銀河高原ビール  

2005年12月13日

東北で地ビールが飲める店その4〜岩手県西和賀町

4a1c6036.JPG 西和賀町とは聞き慣れない地名かもしれない。岩手県の山沿い、奥羽山脈を挟んで秋田県と接する湯田町と沢内村が合併してこの11月1日にできたばかりの新しい町である。

 沢内村と言えば、東北屈指の豪雪地帯であり、無医村だった同村にかつての深澤晟雄村長が苦心の末に国保病院を設置したエピソードは有名である。それと同時に沢内村は名水の里としても知られ、その水を使った東北を代表する地ビールである銀河高原ビール発祥の地である。この銀河高原ビールの工場が今も沢内村にはあり、工場に隣接してビアレストランと宿泊施設がある。「ホテル森の風アネックス 沢内銀河高原」(写真参照)がそれである。

 沢内村と合併した湯田町には湯田温泉郷という一大温泉地があり(参照サイト)、温泉の町として知られている。JRほっとゆだ駅には駅舎の中に温泉がある。豊富な温泉の熱で養殖しているスッポンの料理も有名である。また、湯田町を通る秋田自動車道の錦秋湖サービスエリアには同町が建てた東北では初のサービスエリア上の温泉入浴施設がある。一方の沢内村は湯田町ほど温泉が有名なわけではないが、沢内銀河高原に温泉がある(日帰り入浴も可)。循環式なのが残念だが、加水していないアルカリ性単純泉の湯はしっとりとした湯触りで心地よい。内湯の他に露天風呂もあり、温泉を十分満喫できる。

 地ビールに加えて温泉という、そのどちらも好きな私にとっては沢内銀河高原はまさに極楽のような場所である。以前書いたように、私は銀河高原ビールのヴァイツェンを毎日のように飲んでいるが、このうち、缶の「小麦のビール」より缶のヴァイツェン、缶のヴァイツェンよりは瓶のヴァイツェンの方が、生の銀河高原ビールに近い味がする。

 いずれ紹介する機会もあると思うが、私の住んでいる仙台にも銀河高原ビールを生で飲める店はある。しかし、ここ沢内銀河高原で飲む銀河高原ビールの生は、売られている缶や瓶のヴァイツェンとはもちろん、仙台の店で飲むヴァイツェンの生ともまた違う味がした。作りたてということのためなのだろうが、雑味がないと言うか、他の場所で飲むよりもキリッとした味わいがする。正直、私は銀河高原のヴァイツェンがこれほどキレのある味だとは、ここで飲む前には思っていなかった。仙台で飲む生、あるいは瓶や缶のヴァイツェンは、酵母が生きているが故に、日が経つにつれて発酵がさらに進み、その結果味にも違いが出てくるのだろう。生まれたての銀河高原ビールを味わいたければ、ここ沢内銀河高原はぜひ一度は訪れてみるべき場所である。

 ところで、沢内銀河高原における私の目当ては、もちろんこの銀河高原ビールと温泉だったのだが、実はここは食事もとびきりであることが分かった。料理には月替わりでテーマがあり、私が訪れた12月は「あったか煮物と煮込み料理」ということで、前菜「洋風前菜盛合せ」、造り「鱒、南蛮海老、紋甲烏賊、妻一式」、鍋物「サフラン鍋」、焼物「短角牛ステーキと豚肉のシチューパイ包み焼き」、煮物「郷土料理カスベの煮物」、中皿「白身魚の海藻蒸し煮雲丹ソース」、食事「古代米」、留椀「赤魚の湯引き澄し汁」、香物「三点盛り」、デザート「クレームブリュレ」という、贅を尽くした料理であった。この一つひとつの料理がまた実においしかった。ここは間違いなく料理で人を呼べる宿である。

 私が今まで泊まった中では(当然極端に料金の高い宿は含まれないが)、以前紹介したことがあるが、「料理の鉄人」で鉄人と闘って敗れたという程の実力の料理人のいる秋田県大潟村のサンルーラル大潟の料理と肩を並べるレベルである。そしてまた、地元の食材や料理法にこだわった料理の内容もとても好ましい。部屋の冷蔵庫には「銀河の水」という名のおいしい水、温泉の入り口には「百草水」という多種の草を水出ししたお茶が用意されているなどの心配りも嬉しい。

