで樽生ビールを買って飲むことができる。

東京で飲める福島路ビール
東京のアウグスビールは福島路ビールが醸造している なお、先に紹介した福島路ビール、実は東京都内でも飲める。六本木など都内に3店舗あるAUGUST BEER CLUB(アウグスビアクラブ、)ではオリジナルの「アウグスビール」が飲める。現在7種類ほどのビールがあるが、そのうち「アウグスビール・オリジナル」、そして「アウグスビール・マデューロ」は、実は福島路ビールが醸造しているビールなのである。アウグスビアクラブでは、様々なタイプのビールのプロデュースを行っているが、製造はすべて外部委託で、ビールのスタイルに合わせて、各地の地ビール醸造所に製造を委託しているのである。
 
 とりわけ「アウグスビール・オリジナル」はアウグスビアクラブの看板ビールとも言える存在であるが、その醸造を任されているのが福島路ビールということで、同クラブにおける福島路ビールの評価の高さが窺える。この「アウグスビール・オリジナル」、ピルスナータイプのビールなのだが、喉越しがよい割に、苦味が柔らかい。そして、ほのかに濁りがある。このビール、福島路ビールのラインナップにもない、まさにオリジナルのビールで、福島路ビール工場長の吉田氏に以前伺ったところ、ほんの少し小麦を使っているとのことであった(普通ピルスナータイプは大麦麦芽のみ使用)。その工夫が、このピルスナータイプのビールを、ピルスナーが好きな人にも、逆に苦味の強いピルスナーが苦手な人にも好まれる、稀有な存在にしたと言える。同クラブのサイトではクラブハウス以外で取り扱っている店についても紹介されている。ぜひ一度味わってみてほしいものである。

「東北魂ビール」が誕生
東北の3つの醸造所が共同でつくる「東北魂ビール」 もう一つ福島路ビールに関して特筆すべき動きがある。「東北魂ビール」の醸造である。これは福島路ビール、そして以前紹介した岩手のいわて蔵ビール、秋田のあくらビールが共同で醸造しているオリジナルビールである。
 
 地ビール醸造所同士が共同でビールをつくるというのは全国的に見ても珍しい。その背景には、「震災後の東北が復興を目指して頑張っていることを全国に伝えたい」という思いがあった。そして「品質のよいおいしいビールを醸造したい」との合言葉の下に、お互いの醸造技術、知識、経験を集めて一緒に一つのビールを創ることになったのである。
 
 本来、ビールの醸造に関する技術や知識、経験は、傍から見れば「企業秘密」にも当たるものだが、それらをあえてお互いに晒して、その上で共に向上していくために協力していくという姿勢が素晴らしいと思う。今年初めに登場した第一弾の「アップルジンジャーIPA」は、どこのビールにも似ていない出色の出来であった。現在、第二弾を醸造中で、5月末から東北内外のビアバーで飲める他、今回から瓶でも販売されるそうである。こちらもぜひ味わっていただいて、東北の「魂」を感じていただきたいと思う。


anagma5 at 20:47|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!

2008年12月10日

東北で地ビールが飲める店その39〜福島県須賀川市

275d65a0.jpg 福島県の須賀川市は中通り南部の中心都市郡山市の南にある人口約8万人の市である。福島空港を抱えている市であり、また福島県内随一の規模を誇る釈迦堂川全国花火大会や日本三大火祭りの一つ、松明あかし松明あかし(たいまつあかし)でも知られている。

 この須賀川市で地ビールの飲める店を探してみたところ、なかなか見つけられなかったが、最後にようやく一軒「もつ鍋・海鮮もつ源」を見つけた。ここには猪苗代地ビールの樽生があった。猪苗代地ビールの樽生は、猪苗代地ビール館でなければ飲めないと思っていたので(別のところに書いたが最近JR郡山駅構内にある蔵元直販 地酒の森でも飲めるようになった)、これは貴重である。ピルスナーのみだが、間違いなく猪苗代地ビールが味わえる。

 この店、看板メニューの「もつ鍋」がおいしい。生産者から直接仕入れ、生のまま冷凍した山形産牛のもつ(小腸・直腸)と北海道産和牛のもつ(丸腸)に地元産の野菜を組み合わせた鍋物で、しょうゆ、塩、辛味噌のいずれかの味付けで食べることができる。会津直送の桜もつ鍋もある。いわゆる普通の「もつ煮込み」とは趣が違っている。

