自転車通勤  

2011年07月21日

私的東北論その27〜自転車活用のススメ

110424-132041 前回前々回と自転車のメリットについてつらつら書いたが、自転車とて万能ではない。ちょっと考えてみただけで、いろいろなリスクを思いつく。例えば、パンク雨・雪などの悪天候夜間交通事故盗難などである。これらへの対策についても考えてみたい。

 まず、パンクについては、ほぼ解決できると思う。パンクの大部分は前回紹介したように空気圧の低下したタイヤで段差などを越えた時に起こる。だから、定期的に空気圧をチェックし、適正空気圧を維持していれば、パンクのリスクは相当程度解決できる。

 とは言え、道路に落ちている鋭利なものを踏んでしまったことによるパンクもある。自転車の走る道路の端にはなぜかガラスの破片やら釘やら金属片やらがよく落ちている。運悪くそれを踏んでしまうと空気圧が適正でもやはりパンクしてしまうことはある。それを解決するにはパンクに強いタイヤを使用することが有効だと思う。技術革新が進んで、一頃とは比べ物にならないくらい、耐パンク性能で優れたタイヤが出てきている。

 自転車乗りの間でパンクに対して「最強」と絶大な信頼を得ているのは、シュワルベマラソンというタイヤである。このタイヤ、耐パンク性能は驚異的だそうである。1分1秒を争うレースならともかく普段の使用であれば、パンクをすればするほど時間をロスしているわけであるから、パンクしにくいタイヤを使った方が長い目で見ればトータルの移動時間は少なくて済む。世界一周をしている人も愛用しているようである(参照サイト)。

 ただ、このシュワルベのマラソン、普段使うにはあまりにも重い、と私は感じる。700×25Cというロードバイクにつけるサイズのタイヤで何と500gもある。ちなみに、レース用の高級タイヤの代表例と言えるミシュランのPRO3 Raceの同じサイズの重さは215gである。通常、車輪外周部の軽量化は、わずか50gの減少でも車体全体で1kg軽量化させたのと体感的には同等とも言われるので、それを考えると500gのタイヤは重さも「最強」である(笑)。なので、私はパナレーサーリブモPTを愛用している(参照PDF)。これなら同じサイズの重さは330gである。パンクのリスクを考えた場合、これくらいならガマンできる。このタイヤも同社の従来品と比較すると、貫通パンクのしにくさは100倍になっているそうである。実際、私は震災後、道路の至る所に瓦礫が散乱していた仙台市若林区荒浜地区にこのタイヤを履いた自転車で何度も出掛けたが、一度たりともパンクすることはなかった。他に、最近ミシュランから出たパンクの自己修復機能を持ったチューブもある(参照サイト)。まだ適用サイズが多くないが、要注目である。

 雨や雪については、確固たる解決策は私はまだ持っていない。と言うか、雨や雪の日は自転車に乗らないのが最良である(笑)。私は、雨の日は自転車に乗らずに公共交通機関を使うようにしているが、もし帰りに雨が降ったらレインウェアを着て、低速で走るようにしている。タイヤのグリップ力が格段に落ちるからである、という理由の他に、私の自転車には泥除けがついていないので、自分や周囲に泥ハネが飛ぶのを避けるという理由もある。経験から言えば、濡れた路面なら時速15km/h以下、水たまりなどは時速10km以下まで速度を落とすと泥ハネはほとんど飛ばない。

 このレインウェアであるが、ゴアテックスでできたものが雨を通さず汗は発散させて快適らしいが、高いしかさばるので、私はポンチョを使用している。ポンチョはバックパックごとかぶれるし、蒸れないので重宝しているが、体に密着せず風になびくので高速走行には向かない(前述のとおり雨の日はゆっくりしか走らないので支障はない)。レインコートやポンチョを着るのが煩わしいという人は、屋根付き自転車という手もある(笑)(参照サイト)。

 雪の日は雨の日以上に危険なので乗らない。どうしてもということであれば、自転車用のタイヤチェーンやスパイクタイヤもあるようであるが(参照サイト)、使ってみたことはないので、実際にどの程度有効なのかは分からない。雨、雪、いずれの場合も、とにかく傘さし運転はもっての外である。