 そうそう、「光害」のないこの地で見る星空は格別で、まさに「銀河高原」の名にふさわしい。沢内銀河高原では、晴天時は夜8時半から「スターウォッチング」を行っており、天体望遠鏡で星空をつぶさに眺めることができる。

 できたての銀河高原ビールと温泉、そして絶品の料理、満天の星空と、沢内銀河高原はまさに言うことなしの宿である。もちろん、館内はゆったりとしていて快適である。私は一人で泊まったが、ここは願わくば大事な人と一緒に訪れてゆっくりとくつろぎたい場所である。宿泊予約は沢内銀河高原のサイト内からの他、楽天トラベルからもできる。なお、沢内銀河高原は、2006年1月4日から1月31日までリニューアルのため休館するという。山あいの村に忽然と存在するこのリゾートホテルがどのように変わるのか楽しみである。


追記(2011.9.16):沢内銀河高原はリニューアルして、名称も「沢内銀河高原ホテル」となった。もちろん、出来たての銀河高原ビールと温泉は健在である。


追記(2018.11.1):銀河高原ビールと沢内銀河高原が2017年10月末に「よなよなエール」などを醸造している地ビール国内最大手のヤッホーブルーイングに売却された。銀河高原ビールも全国で五指に入る醸造量であるので、両者を合計すると恐らく地ビール醸造所中ダントツの醸造量となると思われる(ヤッホーブルーイングは醸造量を公表していないので正確には不明だが)。
それはともかく、銀河高原ビールは引き続き醸造されているが、沢内銀河高原は2017年11月1日から休館となってしまった。
再開時期は未定で、1年が経った今も再開についてのアナウンスがない。沢内銀河高原が休館していることで、年1回の「銀河高原ビールまつり」も開催されなかった。
ヤッホーブルーイングの親会社はかの星野リゾートである。星野リゾートの宿泊施設再生のノウハウを活かした早期の再開を心から期待したい。


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2005年03月06日

東北の逸品その2〜銀河高原ビール

f54bfbaa.jpg  銀河高原ビールに出会ったのはいつの頃だったか。20代になって酒を飲み始めた頃はビールはあまり好きではなく、家ではもっぱらニッカシードル(りんごの発泡ワイン)を好んで飲んでいた。あのドイツワインのようなブルーボトルに惹かれて買ったのか(写真参照)、何のきっかけで銀河高原ビールを飲んでみたのかも思い出せないが、一たび飲んでその他のビールとはまったく違う味わいにとりこになり、今や銀河高原ビールはほとんど毎日のように飲んでいる。

 地ビールブームというのがあった。規制緩和の一環で、ビール醸造の量的規制が緩和され、小規模醸造所が許可されるようになって、全国のあちこちにビール醸造所ができたのである。地ビール第一号は新潟のエチゴビールだが、銀河高原ビールも地ビールの中では老舗の部類である。岩手の沢内村が元々の発祥の地で、株式会社東日本沢内総合開発というところが作っている。

 岩手県は、国内のホップの4割強を生産する県で、そのせいか今も地ビールは他県に比べて多い。ざっと数えてみても、銀河高原ビール以外に、一関蔵ビール北上わっかビール遠野ズモナビール平庭高原ビールみやもりビールステラ・モンテのビール、ベアレンビールなど、個性豊かな地ビールが目白押しである。遠野ズモナビールは、アサヒの本生よりも先に三陸沖の海洋深層水を使った「海のビール」を出していたし、みやもりビールは地元特産のわさびを使い、きれいな緑色をした「ワサビエール」やさらにわさびの風味を高めた「ワサビドライ」を出している。他にも、一関蔵ビールや盛岡ベアレンビールは、季節ごとにさまざまな限定醸造のビールを出している。

 こうした中で、銀河高原ビールは全国展開を目指した。本社も東京の銀座に移し、新たに銀河高原ビール株式会社を設立した。発祥地の沢内村以外に、那須、飛騨高山、阿蘇など、空気と水のきれいな場所に工場を作り(銀河高原ビールは天然水で醸造される)、各地に流通するよう拡大路線を取ったのである。以前、熊本に出張した際、思いがけず銀河高原ビールに出会い、旅先で故郷の友人に会ったように感じたものである。