 本店は郡山市にあるチェーン店だったのだが、もつ鍋のおいしさと共に特筆すべきは、従業員の接遇である。アルバイトと思しき若い店員も含めてどの店員も、立ち居振る舞い、注文を取る際の姿勢、言葉遣い、電話応対、どれをとっても完璧であった。並の居酒屋チェーンとは一線を画している。店側の教育が行き届いているのだろう。店内は大いに賑わっていたが、それは料理のおいしさとともに、こうした接客のよさも功を奏しているのではないかと思った。

 郡山の本店の存在は、場所が郊外であることもあって今まで知らなかったが、ここで猪苗代ビールが飲めるということは、郡山本店でも飲めるということだろうから、郡山市内に地ビールの飲める店がさらにもう一店舗あったことになるわけである。

 いずれにしても、結局ここ以外には地ビールが飲める店は見つけられなかった。須賀川市内で唯一と思われる地ビールの飲める店は、おいしいもつ鍋と一緒に地ビールが味わえる店であった。


追記(2011.3.7):このもつ源、仙台駅近くに仙台駅前中央店ができた(仙台市青葉区中央3-5-1T&Iビル3F、TEL022-722-8851)。もちろん、猪苗代地ビールも飲める。仙台市内で猪苗代地ビールが飲める店は恐らくここだけである。しかも、2時間飲み放題(男性1,500円、女性1,200円)のドリンクの中にこの猪苗代地ビールも含まれるというのも嬉しいポイントである。

 他に、郡山駅前にも新店舗がオープンしたようである(郡山市中町12-2ホテルプリシード郡山B1F、TEL 024-925-014)。郡山駅前にも地ビールが飲める店が一店舗増えたことになる。


追記(2012.7.28):なんと、上記「もつ源 須賀川店」は「こだわりやま 須賀川店」に変わってしまったそうである。しかも、それだけならまだしも、あろうことかせっかくの猪苗代地ビールもなくなってしまったとか。残念である。

 代わりに(?)、 「はなの舞 須賀川店」には御殿場高原ビールがあるようなので、当面、須賀川市内で地ビールが飲めるところはここだけということのようである。


追記(2019.2.28):「diner&bar BUZZ(ダイナーアンドバー バズ)」に市内で唯一タップマルシェが入ったそうで、クラフトビールが4種類飲める。


anagma5 at 23:18|PermalinkComments(0)clip!

2008年05月02日

東北で地ビールが飲める店 番外編その5〜第5回東北地ビールフェスティバルin福島

ea9e088c.jpg 明日5月3日から5日まで、「第5回東北地ビールフェスティバルin福島」がJR福島駅前のまちなか広場にて各日とも11:00〜17:00の予定で開催される。

 同フェスティバルは毎年、7月中旬の海の日を含む三連休期間に岩手の小岩井農場を会場に行われてきたが、今回は日程、開催場所とも変更しての開催である。

 東北各地の地ビール醸造所から、今年は青森の八戸シャトービール(合同酒精株式会社)、岩手の銀河高原ビール(東日本沢内総合開発株式会社、5月3日のみ出店)、遠野麦酒ZUMONA(上閉伊酒造株式会社)、宮城の奥州仙台伊達政宗麦酒(長沼環境開発株式会社)、鳥の海ブルワリー(株式会社宮城マイクロブルワリー)、山形の地ビール月山(西川町総合開発株式会社)、福島のみちのく福島路ビール(有限会社福島路ビール)、猪苗代地ビール(親正産業株式会社)が出店する予定となっている。東北各地の地ビールの飲み比べができる機会は少ない。その意味で、東北のビール好きにとって嬉しい、とても貴重なイベントである。

 今回のフェスティバルで特筆すべきは、上記の地ビールに加えて、少量の限定販売ながら、以前醸造を取り止めたことを伝えた会津麦酒写真参照)も会場で販売されることである。恐らく、会津麦酒を飲める最後の機会となるのではないだろうか。

 そう言えば、今回の福島での開催には、会津麦酒のジョン・シュルツ氏の協力があったと、会津若松の「くいしん坊」のおかみさんが言っていた。シュルツ氏が会場を訪れるかどうかは分からないが、なくなる前にもう一度会津麦酒を、という向きは、早めに来場することをオススメしたい。


追記(2008.5.6):毎日新聞の地域版に、今回の東北地ビールフェスティバルの模様が報じられていた(該当サイト)。「“幻のビール”に注文殺到」との見出しで、会津麦酒の最後の樽に注文が殺到したと書かれている。

anagma5 at 21:57|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!