2021年02月22日 

新型コロナで地域満足度が激変?(「東北再興」紙への投稿原稿)〜私的東北論その135

 またしても間が空いてしまったが、昨年10月16日に発行された、101号を機に「東北復興」から改名して新しく「東北再興」となった電子新聞には「地域満足度」のことを寄稿した。新型コロナウイルスの影響で、地域満足度も前年度からの変化が大きかったようである。

 以下がその全文である。


新型コロナで地域満足度が激変?

どこの都道府県がストレスが少ないかの調査
 一般社団法人ストレスオフ・アライアンスは、合同会社エンディアンと共同で「ココロの体力測定」調査を実施し、その結果を「ストレスオフ県ランキング2020」として8月25日に公表した。これは、緊急事態宣言明けの7月23日から27日にかけて、全国10万人の男女(20から69歳の男女各5万人)にインターネットを通じて調査したものであるということである。その結果、男性では青森県(ストレスオフ指数32.6)、山口県(同32.2)、山梨県(同27.3)が「ストレスオフ県」のトップ3、女性では鳥取県(同56.2)、滋賀県(52.2)、山口県(49.5)がトップ3という結果だった。

 「ココロの体力測定」調査では、厚生労働省のストレスチェックB基準に照らし合わせて回答者のストレスレベル割合を算出している、としており、第1位だった青森県の男性と鳥取県の女性は、全国平均と比較し「低ストレス者(39点以下)」の割合が高く、逆に「高ストレス者(77点以上)」の割合は低い傾向が出ており、その結果が他の都道府県よりも高いストレスオフ指数に貢献していると考えられるとのことである。

 面白いのは、男女でストレスオフ指数が高い都道府県が異なっているということで、ベスト10を見ても、男女ともランクインしているのは山口県(男性2位、女性3位)と和歌山県(男性、女性とも4位)くらいで、その他は男女どちらかだけがランクインしている。なぜ男女でストレスオフ指数の高い県が違っているのか、またなぜ総じて女性の方がストレスオフ指数が高いのか、については分析されていないのでその理由は不明である。

 新型コロナウィルスへの不安度についても調査されており、それぞれ1位となった青森県の男性、鳥取県の女性の不安度は首都圏の男性や女性に比べて低いという結果で、またこの新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛に関連する生活の不満が少ないという結果も出ており、そうしたことがストレスオフ指数の高さの要因の一つである可能性があるとされていた。

 また、リラックス方法についても特徴があり、青森の男性で全国平均よりも多かったリラックス方法は、BBQ(全国平均の2.01倍)、温泉(同1.72倍)、靴下を脱いで裸足になる(同1.42倍)などとなっていた。鳥取の女性では、温泉(同1.43倍)、機能性・栄養ドリンク(同1.29倍)、指揉み(同1.23倍)などとなっていた。男女共にランクインしていたのは温泉だが、そう言えば青森も鳥取も名湯と呼ばれる温泉がある温泉県である。そうした環境が身近にあるかどうかも、ストレスの多寡に大きく関係するのかもしれない。

 ちなみに、東北では男性1位の青森県は女性25位、岩手県は男性19位、女性37位、宮城県は男性30位、女性31位、秋田県は男性36位で女性は46位、山形県は男性32位、女性39位、福島県は男性38位、女性は36位であった。大まかに見て、南東北三県は男女ともだいたい同じ位置にランクインしているのに対して、北東北三県は総じて男性の順位の方が女性よりも高いという結果となっていた。

新型コロナウイルスの影響の多寡
 さて、興味深い比較も行われている。今年は新型コロナウイルス感染症拡大により、健康や日常生活、仕事など暮らしにさまざまな影響が出ている。先に紹介した結果は、その影響も反映しての結果と捉えられるが、今回はこの「ココロの体力測定2020」を前年の調査結果と比較して、その順位の変化を「地域満足度」の変化として都道府県ランキングにまとめられている。

 これは男女をまとめた結果で比較しているようだが、それによると2019年に比べて2020年のランクが上昇した度合いは岩手県が1位、青森県が2位で、3位の山口県を挟んで秋田県が4位と、北東北3県が上位を占める結果となっていた。これに対して、ランクが下降した度合いが最も大きかったのは宮城県であった。トップ10には他に鳥取県や島根県なども入っており、全体的に地方が善戦しているように見えるが、45位に広島県が入っており、宮城県同様、地方の中核都市が苦戦している印象である。

 昨年と大きく変わったこととしてはやはり新型コロナウイルスの存在が挙げられるが、感染者数そのものが少ない北東北3県は、その影響が最小限に抑えられ、それが他の都道府県と比べて相対的に順位を上げることになったのかもしれない。一方、宮城県は首都圏や関西圏などに比べれば感染者数は少ないものの、周辺の東北の他県と比べると感染者数が多かったことが不安につながり、順位を落とすことにつながったとも考えられる。

 その点で印象的なのが東京都で、日本一感染者数が多いにも関わらず、順位は昨年と変わらず、全体として21位である。新型コロナウイルスへの不安度は、全国平均27.2%を上回る32.1%だったものの、自粛期間中の過ごし方では「意外と楽しめていた」と答えた人の割合が全国平均の1.38倍で、その中身として「オンライン飲み会」、「在宅勤務」、「一人暮らし」などが挙げられていたとのことである。

 レポートでも、地域満足度の高さと、新型コロナウイルスによる自粛期間との関連を見ているが、地域満足度が低い人の88.3%が自粛期間の過ごし方に不満を感じており、これは地域満足度が高い人の34.8%と比べて大きな差があったとのことである。すなわち、地域満足度の高さと自粛期間の満足度の間には関連があったということである。

 こうして見てくると、もちろん新型コロナウイルスについては用心を怠ってはいけないが、それに伴う生活の変化をどのように捉え、そこで生じたストレスをどのように解消したか次第で、自分たちの生活の質や満足度は大きく変わってくるということが言えそうである。北東北3県では、元々感染者数が他地域より少なく、新型コロナウイルスに対する不安の度合いも他地域に比べれば低かったということもあるのかもしれないが、それに加えてストレス解消のための環境があったり、ストレス解消のための行動を積極的に行ったりということで、結果的に新型コロナウイルスに伴う生活のストレスを最小限に抑えられていたように見える。残念ながら昨年の順位との差が全国ワーストとなってしまった宮城県も北東北三県をお手本に、自分たちの生活の満足度を上げ、ストレスを下げる工夫や取り組みをもっと行っていく必要がありそうである。まずは靴下を脱いで裸足になるところから(笑)。


anagma5 at 17:39│Comments(0)clip!私的東北論 

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