 夜間については、自動車から身を守るためにも、とにかく目立つことが大事である。その意味では、無灯火の自転車に乗るのは、私から見ると間違いなく自殺行為である。ダイナモで走りが重くなるのが嫌でライトをつけないで走っている人もいるようだが、それならばハブダイナモを内蔵したホイールを使うという手がある(参照サイト)。こういうのも1万円の自転車にはもちろんついていない。乾電池式のライトを使う手だってある。電池代が掛かるのがイヤだというのなら、エネループなどの充電池を使うのが経済的である。乾電池式のフロントライトには点滅が可能なものもあり、恐らく電池の消耗を避けるためなのであろう、点滅状態で走っている自転車も見掛けるが、自動車に対して存在を知らせるという意味はあっても、路面を照らすという点ではまったく意味をなさないので、必ず点灯とすべきである。

 前照灯に関しては、各都道府県の公安委員会が定めることになっているが、例えば東京都では「白色又は淡黄色で、夜間、前方10メートルの距離にある交通上の障害物を確認することができる光度を有する前照灯」となっており、他の県も概ね同様のようであるので、この基準を満たすフロントライトが必要である。

 フロントライトはもちろんであるが、できればリアライトも装備しておきたい。リアライトについては、「赤色(他の道府県は橙色又は赤色)で、夜間、後方100メートルの距離から点灯を確認することができる光度を有する尾灯」となっているが、「夜間、後方100mの距離から、基準に適合する前照灯で照射したとき、その照射光を照射位置から容易に確認でき」て、「反射光の色は、橙色又は赤色である」ような反射器材を備え付けていればリアライトはなくてもよいとされている。ただ、やはりリアライトもつけておくに越したことはないと思う。ライトが当たって初めて光る反射板と、ライトが当たらなくても光っているリアライト、どちらが安全かは言うまでもないことである。

 これも凝り出すと深みにハマるパーツなのだが(笑)、私は、前照灯はステムにつけられ(つけられるのはたいていハンドルバーでステムにつけられるライトは現状ほとんどない)、かつものすごく明るいSupernovaというドイツのメーカーのAirstreamという、充電式のいわゆるバッテリーライト(乾電池式と違って大電流が得やすく明るいが高価である)、リアライトはWiiリモコンと同じ加速度センサーを内蔵し、自転車の動きを感知してブレーキング時にもライトが点灯するSungoという台湾のメーカーのMaxxon MX-050というリアライトを使用している。

 交通事故については、私は自動車の動向を把握しやすいようにバックミラーを付けている。もちろん、バックミラーだけに頼るのではなく、絶えず周囲の状況に目を配ることが必要である。それからいつも荷物がいっぱいのバックパックを背負っているが、それがいざという時には背中の保護にも少しは役立つかもしれない(笑)。頭部にはもちろんヘルメットである。高校の頃から、日本人の頭の形に合わせて作っているという、OGKのヘルメットをかぶっている。基準(JCF(財)日本自転車競技連盟公認など)をクリアしているとは言え、通気性や軽量さを重視した、周りに自転車しか走っていない自転車レース用のヘルメットが、公道での事故発生時にどれくらい役に立つのか疑問が残るが、ないよりはいいに違いないということで必ず着用している(が、ヘルメットの着用については賛否両論があるようである)。

 ヘルメットの安全基準ということについて言えば、世界で最も厳しいスネル規格を満たしたヘルメットであればより安心かもしれない。スネル規格の認証を得たヘルメットはスネル財団サイト(英語)で検索できる。規格は何年かに一度改訂され、改訂されるたびに基準が厳しくなっているが、自転車用ヘルメットの最新の基準はB95A、B95Cである(B95Cは子供用)。国産では私がかぶっているOGKのものも含め、フルフェイスタイプのものを除いてほとんどスネル規格をクリアしたヘルメットはないが、海外のものではクリアしているものがいくつもある。日本で手に入りやすいものという点で考えてみると、例えばスペシャライズドS-Worksなどがそうである(ただし、B95Aの前の基準のB90Aの認証である)。

 また、自転車の場合、対自動車で被害者になるというケースの他に、歩行者などを相手に加害者側になってしまう可能性もある。歩道を我が物顔で走るのは論外(自転車は原則車道左端走行である)であるが、交通規則を守っていたとしても、いつ何時事故に遭遇するかは分からない。そのリスクを考えて、自動車同様保険加入も考えた方がよいと思う。私は日本サイクリング協会(JCA)の賛助会員になると自動的についてくる「JCA自転車総合保険」に加入している。