 こうした拡大路線には賛否両論あるだろうが、私にとってはどこに出張しても大抵手に入れることができる、そして他の地ビールと違って大手メーカーのビールと値段がさほど違わないという点で大変ありがたい。今や銀河高原ビールは、アサヒ、キリン、サッポロ、サントリー、オリオンに次ぐ、わが国6番目のビール会社である。

 銀河高原ビール直営のレストランに行くと、ヴァイツェン(小麦麦芽を50%使った白濁したビール)、ピルスナー(通常のビールに近い)、スタウト(黒ビール)の3種類のビールがあるが、このうち酒屋で手に入れることができるのは、ヴァイツェン(瓶、缶、「小麦のビール」)とピルスナー(「有機栽培ビール」、「ドイツクラシック」)である。私が気に入ったのはフルーティーな味わいのヴァイツェンだが、ピルスナーも大手メーカーのビールよりはるかにおいしいと思う。

 他に流通しているものとして、ヴァイツェンをライトにした感じのホワイトエール「白ビール」(缶)がある。また、めったに手に入らないが褐色でアルコール度数が高めのヴァイツェン・ボック「赤鬼の涙」(瓶)もある。私が知る限り、このヴァイツェン・ボックを手に入れることができる店は盛岡市内のかわとく壱番館内丸店(盛岡市内丸16-1、TEL019-625-2288)だけである。

 多くの地ビールの特徴として、大手メーカーのビールのようにビール酵母をろ過せずにビール酵母を生かした状態にしてあるということがあるが、最近ではこのビール酵母の効用が注目されているらしい。大手でもキリンが最近になって酵母が生きているビールを出した。みのもんたもビール酵母の効用に着目して毎日銀河高原ビールを飲んでいるらしく、最近はそのみのもんたが銀河高原ビールのイメージキャラクターを務め、主婦層を中心に新たな顧客層を開拓しているそうである。


追記(2005.8.31):ショックである、銀河高原ビール(株)が収益の悪化で事業整理することになったのだそうな(参照サイト)。みのもんたのテレビCMやら相次ぐ新商品販売などの拡大路線が裏目に出たのか。

 今後は銀河高原ビール発祥の地である沢内村の東日本沢内総合開発(株)だけが銀河高原ビール生産を続け、それ以外の工場は閉鎖されるとか。

 東北と東京近辺では引き続き手に入るそうだけど、全国あちこちで買えるという状況は終わりを告げそう。

 まあ、考えてみれば、地ビールの元の姿に戻ったというところかな。


追記(2006.5.23):上記の事業整理の後、店頭からはあの銀河高原ビールの象徴とも言うべきブルーボトルが消え、また「ヴァイツェン」缶や「白ビール」もなくなり、「小麦のビール」の缶のみが細々と売られている状況が続いていたが、ようやくブルーボトルが復活した。

 2種類あり、一つは金のラベルの「スターボトル」。これは冷蔵専用のヴァイツェンである。熟成期間の延長や新たな原材料・レシピの研究を行い、さらに品質の向上に努めたそうである。もう一つは銀のラベルの「シルバーボトル」。これは常温保存が可能で、「小麦のビール」と同じものである。銀河高原ビールの代名詞、ヴァイツェンの復活を喜びたい。


追記(2006.9.21):上記スターボトル(ヴァイツェン)の缶が11月22日から発売されることになったそうである。缶の方が同じ値段で50ml多いので、ひそかに発売が楽しみである。


追記(2006.11.22):早速ヴァイツェン缶を買って飲んだ。「やまや」では298円で売られていて、300ml瓶の「スターボトル」よりも20円ほど高い価格設定だった。でも、やはり同じ缶で常温保存用の「小麦のビール」よりもおいしいと思う。ちなみに、このヴァイツェン缶のデザインは、今ある缶ビールの中でも最も美しい、と私的には思う。


追記(2007.12.1):別のところにも書いたが、銀河高原ビールに新商品が相次いで誕生した。WEB SHOP限定のクリスマスエール(白ビール)2種と、首都圏で先行販売されているペールエール、それに樽生専用で従来のピルスナーに代わるヘレスである。