 盗難については堅牢な鍵の使用が必須である。毎日の通勤・通学に耐えうる快適さと丈夫さを持った自転車を買おうと思ったら5万円台以上の自転車がおススメだと前回書いたが、その自転車が盗難に遭ったとすれば経済的・精神的ダメージは大きい。自転車の価格が高くなればなるほど、鍵にもお金をかけるべきである。例えば、信頼性で言うなら、多関節ロック参照サイト)やU字ロック太さが15mm以上のワイヤーロックなどを複数組み合わせるのが理想である。耐切断性が高くなるほど重くなり価格も高くなるので、どの辺で折り合いをつけるかは乗っている自転車や財布と相談である(笑)。

 駐輪するときには、何かに括り付けるようにすること(「地球ロック」と言うらしい)も重要である。そうでないと、鍵のついたまま車などに積んで運び去られてしまうかもしれない。それと、前輪と本体を結びつけておくことも必要である。でないと前輪だけ盗まれる、あるいは鉄柱などにくくりつけた前輪だけ残して本体が盗まれることがありうる。それから、駐輪中は、自転車についているスピードメーターやライトやバッグなどはできるだけ外すのも大事である。サドルは高さ調節がしやすいようにクイックリリース式になっていることが多いが、これだとサドルだけ盗まれて「立ち漕ぎ専用自転車」となってしまうこともある。一流選手ともなるとサドルの高さの数mmの違いでパフォーマンスが変わるということだが、私を含めて普段そう頻繁にサドルの高さは変えないはずなので、サドルはネジ式の方がよいと思う。

 昨今、自転車に乗る人が増えてきたのは喜ばしいことなのであるが、交通マナーが行き届いてない場面にもよく遭遇する。自転車に乗るなら絶対にやめてほしいと思うのは、  
 1.右側通行
 2.夜間無灯火
 3.雨天時の傘差し運転
 4.携帯電話を操作しながらの走行
 5.歩道の通行
 6.並列走行

などである。これらが複数組み合わさっているケースもある。夜間、無灯火で道路の右側を走っている自転車などは命知らずの極みである。雨天時に傘を差しながら歩道を激走する自転車も危ないことこの上ない。もし歩道沿いの店や家などから歩行者が突然出てきたり、前方を歩いている歩行者が急に方向転換したりしたらどう対処するのだろうか(繰り返すが自転車は車道走行が原則である)。イヤホンで音楽を聞きながらの走行も賛成しない。自転車走行時に耳から入ってくる情報をあえてスポイルしてまで音楽を聞く必要はない、と個人的には思っている。

 要は、自転車の可能性がよく理解されていないということと表裏一体だと思うのだが、自転車がともすれば凶器ともなりうるということが、街中を自転車で走っている人の間でまだ十分認識されていないということなのだろう。自転車も車両の一つであり(「軽車両」という区分である)、乗るには交通法規を遵守することが求められるということを肝に銘じておく必要がありそうである。そうでないと、ゆくゆく自転車に乗るにも免許や講習が必要となったりするかもしれない。人力を最も効率よく活用できる自転車が、人にとって最も身近な乗り物であり続けるために、乗る人の姿勢が問われていると思う。

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2011年06月25日

私的東北論その25〜自転車活用のススメ

自転車快適性 前回、「自転車の可能性」などと大きいことを書いたが、「自転車」と言っても、いろいろな自転車がある。私の頭の中で「自転車」と言って思い浮かぶのは自分がこれまで乗ってきた、高校の時に買ってもらった通学用のドロップハンドルの自転車、大学の時にバイトで貯めたお金で買ったマウンテンバイク、そして昨年買い換えて乗っているクロスバイクといった自転車だが、他の人にとっては自転車と言えばいわゆる「ママチャリ」かもしれない。10万円単位のロードバイクを思い浮かべる人もいれば、量販店で1万円未満で買える自転車を思い浮かべる人もいるかもしれない。

 いろいろと異論はあるだろうが、乗って満足のいく自転車、走って楽しい自転車というものを考えた場合、少なくともそれは量販店などで1万円前後で買える自転車のことではない。近距離しか乗らない、とにかく走ればいい、ということならそれでもいいのだろうが、「自転車の可能性」という点では、それらは自転車というツールのごく最低限のスペックしか満たしてはいない。

 価格ですべてが決まるわけではないが、とは言え、車体(フレーム)や部品(パーツ)の強度・精度・重量・耐久性といった要素はすべて価格に反映される。安いものには安いだけの理由があるのである。前回紹介したような極めて非力な人力をより効率よく使うためには、車体は軽い方が有利だが、軽くてしかも耐久性も兼ね備えた自転車は、当然それ相応の価格になる。

 もちろん上を見ればキリがない世界である。「上」の世界になるとカーボンファイバーやチタニウム合金をふんだんに使用して数10グラム単位の積み重ねで軽量化を図っていったような自転車もあるが、そうした自転車はそれこそ数十万円単位の世界である。自分の限界に挑戦するようなアスリートならともかく、私も含めて自転車を楽しんで乗るのが目的の人にそこまでのスペックは必要ないと思う。

 ならば、その辺りのラインをどこに置くかということになる。それについても、様々な意見はあるだろうが、私は5万円前後が一つのラインだと感じている。5万円を超える自転車であれば、乗ってみて自転車のスペックという点でそうそう不満が出ることはないと思う。

 思うに、自転車の価格と快適性(楽に速く走れる)の関係は、対数曲線のようになるのではないだろうか(参照)。つまり、ある程度の価格までは、快適性がかけた金額以上の割合で急上昇していくが、ある程度の価格以上になるとその伸びは小さくなる、すなわち費用対効果が小さくなっていく、というようなイメージである。1万円の自転車と5万円の自転車では明らかに乗った感じが違う。5万円の自転車と10万円の自転車でも乗った感じは違うが、その差は1万円の自転車と5万円の自転車の違いよりも小さい、10万円の自転車と20万円の自転車ではその違いはもっと小さい、という感じである。

 あとは、自転車の可能性ということで言えば、街中を走る自転車を見てよく感じるのが、サドルの位置が低すぎる自転車が多いということである。サドルに腰を下ろした時に両足がしっかり着かないと不安という声もある。しかし、いくつかのセッティング方法はあるが、効率よくペダルを回すのに最適なサドルの高さにしようとすると、いずれの方法でもだいたい両足のつま先が辛うじて地面に着くか着かないかくらいになる。その高さよりもサドルが低いと膝が伸びないので十分に脚の力が活かされないし、膝関節に必要以上に負担がかかりそうである。そこまでの高さではやはり怖いということならば、せめて今の高さより5cmだけでもサドルの位置を高くしてみてほしいと思う。それだけで乗りやすさははっきり分かるくらい違ってくるはずである。

 タイヤの空気圧も低すぎることが多い。前に空気を入れたのはいつ?というような自転車もある。空気を入れると段差などで乗り心地が悪くなるという声も聞くが、空気圧が低いと転がり抵抗が増えて走りは重くなるし、リム打ちパンク(段差とリムの間にチューブが挟まれることによって起こるパンク)の危険性も高まる。タイヤには適正空気圧の表示があるので、その範囲の空気圧を維持することはエネルギー効率の点からも重要なことである。

 いきなり自転車に5万円以上もかけたくないということでも、サドルを今までより高くして、タイヤに空気を入れる、それだけで今までとはまったく違う走りになる自転車も多いはずである。それこそ、自転車の可能性を引き出す第一歩であると思う。

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2011年06月20日

私的東北論その24〜自転車活用のススメ

gr_enagy 「仙台市震災復興ビジョン」が5月末に公表された。その中で、「地域内交通」においては、今回の震災で自転車の利用が増えたことを踏まえて、「環境負荷の少ない公共交通ネットワークの利用促進を図るとともに、それらを補完する機能を有する自転車の利用促進に努めます」とある。

 実際、未曽有の大地震の影響でJRや地下鉄などの復旧に時間がかかる一方、ガソリン不足などもあったため、仙台市内でも通勤・通学に自転車を利用する人が増えた。震災後しばらくは街中を走っていても普段よりずいぶん多い数の自転車を見かけた。事実、自転車店では自転車が平常時よりずいぶん売れたらしい。これで少しでも多くの人が自転車のよさに気づいてくれれば、と思ったものだが、公共交通機関の復旧と共に、見かける自転車の台数がみるみる減っていったのは残念なことであった。でも、せっかく乗った自転車、災害発生時のみならず普段からの活用を考えてみてはどうかと思う。