追記(2008.6.5):首都圏で先行販売されていたペールエールがいよいよこの日から全国で販売されることになった。早速買って飲んでみたが、なかなかいい。ヴァイツェンとはまったく違う方向性で、すっきりとした喉越しと豊かな香りが特徴である。女性にも好まれる味なのではないかと思う。しばらくは、最初の1杯はこのペールエール、次の1杯がヴァイツェンという組み合わせになりそうである。


213546.jpg追記(2009.11.4):写真左は上で「今ある缶ビールの中でも最も美しい」と書いた、銀河高原ビールのヴァイツェン缶、右はキリンが9月に発売した「第3のビール」である「ホップの真実」である。

 見方は人それぞれだが、何か似すぎてはいまいか。メタリックなディープブルーにゴールドのラベル、もちろんデザインに差があるとは言え、私にはとてもよく似て見える。

 「ホップの真実」のニュースリリースには、「パッケージは、“コク・キレ・香り”のすべてが豊かになった贅沢感を、紺と金色で表現し、上質で洗練されたデザインとしました」とあるが、「贅沢感」が「紺と金色で表現」できるのは、銀河高原ビールのヴァイツェン缶が先にあったからではないのか、とツッコミを入れたくなる。

 もちろん、中身については、「別ジャンル」であるから、言うまでもなく端から比べ物にならない。


追記(2010.2.20):これまでクリスマス限定やイベント限定で登場していた「白ビール」が、3月4日に期間限定ながら再度登場することになった。白ビールは元々、銀河高原ビール(株)が元気だったころ、ヴァイツェンや有機栽培ビールと並んで定番ビールの一つで私もよく飲んでいた(レシピはその頃からさらに進化しているようであるが)。

 白ビールと言うと、ベルギーのヒューガルデン・ホワイトに代表されるジャンルだが、ヒューガルデン・ホワイトを始め、ホワイトエールを醸造している国内の他の地ビール醸造所がオレンジピールやコリアンダーなどを添加して柑橘系の香りを作り出しているのに対し(そのため日本の区分では「発泡酒」となる)、銀河高原ビールの白ビールは、ヴァイツェンやペールエールと同じく麦芽100%で醸造している。このこだわりがまさに銀河高原ビールという感じである。


追記(2011.12.12):東京商工リサーチは昨年、今年と「“地ビール”メーカー動向調査」を行い、その結果をサイト内で公表している(昨年度分今年度分)。地ビール業界全体の動向については国税局が毎年「地ビール等製造業の概況調査」として公表しているが、この調査では個々の醸造所の状況については記載が無いので、東京商工リサーチの記事は貴重である。

 昨年は「全国の主な“地ビール”メーカー120社にアンケートを行い、有効回答を得た90社」についての調査、今年は「全国の主な地ビールメーカー198社を対象にアンケート調査を実施、有効回答を得た69社」についての調査ということに留意する必要はあるが、それによると昨年回答のあった醸造所の出荷量の合計は前年を上回ったとのことである。その中で昨年6〜8月の出荷量上位5社は、1位がエチゴビールで485キロリットル、2位は銀河高原ビールで449キロリットル、3位は常陸野ネストビールで137キロリットル、4位は御殿場高原ビールで100キロリットル、5位はベアレンビールで83キロリットルで、「上位2社の突出ぶりが目立つ」と記事は結んでいる。

 今年はその昨年よりも全体で9.2%増の出荷量とのことで、地区別に見ると東北が前年同期比220キロリットル増と最多で、次いで関東が163キロリットル増、中部が39キロリットル増となっている。その中で特筆すべきは、「東北は銀河高原ビール1社で、東北の増加分の95%を占める209キロリットル増加した」とあることである。震災に負けず、むしろ震災をきっかけにして力強く拡大している姿が頼もしい。

 中部が全体で今年39キロリットル増にとどまっていることから推測すると、エチゴビールは前年に比べてそれほど大きく出荷量を伸ばしていないと見られるので、「1社で209キロリットル増やした」という銀河高原ビールが今年度、調査対象となった醸造所のうちでは出荷量トップとなったのではないかと考えられる。

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