 確かに、今回のような災害発生時に有効な乗り物は何か、ということを考えた場合、自転車は有力候補の最右翼に位置すると思う。私の体験から言ってもそう感じた。私は元々普段から大抵の場合どこへ行くのも自転車だったが、お陰で地震発生当日はもちろん、その後公共交通機関の運休やガソリンの供給不足の影響もほとんど受けず、行動範囲が制約されずに済んだ。首都圏では地震発生当日、JRや私鉄各線、地下鉄は軒並みストップ、道路では激しい渋滞が起きて車はほとんど動けず、多くの人が徒歩で家路についたそうである。こんな時自転車があったら、歩くよりも車よりも早く家に辿り着けたのではないだろうか。と思ってちょっとネットで検索してみるとやはりそうだったようである(たとえば、これこれこれこれこれなど)。「ママチャリ」に代表される、近所への身近な足として認識されている自転車であるが、実は大きな可能性を持った乗り物である。その辺りのことを以下に書き連ねてみたいと思う。

 自転車の優位性を説明する際によく引き合いに出される話だが、そもそも自転車は、そのエネルギー効率が半端でなく優れている。自転車に乗った人間のエネルギー効率は、すべての生物や乗り物(ただし動力なしで滑空するグライダーや宇宙空間を慣性で進むロケットなどを除く)を上回るのである(写真参照サイト)。

 徒歩の人間のエネルギー効率は0.75cal/g/km(1gのものを1km移動させるのに必要なエネルギー)で、自動車の0.8cal/g/kmよりは効率がよいが、馬の0.7cal/g/kmには劣る。参照サイト中にはないが、圧倒的にエネルギー効率のよい鮭は0.4cal/g/kmである(全生物中最高のエネルギー効率を誇るのはカジキやマグロだと思われるがそれらのエネルギー効率は分からなかった)。これに対して自転車に乗った人間のエネルギー効率は、この鮭すら上回る0.15cal/g/kmである。すなわち、鮭の3倍近く、徒歩の人間よりも5倍もエネルギー効率がいい。だから、同じ人力でも自転車は、歩いたり走ったりするよりも楽に遠くに行けるわけである。

 エネルギー効率がよいということは、エネルギーを無駄遣いしないで済むということである。例えば私が自分の自転車で時速30kmで巡航している時の出力は、このサイトでの計算によれば、だいたい112Wほどである。仮にこの倍の出力を出しても速度は倍にはならない。空気抵抗が速度の2乗に比例して大きくなるからである。このサイトでの計算によると、倍の出力でだいたい40km/hを少し超えるくらいであるが、短時間であればこのくらいまでなら出せると思う。このくらいの速度になると、何と出力のうちの80%以上が空気抵抗を打ち消すため(だけ)に使われている。1馬力=約735.5Wなので、そうすると私の出力は平均約0.15馬力、最大出力でも0.3馬力程度である。自動車やモーターバイクから見れば微々たる出力だが、それでもそこそこの速さ(30〜40km/h)で走れるのはすごいことだと思う。

 ちなみに、50CC以下の原動機付自転車は最大7.2馬力くらいのエンジンを積み、リミッターを外した時の最高時速で90km/hくらい出せるものがあるそうである。一方、これまで記録された単独走行の自転車の最高時速は、驚くなかれ132.5km/hである(参照サイト)。この記録を達成したサム・ウィッティンガムさんはもちろん普通の人よりも体力はあるのだろうが、それでも1馬力は超えていないはずである。世界最高峰の自転車レース、ツール・ド・フランスを走破する選手が個人タイムトライアル(すなわち集団で走るのではなく空気抵抗をすべて自分で受けての単独走行である)で平均して出していた出力でも379W=約0.52馬力だそうである(参照サイト)。132.5km/hを記録した自転車はカウリングなどで車体を覆って空気抵抗を徹底的に少なくしているので単純な比較はできないが、それでも0.5馬力程度で100km/h以上出せるということは言えるわけで、それだけ自転車のエネルギー効率はよいのである。

 自転車は二酸化炭素排出抑制にも効果がある。例えば、普通の人なら自転車で5kmくらいは走れるだろう。一方、自動車通勤をしている人の64.2%は通勤距離が5km未満とのことである(参照PDF)。これらの人が自転車通勤に切り替えたと仮定してみる。日本の労働者数は平成22年の平均で約6,581万人であり(参照サイト)、51.5%の人が自動車通勤だそうである(参照サイト)。そのうちの64.2%だから自転車通勤に切り替える人の数は約2,176万人である。自動車が往復10km走って排出する二酸化炭素の量は、10kmでガソリンを1リットル消費するとすれば約2.3kgである(参照サイト)。2,176万人が年間245日出勤するとして、そのトータルの排出量は12,261,760tである。日本が年間に排出する二酸化炭素の量は2009年度で1,145,000,000t(参照サイト)なので、その1%強を通勤距離5km未満の人が自転車通勤に切り替えるだけで削減できることになる。

 自転車に切り替えたら、乗った人の呼吸数が上がって、人が呼吸で排出する二酸化炭素は増えるのではないかという気もするが、議定書における各国の二酸化炭素の排出量の計算では人などの生物が吐き出す二酸化炭素はカウントしないらしい(笑)。まあ、それを加えたとて自動車が排出する量に比べれば自転車通勤で増加する分などは微々たるものだろうが。もちろん、人は二酸化炭素以外の窒素酸化物などの有害物質も出さないし。

 …と、思ったが、フェアではないので一応計算してみた(ヒマ人である;笑)。成人1人による呼気中の二酸化炭素濃度は、安静時で1.32%、極軽作業時で1.32〜2.42%、軽作業時で2.42〜3.52%、中等作業時で3.52〜5.72%、重作業時で5.72〜9.02%とされているそうである。自動車通勤を極軽作業で約2%とし、自転車通勤を中等作業で約5%とする。自動車運転時の呼吸数を16回で1回の換気量を0.2リットル、自転車乗車時の呼吸数を倍の32回で1回の換気量を0.4リットルとすると自動車運転時の1分間の二酸化炭素呼気量は0.064リットル、自転車乗車時は0.64リットルでほぼ10倍である。往復10kmの自転車通勤に要する時間を最大で1時間とすると、通勤時の人の二酸化炭素排出量は自動車通勤で3.84リットル、自転車通勤で38.4リットルである。二酸化炭素の比重量は気温30度で1.78 kg/m3なので、1日自動車通勤では0.007kg、自転車通勤では0.068kgのCO2を排出しているので、自転車通勤に切り替えたことで増える二酸化炭素は1人1日当たり0.061kgである。これに先程の出勤日数と人数を当てはめてみると、年間増える量は324,755tで、自動車通勤時に排出されていた二酸化炭素の約2.7%程度である。

 運動すると健康にもいいと言われる。特に、自転車で走る運動のような有酸素運動は呼吸循環系の発達や皮下脂肪の減少に効果があるとはよく言われることである。そのせいかどうか知らないが、高校の頃からずっと通勤・通学に自転車を使っている私は、人一倍飲み食いが好きな割に、いまだ高校の頃の体重のままである。太れない体質というわけではない。本来、食べれば食べるだけ太る(笑)。中学の頃はまさにちょっと太めで運動が苦手だった。高校に入って自転車に乗り始めたら、3年の頃には1500m走で陸上部の選手とも対等に渡り合えるようになっていた。去年初めて自分の肺活量を測ってみる機会があったが、同年代男子の平均値の約2倍の7950ccだった。これなら万が一何かのアクシデントで肺が片方なくなっても普通の人並には生活できる、のか?(笑)

 念のために書いておくと、私はこれまで自転車レースの類にはほとんど出ていない。昨年初めて行われた「日本の蔵王ヒルクライム・エコ」が、生まれて初めて出た自転車レースである(今年は震災の影響で残念ながら中止となった)。それ以外は学生の頃、長い休みに1週間くらい自転車で旅行したことがあるだけで、あとは毎日の自転車通学・通勤だけである(たまに寄り道してちょっと距離が伸びることはあるが)。それでもこうなのだから、そんな自分の経験から言っても、運動不足解消や体力づくりに自転車はうってつけだと感じる。

 あれこれ書いてきたが、我が身を振り返ってみると、結局のところ、別にエネルギー効率がいいからとか、二酸化炭素の排出量が少ないからとか、運動になるからといった理由で自転車に乗っているわけではない。結局のところ、自転車に乗るのが好きで、乗るのが楽しいから乗っているだけである。ロードバイクのようなとにかく速く走るために作られた自転車に乗った人は、「え?これが自転車の走り?」と思うに違いない。まるで翼でも得たかのような感覚を味わうと思う。少なくとも高校に入学して買ってもらった自転車(ロードバイクではなかったが十分に速く走れた)に乗った私はそう感じたし、それが楽しくてそれ以来ずっと乗り続けているというようなわけである。

 ただ、運動を継続するという意味からは毎日乗るのがもちろんよいのだろうが、普通、どんなに自転車が好きでも、ほっといたら毎日は乗らないと思う。続けるためには毎日乗る「仕組み」が必要である。そのためにはやはり毎日の行動と関連付けるとよい。つまり通勤・通学に自転車を使うというのが、運動の継続という点ではベストだと思う。私が毎日自転車に乗っているのは、自転車で出勤しているからである(雨の日を除く)。それがなかったらいかに自転車が好きでも毎日は乗らないと思う。

 ということで、いざ災害発生時に慌てないためにも、普段から自転車での通勤・通学、これをおススメしたいと思う。

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2006年11月11日

東北のオススメスポット番外編〜自転車が充実しているカー用品店

ef19ac13.jpg 秋田市内の新国道と呼ばれる通り沿いにダイリンというカー用品店がある(秋田市八橋新川向13-30、TEL018-824-6601)。たまに大手チェーン店にないようなカー用品があったりして面白いのだが、この店の本当の面白さはそんなところにあるのではない。この店の2階は実は自転車売り場なのだが、この自転車売り場が何と言うかすごいのである。品揃えが極めて豊富と言うべきなのだろうが、どうも普通の自転車量販店とは品揃えの豊富さの方向性が違うのである。

 私は、以前にちょっと書いたが、けっこう自転車好きである。きっかけはと振り返ってみると、高校の入学祝いに両親に自転車を買ってもらったことである。当時通学に自転車を使っていた高校生の恐らく過半数は乗っていたであろうと思われるのがブリヂストンのロードマンというドロップハンドル、12段変速の自転車である。

 この、車で言うとトヨタカローラに当たるのではないかと思われるロードマンのちょっと上のランクであったロードマン・スーパーコルモというのを買ってもらって、それで毎日自転車で走っているうちに自転車でどっか行くのが楽しくなったという筋書きなのだが、自転車に乗るのが楽しくなると、自転車自体をあちこちいじってみたくなる。いじってより速く、より快適に走れるようにしたくなるのである。私が高校の頃だから、今からかなり昔のことである。

 なぜそんな昔の話をしたかと言うと、このダイリンには私がその頃我が愛車につけたり、つけてみたかったりした自転車パーツが展示物として、あるいは売り物として所狭しと展示されているのである。こんな店は東北に数多くある自転車店の中にすら、恐らく一店舗たりともないだろう。自転車好き(しかもある一定の年齢層以上の)以外には分からないと思われるが、私も愛用していたシマノ600EX(現在のULTEGRA)のコンポーネントだとか、これまたこだわってつけていたダイヤコンペのセンタープルブレーキだとかが、いまだに売っているのである。今ほとんど見かけなくなった一枚皮のサドルも売るほどある(と言うか売っているのだが;笑)。いったい誰が買うのだろうと思ってしまうほどレトロでマニアックである。

 ただ、ここに有り余るほどあるパーツを使えば、これまた今やクロスバイクやマウンテンバイクに取って代わられてほとんど死語と化してしまったスポルティーフとかランドナーとかいった車種も組み上げられると思う。それはそれは貴重な店なのである。

 パーツのことばかり書いてしまったが、完成車の品揃えもすごい。私が子供の頃の自転車の乗り換えのパターンというのは、最初は補助輪付の自転車、次にそれを外して乗り、それが小さくなったら5段変速でツインのライトとかウインカーとかいろいろとついた黒塗りのジュニアスポーツ車、そしてもっと大きくなったら12段変速のドロップハンドルのロードマン、というパターンだったと思うが、ダイリンには今ではあまり見かけなくなった黒塗りのジュニアスポーツ車がこれまた所狭しと並んでいるのである。

 それらのほとんどは昭和55年製とか昭和62年製とか書いてあるが、使い古しではなく、なんと新品として売られているのである。他にも、聞いたことのないようなロードモデルがあったかと思うと、昔のだるま自転車が88万円で売っていたりする。摩訶不思議なのは、これだけこだわりの品揃えをしている自転車コーナーがあるにも関わらず、表から見ると自転車を扱っていることすら分からない店なのである、このダイリンという店は(写真参照)。一度、オーナーに会って話を聞いてみたい気もする。とにかく、何と言うか、自転車好きには一見の価値のある稀有なる「カー用品店」である。

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